主審崩壊のW杯で世界が“ドン引き” 極限の死闘…ベンチへ蹴り込み飛び交ったイエロー18枚

2022年カタール大会でアルゼンチン代表とオランダ代表が激突【写真:ロイター】
2022年カタール大会でアルゼンチン代表とオランダ代表が激突【写真:ロイター】

日韓W杯で起きた「16枚」の警告 20年後に塗り替えられた記録

 4年に一度、国の威信を懸けて激突するFIFAワールドカップ(W杯)。世界最高峰の技術と戦術がぶつかり合う一方で、勝利への執念が強すぎるあまり、時に選手たちは冷静さを失い、ピッチが荒れ狂うことがある。W杯の歴史を振り返ると、主審のコントロールが崩壊し、イエローカードが飛び交う異常事態が何度か起きてきた。今回は、長年“史上最悪の乱戦”と語り継がれてきた2002年日韓大会の一戦と、その記録を塗り替えて世界をドン引きさせた2022年カタール大会の「極限の死闘」を振り返る。

 W杯における「イエローカード乱発」の象徴として長年語られてきたのが、2002年日韓大会グループリーグのドイツ対カメルーン戦だ。

 雨で滑りやすくなったピッチコンディションが影響したとはいえ、この試合は序盤から完全に歯車が狂っていた。前半8分にカメルーンのMFマルク・ヴィヴィアン・フォエに最初のイエローカードが提示されたのを皮切りに、前半だけでカメルーンに3枚、ドイツに至っては6枚のイエローカードが提示。ドイツDFカルステン・ラメロウは前半のうちに2枚の警告を受けて退場となってしまう。

 後半に入っても、スペイン人のアントニオ・ロペス主審の笛は鳴りやまない。カメルーンに5枚、ドイツに2枚のカードが追加され、カメルーンFWパトリック・スッフォに至っては途中出場からわずか15分間で2度の警告を受けてピッチを去る始末だった。

 試合は数的不利を先に背負いながらもドイツが2-0で勝利を収めたが、両チーム合わせて「計16枚」のイエローカードと2人の退場者を出した一戦に、ドイツメディアは「主審が試合をコントロールできなくなっていた」と痛烈に酷評。長らく大会史上最多記録として歴史に刻まれていた。

 しかし、その不名誉な記録は20年後、衝撃的な形で更新されることになる。舞台は2022年カタール大会の準々決勝、アルゼンチン対オランダの大一番だ。

 互いの意地とプライドが激しく衝突し、前半からイエローカードが乱れ飛ぶ荒れ模様の展開となっていたこの試合。アルゼンチンが2-1でリードして迎えた後半44分に、両チームのフラストレーションが完全に爆発する事件が起きる。

 アルゼンチンMFレアンドロ・パレデスが、自陣右サイドでオランダDFナタン・アケに対して激しいスライディングタックルを見舞う。これだけでもファウルだが、直後にパレデスはこぼれたボールを目の前のオランダベンチへ向かって強烈に蹴り込んだのだ。
この挑発的な行為にオランダベンチが激怒。控え選手たちが一斉にピッチへ飛び出し、パレデスを激しく突き飛ばすなど両軍が入り乱れる大乱闘寸前の事態へと発展した

 パレデスへのイエローカードでその場はなんとか収拾されたものの、その後も試合の熱は冷めやらない。延長戦、さらにはPK戦から試合終了後に至るまで主審のカード提示は止まらず、オランダのDFデンゼル・ダンフリースはPK戦以降だけで2枚のイエローカードを受けて退場となった。

 試合中に出されたカードが取り消される場面もあるなど、現場は大混乱。海外メディアの間でも枚数について情報が錯綜したが、最終的にFIFA公式サイトの記録ではオランダに8枚、アルゼンチンに10枚の「計18枚」という驚愕の数字が残された(※コーチ陣への提示含む)。

 試合は2-2のまま突入したPK戦をアルゼンチンが4-3で制し、準決勝へと駒を進めた。日韓大会の「16枚」を上回る、W杯史上最多のイエローカードが提示されたこの狂気の120分間は、極限のプレッシャーが引き起こした歴史的大乱戦として今後も語り継がれていくはずだ。

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