序盤のJ2戦線で異彩を放つ「魔境」の戦績 勝利のヒーローも声援に感謝…相手を飲み込む“難攻不落の要塞”

新潟が今季ホームで残す圧倒的な成績
J2戦線で2位につけるアルビレックス新潟が不思議な軌跡を刻んでいる。アウェーで1勝2分3敗、得点7に対して失点16と精彩を欠く一方で、ホームのデンカビッグスワンスタジアムでは7戦全勝、得点12に対して失点5と無類の強さを誇る。首位のベガルタ仙台をホームに迎え、2-1の逆転勝利をもぎ取って勝ち点わずか1ポイント差に迫った25日のJ2リーグ第13節に、新潟の秘密を解くカギが凝縮されていた。(取材・文=藤江直人)
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難攻不落の要塞なのか。あるいは攻め込んでくる敵をことごとく蹴散らす魔境なのか。J2戦線で2位につけるアルビレックス新潟が、ホームのデンカビッグスワンスタジアムで圧倒的な軌跡を描いている。
第13節までを終えたリーグ戦で、ホームで7戦を終えて全勝を続けている。しかもすべてが1点差。第3節でビッグスワンに乗り込み、0-1で敗れた藤枝MYFCの槙野智章監督は試合後にこんな言葉を残した。
「ホームで2連勝して乗り込んできましたが、選手たちの中でここのファン・サポーターを含めて雰囲気にのまれてしまった。その影響で普段の力をあまり出せなかったところがありました」
シュート数で12対5と圧倒した第7節で後半終了間際に一矢を報いるのが精いっぱいで、1-2で敗れたジュビロ磐田の秋葉忠宏監督は、現役時代に新潟の一員としてプレーしたビッグスワンをこう語っている。
「ビッグスワンの魔力というか、(主審の)ジャッジも含めて独特の空気感はありました」
直近の一戦となった25日の第13節。8勝3分と第2節以降で無敗を続け、首位を走ってきたベガルタ仙台も前半34分に先制しながらも同41分、後半10分の連続失点で逆転されて今シーズン2敗目を喫した。
夏の移籍期間が閉じる直前の9月16日に、J1のV・ファーレン長崎からカテゴリーを下げる形で新潟へ完全移籍。生まれ故郷のクラブでもある新天地で出場7試合目にして決めた待望の初ゴールが歓喜の逆転弾となり、ファン・サポーターの大きな喝采を浴びた右サイドバックの関口正大が声を弾ませた。
「そこ(ゴール)に関しては、本当に僕の力ではないと思っています」
勝利のヒーローをして、何が「僕の力ではない」と言わしめたのか。逆転ゴールは仙台の右コーナーキックを跳ね返し、こぼれ球を鋭い出足で奪い取ったFW若月大和が発動させたロングカウンターから生まれた。
左サイドをトップスピードで駆け上がる若月が必ずクロスを上げてくれると信じて、直前まで自軍のボックス内にいた関口が反対側の右サイドを全力で追走していく。青写真通りに若月がややマイナス方向へ折り返してきたボールに、待っていましたとばかりに関口が利き足と逆の左足をヒットさせようとした直後だった。
「シュートそのものは思いのほか左足にうまく当たらなくて。本当にボールがどこを転がっていったのかはまだ映像を見ていないのでよく分からないんですけど……どこを抜けたのか分かりますか」
思わずメディアに逆取材した関口は、ブロックに飛び込んできた仙台のボランチ奥山政幸の右足に当たってコースを変えて、守護神・林彰洋の逆を突いてゴール右へ転がり込んだと知るとこんな言葉を残している。
「僕のシュートもホームじゃなかったらおそらく入っていなかったんじゃないかと思うし、本当にホームの力というかみんなの気持ちにも押されて入ったゴールだったかなと。相手が仙台で難しい試合になるのは分かっていましたけど、だからこそ勝利の瞬間をファン・サポーターの方々と分かち合えたのが一番うれしいですね」
後半のシュート数は仙台が6対2で上回った。押し込まれるたびにビッグスワンが大音量で揺れた。
<おーれーたちがついてるさニイガタ ヤケドさせてくれこのゲーム おーれーたちがついてるさニイガタ 伝えたいこの想い アイシテルニイガタ――>
ユニコーンの「I’M A LOSER」を原曲とする新潟の有名なチャント「アイシテルニイガタ」を、ゴール裏を埋め尽くしたファン・サポーターを発信源として、全員が体を上下動させながら大合唱する。
壮観な光景は新潟の選手たちに新たなエネルギーを与え、相手チームにプレッシャーを与える。槙野監督や秋葉監督が言及した「魔力」の正体こそが、12番目の選手となるファン・サポーターの後押しとなる。
「最後は(仙台に)押し込まれる時間が長かったので、その中で声援が……もちろん仙台のファン・サポーターもすごかったですけど、新潟のファン・サポーターがものすごい大声量で後押ししてくれたので守り切れたんじゃないかな、と。これもホームじゃなかったらとか、いろいろと考えます。これだけ多くのファン・サポーターの方に来ていただいて、雨に打たれながら最後まで本当にともに戦ってくれた結果だと思います」
少なくなっていく残り時間に反比例するかのように音量を増していった「アイシテルニイガタ」に関口が感謝すれば、ホームで強い理由を問われた新潟の船越優藏監督も選手たちに思いをシンクロさせた。
「それはもうファン・サポーターしかないですね。みなさんの熱い思いが乗り移っているのかな、と」
順位こそ2位のまま変わらない新潟だが、ファン・サポーターを含めた全員の力で快進撃を止めた仙台に勝ち点わずか1ポイント差に肉迫した。1勝2分3敗、得点7に対して16失点とアウェーで全く異なる姿を見せているからこそ、ホームで7戦全勝、12得点に対して5失点という数字が改めて異彩を放つ。
「このままの勢いでいきたい、と言いたいところですけど、やはり簡単なリーグじゃないと思っています。もう一回地にしっかりと足をつけて目の前の試合、1試合1試合に集中して戦っていって、最終的に目指すポジションに自分たちがしっかりといられるように。今後はアウェーでも勝っていかなきゃいけない」
関口が言う「目指すポジション」とは、昨シーズンまで戦ったJ1の舞台にほかならない。序盤のJ2戦線を熱く彩る新潟は31日の次節で、勝ち点4ポイント差で3位につけるカターレ富山を再びビッグスワンに迎える。
(藤江直人 / Naoto Fujie)

藤江直人
ふじえ・なおと/1964年、東京都渋谷区生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後に産経新聞社に入社。サンケイスポーツでJリーグ発足前後のサッカー、バルセロナ及びアトランタ両夏季五輪特派員、米ニューヨーク駐在員、角川書店と共同編集で出版されたスポーツ雑誌「Sports Yeah!」編集部勤務などを経て07年からフリーに転身。サッカーを中心に幅広くスポーツの取材を行っている。サッカーのワールドカップは22年のカタール大会を含めて4大会を取材した。





















