海外から見た「高校サッカー」 “逆輸入”だからこそ分かる日本のスポーツ文化

紡がれる思い、感謝の気持ち… 海外の目を通して思い直す日本のスポーツ文化

「高校選手権ではピッチ上だけではなく応援団も闘っています。応援文化は非常に発達しています」

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 この映画ではもう一つ、時間を割いて着目している部分がある。中国でバンド活動をするティナ氏が「高校サッカー」を観戦した感想として、「高校生なのに何万人もの前で試合をできるのは本当にうらやましいです」とコメントしている。やはり育成年代の大会で、観客が何万人もいるというのは不思議に感じたようで、応援団として会場に来ていた人々へ取材をして動員の秘密を探っている。

「最近では家族が出場すると、家族全員で応援に行きます。今回も競技場には選手たちの両親、先生、OBが来ています」

 彼らは取材を通して、応援団の多くは家族・友人あるいはOBと分析。それぞれにスポットライトを当てて日本の応援文化を紐解いている。そのエピソードのなかで、これまで当たり前だと思っていたことが特別であることに気がついた。

「OBは『Old Boy』という意味で、外来語ですが欧米にこういう言葉はありません。OBは日本独自の言葉です」

 映画内でOBを解説した言葉だ。言葉は解説のとおりなのかもしれないが、イニエスタがスペインへ帰郷した際にカンプ・ノウで試合を観戦したように、その精神は海外にもあるように思える。

 さらに同映画では、OBを「日本の学校文化」「郷愁の表れ」と続けて説明している。主観ではあるが、ここまでの思い入れがあり、絆があるのは日本独自なのかもしれない。そういった思いが約100年にわたり紡がれて、現在の盛り上がりにつながっている。

 それとは別に、文化の違いを感じる印象に残った言葉がある。昨年度の準決勝で前橋育英に1-6で敗れた上田西の在校生のインタビュー後に、ティナ氏が「最初は理解できませんでした」と言っていた。それは敗退直後にもかかわらず、決勝では「前橋育英に勝ってほしい」と負けた相手を応援する場面だった。

「負けたチームは選手もファンも相手チームを応援することに気づきました。最初は理解できませんでした。でも“自分たちの分も頑張って欲しい”。そう思っているのがよく分かりました」

 この精神は応援団に限らず、選手たちにもある。敗れたチームは自分たちの応援団からもらった千羽鶴を勝ったチームに渡し、自分たちの夢を託す。託されたほうには、負けられない理由が増えると同時に、モチベーションが生まれる。そういった思いのつながりが日本の応援文化なのだと、見直すきっかけになる。

 また、試合後に相手チームや応援団に対して「ありがとうございました」と御礼を言う選手たちの姿を見た中国人のティナ氏は、「そのシーンを生涯忘れないように決めました」と感動しているシーンがあった。こういった感謝の気持ち、応援団との絆といったリスペクトの精神は、他国にも理解される文化であり、大切にすべきものであると改めて思い直すことになった。

 中国メディアを通して「高校サッカー」を描いた映画『少年足球養成』は、2月16日・17日に開催される「ヨコハマ・フットボール映画祭」で一般公開される予定になっている。海外の目を通すことで、気づかされることは多々ある。「高校サッカー」の好き嫌いに関係なく、サッカー好きが気づかされる点が多いと感じる映画だけに、時の流れとともに忘れかけている思いを見直す良い機会になるかもしれない。

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