なぜ簡単に抜けるのか? マラドーナ、メッシ、中島…“不思議系ドリブラー”の系譜

“不思議系ドリブラー”に挙げられた3人【写真:Getty Images】
“不思議系ドリブラー”に挙げられた3人【写真:Getty Images】

シンプルなタッチで相手を攻略、共通する初速のスピード

「ファンタスティックだった。止めようとしたが不可能だった」

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 モンゴル代表のミヒャエル・ワイス監督が「思わず拍手したくなるぐらい」と、中島翔哉について試合後に話していた。

 なんで、あんなに簡単にドリブルで抜けるんだろう? そういう選手が何人かいるが、中島もそのなかの1人だ。

 ディエゴ・マラドーナは左足の前にボールをさらしておいて、インサイドでボールを弾くように右前へ抜けていくドリブルが十八番だった。左足首のスナップの利いたドリブルは独特だが非常にシンプルで、なんであんなに簡単に抜けるのか不思議だったものだ。

 リオネル・メッシの、走り出したら止まらないドリブルも特殊だ。右から左へ斜行しているだけなのに、なぜか誰も止められないし追いつかない。場合によっては、なぜかその途上でDFがバタバタと倒れていく。

 マラドーナが憧れたというロベルト・リベリーノの“エラシコ”も印象的だった。後にロナウジーニョが復活させて有名になった「アウト→イン」の連続タッチは、もともとセルジオ越後の得意技をリベリーノが真似したのだという話も聞いたことがある。

 オールドファンにとって、ドリブルの天才と言えばジョージ・ベストだろう。切り返しのキレ味が抜群だった。特に複雑なフェイントをかけているわけではないが、リズムの変化とワケの分からないボディバランスで次々に相手を抜いていった。

「結局、速いからね」

 リベリーノに例のエラシコを食らったことがあるという風間八宏によると、「ただ、足先でやってるんじゃなくて、最初のタッチがすごくデカイ。目の前にボールが来てから戻っていくから足が出てしまう」という。

 エラシコの場合はタネがはっきりしているので、「二度目はかからないけどね」(風間)というが、確かに全員速い。最初の1、2歩が本当に速い。ただ、10メートル以上走ったらそんなに速くない。永井謙佑は3歩以上走らせたら誰も追いつけないぐらい速いが、中島は距離を走るとそこまで速い感じはない。初速と加速の違いなのだろう。

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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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