知られざるMLSの世界 シアトル・サウンダーズFCが掲げる“ファンと共に”というブランド

ファンと共にクラブをつくる

 ウィリー氏は次のように話してくれた。
「私たちは、ファンとの結びつきを重要視しています。ファンが自ら、このクラブの成長に関わっているんだと感じてもらうことが大切だと考えています」
 そのための施策が、 大きく2つある。一つが、GM信任投票制度だ。4年に一度、シーズンチケットを保有するファンによって、GMに対する信任投票が行われている。例えばバルセロナでも、ソシオによる投票制度は存在する。だがサウンダーズの場合、特筆すべきは、その投票率の高さにある。12年に実施された信任投票では、約1万8000票が投じられ、投票率は50%を超えた。バルセロナが昨年4月に実施した、本拠地カンプ・ノウの改修計画のソシオ投票率が約31.7%。これと比較しても、非常に高い数字であることが分かる。
 投票率を高める秘訣(ひけつ)は簡単だ。シーズン中のホームゲーム終了後、スタジアムで投票を実施している。試合を観戦し終わった後、その足で投票に行く。その気軽さが、投票率の高さに結びついている のだ。
 もう一つが、評議会の設置だ。シーズンチケット保有者25名から同意を得たファンが、評議員として毎月会議を開催している(現在41名)。この評議会には、クラブの各部門の責任者も参加し、活発な意見交換が行われている。さらには、年に一度、クラブのオーナーたちと直接会う機会が設けられ、ファンの要望を代弁することもできる。このように、サウンダーズが意識しているのは「ファンと共にクラブをつくる」ことだ。
 「たとえクラブにとって不利益になったとしても、ファンとの結びつきを大切にする姿勢は変わりません」とウィリー氏が続けたように、GM信任投票制度や評議会の設置は、クラブにとっては、必ずしも好都合とはいえない場合もある。だがそれでも、「ファンと の接触が何よりも大事」だと同氏が言うように、ファンの意見を吸い上げる仕組みをつくり上げた。これにより、ファン自身がクラブの運営に関与していると感じられるようになっている。まさに、サウンダーズというクラブの存在が、ファンにとって『自分事』になったのだ。

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