W杯敗退直後の再会「いつも通りのアオでした」 田中碧と確認した絆…川崎新主将・脇坂泰斗の誓い「タイトルを」

日本代表の田中碧【写真:徳原隆元】
日本代表の田中碧【写真:徳原隆元】

帰国前にもらった連絡「もう俺を欲しているんだなと(笑)」

「可愛くてうるさくて、前向き、そして可愛い。いつも通りのアオでした」

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 7月7日のこと。自身のインスタグラムを更新した川崎フロンターレの脇坂泰斗は、帰国したばかりの日本代表・田中碧とのツーショット写真をそんな言葉とともに公開した。ハッシュタグに「#弟のような存在だけど大尊敬」の文字を添えて。

 ワールドカップの激闘を終え、ラウンド32でブラジルに敗れるという悔しさを背負って日本代表は帰国した。心身ともに疲弊しているであろう弟分から連絡が届いたのは、拍子抜けするほど早いタイミングだったという。

「帰国する前に連絡をくれたんで。自分の優先順位っていうのは高いと感じましたね。(連絡が)来るのは大体わかってたんですけど、もう俺を欲してるんだなと(笑)」

 冗談めかして笑う脇坂だが、その表情にはどこか愛おしそうな色が混じる。敗退の痛みを抱えながらも、すぐに前を向こうとする田中の姿は、脇坂自身の胸にも小さな火をつけた。

「多少、僕もどんな感じなんだろうなっていうのはあったんですけど、普段のアオでした。もう切り替えて前を向いてましたね。それを見て、自分ももっともっとやらないとなっていう気持ちにもなりました」

 二人を繋ぐ歴史の始まりは、脇坂が川崎フロンターレのユース時代に、まだジュニアユースに所属していた田中が練習参加していた頃までさかのぼる。だが、二人の絆が深まったのは、共に川崎でプロになってからだ。

 大卒の脇坂が2018年に入団し、高卒の田中は17年に入団。1年差でプロの世界に飛び込んだ二人は、選手寮で田中や同期のタビナス・ジェファーソンとともに同じ釜の飯を食って過ごした。当時の二人を待っていたのは華やかなピッチではなく、出番を掴むための泥臭い下積みの日々。当時のことをこんな風に脇坂が話してくれたことがある。

「2018年に関しては僕とアオが下積みというか、切磋琢磨っていう表現が合う感じでした。もう慰め合いです(笑)。練習試合でも2本目ではなく、3本目に僕らが出るような状態。高め合うっていうか、励まし合いながらやってました」

 麻生グラウンドの片隅で、出番を渇望しながらパス&コントロールを繰り返す日々。その苦悶の時間が、二人の間に独特の波長を育んでいった。トレーニングマッチでボランチの田中とトップ下の脇坂が組むと、面白いように結果が出た。当時の二階堂悠コーチから「お前らは阿吽の呼吸だな」と評されたほどだった。

 先に扉をこじ開けたのは弟のほうだ。2018年終盤にデビュー戦でゴールを飾った田中は、翌シーズン序盤にチャンスを掴み、瞬く間にスタメンへと上り詰めていった。脇坂のJリーグ初スタメンは少し遅れた第10節のベガルタ仙台戦だった。その試合でトップ下の脇坂が小林悠のゴールをアシストすると、ボランチの位置から誰よりも早く駆け寄ってきたのは田中碧だった。

「ユウさんが点を取ったのに、アオがアシストした僕のほうに来て喜んだんです。一緒に成長してきましたが、ちょっと先を越されてるのは僕個人としてあるから、すごく刺激になってます」

 二人は川崎の中盤を担う主力へと躍進を遂げ、その年のルヴァンカップ初制覇へとクラブを牽引していくこととなった。

 時が流れ、田中が欧州に羽ばたいてからも、両者の距離感は変わらない。帰国するたびに顔を合わせ、言葉を交わす。守田英正や旗手怜央、谷口彰悟といった海外で戦う仲間たちの厳しい日常に触れるたび、脇坂は自らの背筋を伸ばしてきた。

 今回の対話では、世界の頂点を目指して走り続ける代表選手たちのタフさに刺激を受けたという。この取材時はまだW杯期間中だった。日本はすでに敗退していたが、強豪国はまだ勝ち残っている状態だ。戦い終えた選手たちはそこからオフを挟んで新シーズンに向かう日程の過酷さを思うと、トップ選手たちの生きている世界に尊敬の念を抱いたようだった。

「オフが例年より短いなんて言ってられないなって気持ちになりますよね。あれだけトップの選手たちが、あのスケジュールのタイトさでやっている。ワールドカップから新シーズンに向かう時間もタイトだし、またシーズン中もタイトなわけで。なので、自分らはやっていくしかないっていうのは感じますね」

 世界の最前線で揉まれて帰ってきた田中が、真っ先に求めた兄との時間。食事を通じた他愛もない会話と笑い声のなかで、田中は傷を癒やし、再び前を向く力を得たはずだ。

 そして脇坂もまた、次なるピッチへと静かに牙を研いでいる。「いつも通りのアオ」から受け取ったのは、変わらない絆と、前へ進むための確かなエネルギー。今月27日には、今季も川崎のキャプテンマークを巻くことが正式に発表されている。

「2026/27シーズンこそタイトルを。

そして、もう一度アジアの舞台へ。

クラブ創設30周年、ここからさらにクラブが飛躍していけるように選手、スタッフ、サポーター一つになって戦っていきましょう。」

 クラブ公式サイトを通じて、その決意表明をコメントしている。川崎の背番号14を背負い、キャプテンとして先頭に立つ脇坂は、すでにまっすぐ未来を見据えている。

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いしかわごう

いしかわ・ごう/北海道出身。大学卒業後、スカパー!の番組スタッフを経て、サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の担当記者として活動。現在はフリーランスとして川崎フロンターレを取材し、専門誌を中心に寄稿。著書に『将棋でサッカーが面白くなる本』(朝日新聞出版)、『川崎フロンターレあるある』(TOブックス)など。将棋はアマ三段(日本将棋連盟三段免状所有)。

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