「アフリカ勢は日本を追い越している」 W杯で痛感…岩政大樹氏が指摘する”世界との差”「もっと真剣に」

インタビューに応じた東京学芸大の岩政大樹監督【写真:元川悦子】
インタビューに応じた東京学芸大の岩政大樹監督【写真:元川悦子】

DAZN解説で見えた「世界との距離」

 東京学芸大学蹴球部の監督として新たなスタートを切った元日本代表DF岩政大樹氏。今回は、指導者、そして元代表選手の視点から「日本代表の現在地と未来」に鋭く切り込む。2026年北中米ワールドカップでの戦いを経て、かつての盟友・大岩剛次期監督への体制移行をどう見るのか。そして、解説者として世界最高峰の戦いを見つめて痛感したという「世界との距離」と、日本サッカー界が直面するシビアな課題について率直な思いを聞いた。(取材・文=元川悦子/全6回の5回目)

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 北中米W杯でスペインが16年ぶりの頂点に立ってから約2か月が経過した。ラウンド32で敗退した日本代表は森保一監督の2027年アジアカップ(サウジアラビア)までの続投が決定。3月以降は2024年パリ大会、2028年ロサンゼルス大会の五輪代表を率いている大岩剛監督が後を引き継いで2030年W杯に向かうことになっている。

 その大岩監督と鹿島アントラーズ時代にセンターバック(CB)コンビを組んで2007~09年の3連覇を達成。2011~13年にはコーチ・選手という間柄でかかわってきた岩政大樹は、先輩のサッカースタイルをこう語る。

「剛さんは基本的に保持では4-3-3の形で戦う監督ですね。鹿島を指揮されていた時は違ったと思いますが、オリンピックではほぼ一貫されています。それに合う選手がいるかどうかが重要だと僕は思います。

 森保監督がこれまで長く主力と位置付けてきた選手たちがピタッと合えばいいですけど、必ずしもそうなるとも限らない。それに森保さんは2026年W杯では3バックをベースに戦ったので、ギャップが生まれるかもしれません。どういう選手を選び、起用するか気になります」

 岩政が少し触れたように、今の日本サッカー協会(JFA)はA代表から五輪代表、年代別代表に至るまで同じフォーメーションで揃えようとはしていない。前述の通り、2026年W杯の森保監督は3-4-2-1がベースであり、大岩監督の五輪代表は4-3-3か4-2-3-1、山口智監督が率いているU-19は3-1-4-2で、全てバラバラだ。山本昌邦技術委員長は「監督それぞれのやり方がある」と各指揮官の戦い方を尊重しているが、U-19代表の主力がすぐに五輪代表で使えるかというと、そうとも言えないところがある。五輪からA代表に昇格するときも同様で、どうしてもミスマッチが起きがちだ。

 今回、W杯王者に輝いたスペインの場合は全ての代表チームが同じ4-3-3で戦っている。だからこそ、ラミン・ヤマルやパウ・クバルシ(ともにバルセロナ)のような10代選手が主力として活躍できるのだ。そのあたりを岩政も問題点だと認識している様子だ。

「あえて育成年代でいろんなシステムを経験させて、対応力のある選手を育てたいということであれば、それも一つだと思いますが、この年代でどうでしょうね。ギャップによる問題もありそうだなとは思います。

 自分が参加した2010年南アフリカW杯で優勝したスペインが今回頂点に立ったのも、ここ10~20年くらいで育成のモデルが確立したことが大きいのかなと思います。僕が子供の頃のスペインは(ペップ・)グアルディオラのような名手はいましたけど、そこまで独自のスタイルを築いている印象はなかった。W杯もベスト8くらいで負けていることが多くて、今の日本より少し上くらいの位置づけでした。そこからフォーメーションやプレーモデルを確立させ、2010年の成功があり、今回の2度目の世界一に至ったと思います。

 日本の場合も『ジャパンズウェイ』という言葉はだいぶ前からありますし、それを目指すんだという方向性をJFAも唱えていますけど、『世界一を目指すのはどういうことか』というイメージからの逆算でそのディテールを丁寧に作る必要があると僕は感じています」と岩政はズバリ指摘する。

 そういう考えが強まったのも、2026年W杯に解説者として参加したことが大きかったようだ。今回岩政氏は現地には行かなかったものの、DAZNで10試合程度の解説を担当。世界各国の戦いを映像分析する機会に恵まれた一方で、日本が飛躍的に成長したという手ごたえをつかむことができなかった。むしろ優勝までの距離が広がったという印象さえ抱いたという。

「多くの人が『日本は成長してる』と言いますけど、当然世界も成長していますよね。日本の成長って10年前、20年前の日本との比較でみなさん言うんでしょうけど、アフリカ勢は日本を追い越している。モロッコやエジプトはより世界トップに近づいていますし、今大会ではDRコンゴやカーボベルデも健闘しましたよね。

 アジアの中では日本は大きな進化を遂げていますが、本当に優勝に近づいているのはまた別問題なのかなと。僕はそれを強烈に感じました。

 そこから巻き返していくためにも、日本のフットボールとは何なのかをもっと真剣に模索していくべきなんじゃないかなと思います。日本の選手はスペイン人選手に体格的に似ていますけど、彼らのサッカーを追いかけているわけではなくて、むしろフランス的な強化を進めている印象もあります。それも確かに一案でしょうけど、日本が本当にトップ5を狙うなら何が必要なのか。そこを明確にしていく時期に来ていると思います」

 岩政の視点はやや厳しいものも混じっているようにも映るだろうが、そのくらい真剣に取り組まなければ、これ以上の成果を得るのは難しいのは確か。日本代表のためにあえて苦言を呈することができる人材の言葉に耳を傾けることも重要だろう。(本文中敬称略、6回目に続く)

(元川悦子 / Etsuko Motokawa)



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元川悦子

もとかわ・えつこ/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。

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