アジア制覇を狙う「浦和のジレンマ」 世界に類を見ないJ1とACLの“二兎を追う”過酷さ

DF槙野も難しさを実感しているようだ【写真:高橋学】
DF槙野も難しさを実感しているようだ【写真:高橋学】

拮抗するJ1を戦うクラブが全タイトルを追うのは無理がある

 そしてJクラブが難しいのは、世界に類を見ないほどJ1全クラブの実力が拮抗していることだ。槙野はJリーグで降格圏に位置するサガン鳥栖戦と、ACLの常連になっている広州恒大戦の困難の度合いの相違について、端的に語った。

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「鳥栖は難しい位置にいて、必死に浦和を研究して臨んでくる。でもACLの対戦相手は、つまんでつまんでの研究ですからね」

 こうしてACLで決勝進出を目前にしたチームが、Jリーグでは降格圏が視界に入るほど沈み、天皇杯ではアマチュアのHonda FCにベスト16で敗れた。天皇杯は来季ACLの出場権が懸かっていたからサポーターの怒りを買ったが、現実的にそこでメンバーを入れ替えたことが、ACL準決勝第1戦での優れたパフォーマンスを引き出せた要因と見ることもできる。

 現在ACLの出場権は、J1リーグの上位3チームと天皇杯優勝チームに与えられている。だがACLで優勝したチームが、同時に国内で出場権を確保するのは至難の業だ。それでもACLに出場したJクラブは日本を代表して全力を尽くしているわけだが、4つすべてのタイトルを追いかけながらアジアで勝つのは無理がある。

 さすがにACL決勝に行ったらJ1残留は不可能だとしても、せめて準決勝以上に進めばJ1上位の枠を削って翌年の出場権を与えるなど、アジア制覇に集中できる環境の整備を強化すべきだと思う。

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(加部 究 / Kiwamu Kabe)



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加部 究

かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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