英ア激突で蘇る退場劇「1人の愚かな若者」 戦犯扱いの貴公子…敵国は歓喜「シルトンの仇を討った」

イングランド代表で活躍したデイビッド・ベッカム【写真:Press Association/アフロ】
イングランド代表で活躍したデイビッド・ベッカム【写真:Press Association/アフロ】

スター軍団が激突した1998年 死闘を引き裂いた一瞬の報復

 FIFA北中米ワールドカップ(W杯)準決勝という極限の舞台で、世界のサッカーファンが熱狂するカードが実現した。イングランド対アルゼンチン。過去5戦してイングランドの2勝に対し、アルゼンチンが3勝で一歩リード。両国の対戦は、単なる強豪国同士の激突という枠を完全に超え、因縁で渦巻く物語で彩られている。

【PR】ABEMA de DAZN 学割キャンペーン、最初の3ヶ月・月額980円で国内外の世界最高峰サッカーコンテンツが視聴可能に!

 マラドーナの伝説から12年後の1998年フランス大会。因縁の両国は、決勝トーナメント1回戦で4度目の激突を果たした。

 アルゼンチンがFWガブリエル・バティストゥータやMFハビエル・サネッティのゴールでネットを揺らせば、イングランドもエースFWアラン・シアラーと、若きワンダーボーイFWマイケル・オーウェンの衝撃的な独走ゴールで応戦。前半だけで2-2という、歴史に残る死闘の様相を呈していた。

 しかし迎えた後半2分、ピッチ中央で事態は急転する。イングランドの新たな象徴となるはずだった当時23歳のMFデイビッド・ベッカムが、歴史に残る事件を起こした。

 パスを受けたベッカムに対し、アルゼンチンの闘将MFディエゴ・シメオネが背後から激しくチャージ。ファウルを受けてうつ伏せに倒れ込んだベッカムは、フラストレーションから自身の右足を跳ね上げ、背後にいたシメオネの足を引っ掛けて転倒させてしまった。

 ベッカムの足裏が軽く触れた程度だったが、老獪なシメオネは痛烈なダメージを受けたかのようにピッチに倒れ込む。この軽率な報復行為を主審は見逃さず、若き貴公子には無情にもレッドカードが突きつけられた。

 一瞬の感情の乱れが、白熱した死闘を完全に壊してしまった瞬間だった。

 数的不利を背負わされたイングランドは、10人で延長戦まで耐え抜いたものの、最後はPK戦の末に無念の敗退。大会を去ることになった母国の怒りの矛先は、一斉に若き背番号7へと向けられた。

 英大衆紙「デイリー・ミラー」は翌日、「10人の勇敢な獅子と1人の愚かな若者」というセンセーショナルな見出しで大々的に報道。瞬く間に全英の“戦犯”へと仕立て上げられたベッカムの姿に、アルゼンチン国民は「20年前のシルトン(神の手の被害者)の仇を討った」とばかりに溜飲を下げた。両国の因縁の歴史に、また一つ消えない深い傷跡が刻まれた。

page1 page2

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング