日本代表初選出の19歳“新世代GK” 「日本トップ3」の技術的評価と怖れなき強心臓

「ビッグセーブの少なさ」は安定の証

 人間誰しも失敗が怖いはずなのに、大迫の中にはそういう「怖れ」が全くない。ACL広州恒大戦、ハイボールを徹底して入れてくる元アジア王者の攻撃に対して平然と対処し、「ああいう攻撃は僕を気持ちよくプレーさせてくれるだけ」と笑顔を見せた。だからこそ、彼は試合ごとに成長を見せる。「大丈夫です」と笑ってくれれば、それだけで大丈夫なように感じる。それほどの強さが滲み出る。だからこそ、日本代表の一員として戦う国際試合でも大迫は普通にやれるのではないか。そう信じることができるのだ。

 いわゆるビッグセーブが少ないことについて、大迫のシュートストップ能力を疑う人もいるが、澤村コーチはその見方を否定する。

「例えば広州恒大戦の後半、ガオ・リンが放ったシュートは彼らにとっては『きたっ!』と感じたかもしれない。しかし、それを敬介はしっかりと正面でキャッチした。本当のビッグセーブとは、こういうプレーだと思うんです。正面に飛んだボールはラッキーだと日本ではよく言うんですが、それは違う」

 野球でも本当の技術者は、ファインプレーを凡プレーに見せるという。大迫も同じだ。正確な予測による足の運び、シューターに対する身体の向きが適切だからこそ、無理な体勢からのセービングは必要なくなる。それでも例えばジュビロ磐田戦のように、DFにボールが当たってコースが変わる緊急事態を迎える時もあるが、それでも足をしっかりと残して弾いている。最後の最後まで予測が機能している証拠であり、それもメンタルの揺れ動きが少ないことによる冷静さがベースになっている。強いメンタルがあるからこそ、パフォーマンスにブレがないのだ。

「ピッチの上でやり続けたからこそ、日本代表に選ばれたと思います」と城福浩監督は言う。

「当たり前ですけど守備は一人ではできないし、チーム全員でやってきたところを敬介は評価された。代表でもチーム全体で守るという自覚を持ってやってほしい」

 その意識はもちろん、大迫は持っている。そしてその大切さを彼は、ACLグループステージ最終節のメルボルン・ビクトリー戦で、怪我からの復帰を果たした“先輩”林のプレーの中に発見している。

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