新時代の「3-4-3」が誕生? マンCの“偽SB”や“ハーフスペース”を封じたリヨンの守備
CL第5節で2-2ドローも、リヨンが“漏れのない守備”でマンCの特長を消す
3-4-3のフォーメーションはずいぶん前からあった。ただ、最近になって新たな意味を持ち始めているのかもしれない。
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UEFAチャンピオンズリーグ(CL)のグループステージ第5節で、リヨン(フランス)がマンチェスター・シティ(イングランド)に2-2で引き分けた。これでCLグループステージでのシティとの対戦成績は、1勝1分の勝ち越しとなった。
リヨンは第1節のアウェーゲーム(2-1)では4-2-3-1で臨んだが、今回のホームでは3-4-3のフォーメーションを採用している。ホッフェンハイム戦でも同じだったので、“シティ対策”というわけではないかもしれないが、効果的だった。マクスウェル・コルネの2ゴールで常に先手をとりながら、FKとCKからシティに追いつかれた。試合内容はほぼ互角、流れはリヨンにあった。
シティはサイドバックを中央へ寄せるビルドアップで知られている。J1の横浜F・マリノスもこの形だが、サイドバックを中寄せすることでボール保持を安定させ、ウイングへの供給路を開けられるところがポイントだ。リヨンの3-4-3は、このシティの布陣に対して漏れのない形になっている(図1)。さらに3ラインのハーフスペース(ピッチを縦に5等分し両端と中央の間にあるエリア)をすべて埋めている。
守備の時は5-2-3だ。ハーフスペースへパスをつなぐシティに対して、そのまま縦方向へ押し上げればプレスがかかるため、コンパクトな形をキープできていた(図2)。
このフォーメーションの弱点は2ボランチの横のスペースだ。二人のボランチでフィールドの横幅をカバーするのは無理で、ウイングバックもシティのウイングをマークしているので前へ出にくい。ただし、リヨンはその弱点のスペースも上手くコントロールできていた。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。