大接戦のJ1優勝争いは予想を裏切る傾向あり? 娯楽性を追求する横浜FMに“ドラマの予感”

横浜FMのマルコス・ジュニオール【写真:Getty Images】
横浜FMのマルコス・ジュニオール【写真:Getty Images】

ポステコグルー監督の下で攻撃的スタイルを継続、札幌戦で見せた“破壊力”

 Jリーグの攻撃志向を象徴する両雄には、いくつかの共通点があった。横浜F・マリノスのアンジェ・ポステコグルーも、札幌のミハイロ・ペトロヴィッチもチームを率いて2年目。どちらも予算のハンデを、指揮官の戦術的な工夫と効率的な補強で埋め、一貫して娯楽性の高いスタイルを追求してきた。

 だが同じ2年目でも、適材適所の戦力と戦術の熟成度では明確な差が生まれていた。結果的には4-2で横浜FMが制した試合だが、どちらも決定機を活かし切れば8-4くらいが適正なスコアだった。

 札幌は開始早々にGKク・ソンヨンがペナルティーエリアを出て、横浜FMのエリキにボールを奪われる致命的なミスを犯し、一気に歯車が狂った。どちらもリスクを承知でディフェンスラインを高く上げ、GKもビルドアップに加わるわけだが、GKク・ソンユンは足もとが不安定。さらに前半23分には敵陣に入り込んだDF全員が、横浜FMの仲川輝人にまとめて置き去りにされたように走力面の不安も露呈。結局「ミスしたくないという不安が増して」(札幌・ペトロヴィッチ監督)、逆に自信満々でスピード豊かな横浜FMが高い位置でのインターセプトを次々に成功させることになった。

 もっともこの日は、スタメン出場のマテウスが、好調なプレーを見せながらも、決定機ではことごとくツキに見放されていたから、チャンスの数と質を考えれば非効率の印象を残すことになった。

 類似スタイルで臨みながら、横浜FMは前線にスピードと個性を備えたタレントを揃え、最終ラインには相手FWを上回るスプリント力を持つチアゴ・マルチンスが君臨して、際立ったカバーリングを見せている。

「いつ何をしなければならないのか、チーム内に戦術理解が進み、ピッチ内では互いによく話す。シン(畠中槙之輔)とも、どちらがどう動くか、いつも確認し合っている」(チアゴ・マルチンス)

 この試合では、喜田拓也が札幌のチャナティップを抑えて途中交代に追い込み、相手が押し上げてくれば速いカウンターで脅かすなど、90分間自在なチャンスメイクでスタンドを沸かせ続けた。

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近東京五輪からプラチナ世代まで約半世紀の歴史群像劇49編を収めた『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』(カンゼン)を上梓。『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(ともにカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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