「あれだけの選手はそうはいない」 長谷部誠の“プロ意識”にドイツ人記者も後輩も敬意

2011年のヴォルフスブルク時代には残留争いを経験した【写真:Getty Images】
2011年のヴォルフスブルク時代には残留争いを経験した【写真:Getty Images】

苦しい時こそ成長のチャンス 「ただ無難にこなすのではなく…」

 13年頃には、出場機会に恵まれない時期もあった。そんな時でも愚痴なんて口にしない。いつだって自分にできることを探し続けていく。

「ただ無難にこなすのではなく、少しでもチャレンジするようにと思っている。今までもドイツに来てから、チームのためにこうプレーするというところでやってきたので、それを崩さずに。でも、それだけじゃ成長がないので、それプラス、何かをね」

 現状維持でいいなんて思ったことはない。いつだって貪欲に自分を見つめて、改善点を探して、恐れることなくチャレンジし続けてきた。そんな長谷部の背中を、ドイツに渡った日本人選手は見て育った。

 内田篤人(現・鹿島アントラーズ)は、自身がシャルケで出場機会が少なくなっていた時に、そんな体験を繰り返ししてきていた長谷部のことを例に挙げ、「本当に凄いな」とこぼしていた。

 シュツットガルト時代の酒井高徳(現・ヴィッセル神戸)は、日本代表も含めた過密日程でコンディション調整に苦しんでいた時に、「でもいい選手っていうのは、そういう時でもしっかりできる。長谷部さんも代表に行って帰ってきても、しっかり自分のプレーができている。やっぱり、そういうところは見習いたいなって思う。逆に、自分はそういうところ、情けないなって思いますね。長谷部さんはもっと大変な状態なのに、しっかりやれているのはやっぱり凄い」と、手本としての偉大さを感じていた。長谷部の立ち振る舞いは、他の選手にとってどれだけ参考になったことか。

 情熱は枯れることなく、向上心は途絶えることなく、モチベーションは冷めることなく――。

「サッカー選手をやっていると、良いことばっかりじゃないし、大変なこともあるし。いろんなことがあるんですけど、でもやっぱり、こんなにスリルがある、感情を出せるような場面というのは、サッカーを辞めたらなかなか出てこないと思うので。それを今、楽しんでいます」

 そう語って優しく笑った。300試合達成も、長谷部にとってはまだ通過点なのだ。12シーズンかけて築き上げてきた軌跡。それは12シーズン、成長し続けてきたことの証でもある。

 苦しい時は成長のチャンス。長谷部は直近のリーグ戦6試合で勝ち点わずか「1」という現状に対しても、「こういう試練が自分にきているっていうのは、何か意味があるものだと思う」と解釈し、また次に向けて取り組んでいく。

 どこまでいくのだろう。その歩みをいつまでも見続けていたい。

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中野吉之伴

1977年生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで様々なレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA-Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2016-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。『ドイツ流タテの突破力』(池田書店)監修、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)執筆。最近はオフシーズンを利用して、日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。

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