17歳でJ1デビューの逸材も「争いに負けた」 名門で直面した壁…捨てた言い訳「まだ高校生だから」

鹿島ユースCB元砂晏翔仁ウデンバ「チームを勝たせられる存在に」
9月5日に夏の中断期間を終え、再開したプレミアリーグとプリンスリーグ。1年を通じた戦いもいよいよ後期へ突入し、夏を経て成長した選手たちが凌ぎを削っている。
ここではリーグ戦で躍動を見せる選手たちをピックアップしていきたい。今回はプレミアリーグEAST・第14節の流通経済大柏vs鹿島アントラーズユースの首位決戦から。気合い十分で試合に臨んだ鹿島ユースのCB元砂晏翔仁(あんとに)ウデンバだったが、相手の勢いを止めきれずに0-4の大敗。試合後、彼が口にした心境とは――。
「4失点しているということを重く受け止めないといけません。4失点はセンターバックの責任だと思っているので、まずは自分にベクトルを向けて向き合いたいです」
悔しさを押し殺すように、それでも言葉を選びながら淡々と語った。この日、192センチの長身を誇る大型DFは、6月28日の第11節・FC東京U-18戦以来となるユースの試合のピッチに立ち、90分間を戦った。
「ユースに来たらチームを勝たせられる存在にならないといけないのに4失点は悔しいです」
高校3年生にしてプロの世界に身を置く今、日々の練習をトップチームでこなし、コンスタントにリーグ戦のベンチ入りを果たしながらも、なかなかそのピッチに立てないという壁に直面している。
2026-27シーズンのJ1リーグ開幕からベンチ入りを果たし、8月26日の天皇杯・アトレチコ鈴鹿戦ではボランチとして先発して90分間プレー。さらに29日のJ1第4節・東京ヴェルディ戦では後半43分に投入され、リーグ戦デビューを果たした。しかし、その後もベンチ入りしながら出番を得られない試合が続いた。
特にCBは試合途中で交代する機会が限られるポジション。さらにボランチは鹿島にとって激戦区で、柴崎岳、三竿健斗、マテウス・ブエノら経験豊富な選手たちに割って入らないといけない。
ベンチに入ったからといって出場できるとは限らず、入念な準備をしても出番が来ない試合が続いた。
「ベンチに入っても出られない試合が多いし、その中でコンディションを上げていかないといけないので、そこは難しいです」
実戦から遠ざかるなかでコンディションを維持し、さらに高めていかなければならない。これこそプロの難しさ、厳しさであった。
だからこそ、今回の90分間は彼にとって貴重な実戦の機会だった。
「いつも通りにできたと思う反面、ふくらはぎとかがつりそうになったり、もっと飛べるところで飛べなかったりしました」
トップチームで高い強度の練習を積んでいても、90分間を通して試合を戦う感覚は別物だ。思うように身体が動かない場面もあり、改めて実戦の重要性を痛感した。
成長を見せた後半22分のビッグプレー
それでも、以前取材した時と比べ、身体つきには確かな変化が見て取れた。フィジカルは着実に逞しさを増しているし、競り合う際の身体の当て方、相手を誘導してのボールハントなど、駆け引きも確実に上達している。
印象的だったのは後半22分のビッグプレーだった。流経大柏は中央からスルーパスを通し、プロ注目のFW渡辺瞳也が完璧な動き出しからボールを受けて抜け出した。GKと1対1になると思った瞬間、斜め後方からウデンバが高速で迫り、右足を伸ばして渡辺の足もとからボールを絡め取って、そのままマイボールにした。
このプレーには熱烈な応援をしていた流経大柏の応援団からも歓声が上がり、そのプレーを見ていた相手GKの大泉未来も「今の凄すぎる」と思わず口にしていた。
ウデンバは思うように試合に出られない時間も、決して成長が止まっていたわけではない。一方で、現在の立場を冷静に受け止めている。
「トップのベンチに入れるかどうかの際のところに常にいるなかで、今回の試合(同じ日に行われたJ1第8節の川崎フロンターレ戦)でベンチに入れなかったのは、シンプルに争いに負けたということです」
その現実から目を背けない。トップでもユースでもいいプレーを継続しなければ、最終的にトップの試合には出られなくなる。そうした危機感があるからこそ、今回の4失点は一層重くのしかかった。
だが、ウデンバの言葉には、苦しさだけではない強い意志が宿っていた。
「次はどうなるか分からないのですが、自分の中で反省すべきところは反省をして、今日の後半は次につながる部分も見えたので、そこはしっかりと活かしていきたいと思っています。トップで試合に出る、出続けるのが絶対的な目標は揺るぎませんし、今のような時期はほとんどの選手が『必ず通る道』だと思うんです。でも、僕はそれを『まだ高校生だから』で片付けずに、しっかりと練習から本気で出番を掴む気持ちで取り組み続けたら、必ずできると思っています」
プロの世界に飛び込んだ以上、年齢は言い訳にしない。すでに本物のプロの世界での勝負が始まっている。
17歳で味わう、近くて遠いトップチームのピッチ。出場機会を待つ難しさも、90分間を戦う苦しさも、ユースで味わう4失点の悔しさも、今しか得られない経験だ。そのすべてを力に変えようとしている。
日本の将来を照らす光の1つでもある大型DF元砂晏翔仁ウデンバは、プロの世界で生き抜くための壁に真正面から向き合っている。
(安藤隆人 / Takahito Ando)
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』、新刊は『ともに歩き出す サッカーと家族と新しい日常』(ともに徳間書店)。講演家としても全国を回っている。元・名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター(2022年〜2026年4月)、現・國學院大學体育連合会蹴球部コーチ。






















