J1名古屋「監督交代劇」の背景 “風間流”に別れ、大幅な方針転換はなぜ起きたのか

風間体制に見えた限界 “夏の補強ブースト”もなく停滞感を払拭できず

 しかしそれを、いついかなる時でも発揮できるものに昇華させられなかったところに、風間体制の限界が見える。

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 今季、指揮官の口から幾度となく発せられた言葉が「あとは決めるだけ。仕留めきることさえできれば」というものだった。確かに数字上でも、あるいは実際の試合展開を見ても、名古屋は高い確率でゴール前でのチャンスを生み出すことはできていた。だが、結果としてそれを決めることができずに、多くの勝ち点を逃している。勝負に“タラレバ”は禁物だが、勝てない日々が続くなかで、いつしかそのタラレバを繰り返してしまった。

 風間監督のチームは自分たちの可能性を信じ、イメージどおりのサッカーができた時のための修練を積み続けてきた。自分たちの土俵に持ち込むための練習ではあったのだが、現実として相手の堅守速攻の前に持ち味を消されることが多かった。

 またチームのウィークポイントを組織でカバーするのではなく、選手個々のクオリティーに委ねる傾向も強かったため、主力の負傷などがそのままチーム力の低下につながることもあった。

 さらにシーズン途中の戦力補強も、DF太田宏介らを獲得したものの過去2年に比べると静かなものに。J2を戦った2017年夏にはFWガブリエル・シャビエルを獲得し、苦戦を強いられたJ1昇格初年度の昨季もDF丸山祐市やDF中谷進之介、MFエドゥアルド・ネットらを大量補強し、なんとかJ1戦線に生き残った。その貯金をもって今季開幕前にはDF吉田豊、MF米本拓司、そしてMFジョアン・シミッチを獲得しているのだから、戦力的には十分と言えるものだったかもしれないが、“夏の補強ブースト”がかけられなかったことで、チームに蔓延していた停滞感を払拭することはできなかった。

 こうした状況を踏まえれば、これまでJ1のFC東京とサガン鳥栖を率い、規律と組織力で勝負してきたフィッカデンティ監督をクラブが求めたのは当然の選択と言えるかもしれない。

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