アジア杯落選「苦しかった」 意識改革しゴール量産…W杯で目指す「本物のストライカー」

昌平2年生FW立野京弥「攻守において結果を残さなきゃいけない」
9月5日に夏の中断期間を終え再開したプレミアリーグとプリンスリーグ。1年を通じた戦いもいよいよ後期へ突入し、夏を経て成長した選手たちが凌ぎを削っている。
ここではリーグ戦で躍動を見せる選手たちをピックアップしていきたい。今回はプレミアリーグEAST・第13節の昌平vs青森山田の一戦から。この試合、勝利の立役者となったのは2年生FW立野京弥だった。圧巻のハットトリックでチームを4-2の勝利に導いた。
ストライカーの本能が、解き放たれた。開始わずか1分。右サイドを突破したMF長谷川昂星がゴール前へボールを送ると、立野は迷わずGKの前へ飛び込んだ。当初はマイナスの位置で受けようと考えていたが、相手守備陣が中央を固めたのを見て瞬時に判断を変えた。
「GKの前に突っ込めというのは芦田(徹)監督からも言われているので、そこは意識してできたと思います」
ワンタッチでゴールに流し込んで先制点を奪うと、圧巻だったのが前半21分の2点目だった。MF飯島碧大が左サイドから送ったロングボールに反応して最終ラインの背後へ飛び出す。ペナルティーエリア右手前で落下してきたボールを左足アウトサイドのワンタッチで前方へ置くと、そのまま右足を振り抜き、逆サイドのネットを揺らした。
「トラップがすべてでした。右足でトラップしたら詰まってしまうのは分かっていたので、左足アウトで前に置いて、そのまま狙いました。イメージ通りでした」
ここに今の立野が凝縮されていた。このシーン、裏を取られた相手サイドバックの玉置秀翔が寄せにきていた。そこで相手からボールを隠すように右足でトラップをしたり、切り返して玉置を剥がしてからシュートをしたりと慎重な選択をすることなく、最短距離を正確な技術と強気な姿勢で一気に射抜いたことに意義があった。
そして、2-1となった後半4分には、左サイドでボールを受けると、対峙したMF中村蓮を鋭い切り返しで剥がして、ゴールまで約25メートルの位置から迷わず右足を一閃。相手に当たったボールは、その勢いのままGKの頭上を破ってゴールへ吸い込まれた。
「その前に失点してしまっていたので、頭の中に3点目を決めるという意志が強くなっていたので打ちました」
ハットトリック達成。さらに後半6分には相手クリアを拾い、ヒールパスで1年生FWオツコロ海桜のゴールをアシスト。3ゴール1アシストの大活躍で勝利を手繰り寄せた。
「前期を終わっていろいろ考えて、チームでも代表でも守備を求められているなかで、守備を意識してやりながらも点を取るのが本物のストライカーだと思って後期に臨んでいます」
FC LAVIDAから昌平に進み、年代別日本代表にも名を連ねてきたストライカーだが、最近はゴールという結果に苦しんできた。昨季も1年生ながらエースストライカーとして最前線に君臨したが、プレミアEASTでは4得点。MF長璃喜(川崎フロンターレ)が8ゴールと気を吐くなかで、個人的には不本意な結果に終わった。
爆発が期待された今季も前期11試合を終えて3得点で折り返し、インターハイではノーゴールに終わり、チームも3回戦敗退を喫した。さらに5月に行われたU-17アジアカップのメンバーからも落選した。そこで立野は、自分に何が足りないのかをもう一度見つめ直した。
「代表では点を取れていた(昨年4月のフランス遠征で4試合2ゴール、10月のウズベキスタン遠征で3試合1ゴール、今年2月のバルコムカップで3試合3ゴール)のですが、それ以外のプレーの質が低かった。前線で収めきれなかったし、守備の献身性、プレーの正確性が足りなかった。でも、その一方でチームではゴールという結果を残せなかった。勝負強さやゴールへの積極性を含めて、すべてを意識して伸ばしていかないといけないと思ったんです」
夏は前線からのプレス、コンパクトな守備、味方との連動、切り替わった瞬間の動き出しと動き直しを徹底的に磨いた。
青森山田戦でも象徴的なシーンがあった。前半45分、相手がカットインから攻撃に転じようとした瞬間、前線から一気にプレスバック。相手の懐からボールを奪い、そのままカウンターにつなげた。さらに2トップを組むオツコロを前に残し、自らが広範囲に動いて守備をする場面も目立った。
この献身性について「先輩なので」と笑ったが、そこにはエースとしての心境の変化がある。点を取れない苦しい時間のなかで、立野は点を取ることだけを追いかけたのではない。守備をする。味方のために走る。ボールを収める。プレーの精度を高める。広い視野を持ってストライカーとしての土台をもう一度作り直した。
「この半年はチームも思うように勝てなかったので苦しかったし、そのままインターハイを迎えて、そこでも結果が出せずに本当に苦しかった。でも夏の取り組みが今、花開いていると思います」
プレミアEAST後期再開後は2試合連続ゴールで、後期だけで早くも4得点。そして青森山田を相手に見せた3本のシュートには、それまで胸の内にあった迷いを振り切ったかのような力強さがあった。
次なる舞台はU-17日本代表として臨むフランス・リモージュ国際大会だ。その先には11月のU-17ワールドカップ(W杯)が待っている。
「代表で攻守において結果を残さなきゃいけない。アジアで残れなかった分、U-17W杯には絶対に出場したいので、まずはフランスで結果を出して、戻ってからもプレミアで結果を出し続けたい」
苦しんだ時間を経て、再びゴールを量産し始めた昌平のエース。世界大会への出場を懸けたサバイバルレースに向けて、立野京弥が「俺がいるぞ!」と力強く名乗りを上げたハットトリックであった。
(安藤隆人 / Takahito Ando)
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』、新刊は『ともに歩き出す サッカーと家族と新しい日常』(ともに徳間書店)。講演家としても全国を回っている。元・名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター(2022年〜2026年4月)、現・國學院大學体育連合会蹴球部コーチ。























