スペイン代表とW杯をも恐れぬレアルの横暴ぶり 凄みすら感じたロペテギ“強奪”の衝撃

新しい「ティキ・タカ」を作り上げた手腕は確かだった

 今大会のスペインは優勝候補だった。パスワークの素晴らしさは別格で、親善試合で対戦したドイツが「下手」に見えたぐらいである。スペインのパスワークはバックパスの決断が早く、ボールを下げて相手を釣り出すうちにすでに次のパスコースを確保し、相手のプレスを後手に回していく。形のうえではドイツやブラジルもやっているパスワークだが、スペインの方がずっとテンポが速い。新しい「ティキ・タカ」を作り上げたロペテギ監督の手腕は、確かなものがあった。

 後任はスポーツ・ディレクターのフェルナンド・イエロが務める。技術委員長が監督になった日本と同じパターンだが、おそらくロペテギとともにコーチングスタッフもいなくなるからだろう。

 もう開幕なので、ある意味スペイン代表の準備には大きな影響はないと思う。チームとしても完成品だ。ただ、ここから1カ月の大会を乗り切るための体制を整えるのは容易ではないだろう。これで上手くいかないとしたら、素晴らしいチームだっただけに残念としか言いようがない。

 レアルの横暴は非難されるだろうし、ロペテギ監督は最初から厳しい目で見られるに違いない。ただ、そうした結果を容易に予測できるにもかかわらず、傍若無人の振る舞いをしたレアルというクラブの大きさ、尊大なまでの自信には、ある種の凄みは感じる。

(西部謙司 / Kenji Nishibe)



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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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