畳みかけ成功は「マネジメントの差」 狙い打ち砕いた森保J…安田理大が選出MVP「1人だけ余裕」

FOOTBALL ZONEのYouTubeに出演した安田理大氏
FOOTBALL ZONEのYouTubeに出演した安田理大氏

安田理大氏がFOOTBALL ZONEの公式YouTubeに出演

 森保一監督率いる日本代表は6月14日に北中米ワールドカップ(W杯)のグループステージ初戦の強豪オランダ戦を2-2で引き分けた。2度のリードを許しながらも驚異的な粘り強さで勝ち点1を獲得。激闘の舞台裏で、ピッチ上では何が起きていたのか。ベースキャンプ地のナッシュビルで取材を続ける元日本代表の安田理大氏に、オランダ戦の分析や選手たちの振る舞い、そして独自の視点で選ぶ「試合のMVP」について聞いた。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部)

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 オランダ戦から一夜明けた15日、日本代表はベースキャンプ地のナッシュビルへと戻り、U-19日本代表との非公開練習試合を実施。スタメン以外のメンバーが中心となって汗を流すピッチの傍らで、安田氏は「試合が終わった後は気持ちが入りすぎて、頭に酸素が回らずクラクラした」と興奮冷めやらぬ様子で激闘を振り返った。

「本当に素晴らしいゲームでした。試合中は日本代表に気持ちが入っている分、オランダにボールを握られて苦しい、攻められているという印象が強かった。でも、試合後にスタッツを見たら、ポゼッション率はほぼイーブン。シュート数もオランダが10本(枠内5)、日本が10本(枠内3)と、終わってみればほとんど互角のゲームだった。本来ならやっぱり勝ちたかったけど、世界の強豪を相手に、負けている状態から2回追いついての勝ち点1というのは、ものすごくポジティブに捉えていい」

 オランダ戦、ベンチスタートとなった新キャプテンのDF板倉滉に代わり、主将マークを巻いてピッチに立ったのがMF堂安律。2度のリードを奪われる苦しい展開でも、堂安のキャプテンとしての振る舞いがチームを救ったと安田氏は指摘した。

「堂安選手は失点した後に、自らが先頭に立って円陣を組み、みんなを集めて『次どうするか』という戦い方をしっかり落とし込んでいた。試合後のインタビューでも話を聞いたが、彼は攻撃的な選手だから、周囲はもっと攻撃での輝きを期待していたかもしれない。でも、堂安選手としてはある程度ボールを持たれる展開も想定内だった。あれだけ守備に追われて攻撃に関わる回数が少なければ、普通ならストレスが溜まるはずなのに、驚くほど冷静だった。その辺りに、森保ジャパンで8年間やってきた経験の多さ、いわゆる“試合巧者”ぶりが本当に出ていた」

 戦術面でも、堂安はオランダのロナルド・クーマン監督の“狙い”を完全に打ち砕いた。事前会見でクーマン監督は「左サイドの(コーディ・)ガクポと(右ウイングバックの)堂安のところでミスマッチが生まれるから、そこから攻撃を仕掛けたい」と言及していたが、結果は日本の粘り勝ちだった。

「ガクポに対して本当にしっかり抑え込んでいた。元々PSVで一緒にプレーしていた元同僚ということもあって、お互いの特徴が分かっていた。リバプールで活躍する世界トップクラスの選手を相手に、まずはそこを抑えきったところが非常に大きかった。オランダは伝統的に両ウイングから攻撃を作るチーム。そこを停滞させれば攻撃がスムーズにいかなくなる。本来は攻撃が持ち味の久保選手が堂安選手を助けるために猛烈なプレスバックをして、サプライズ気味のスタメン起用だった左シャドーの前田選手も前後に走り回った。サイドの選手、ウイングバックとシャドーの選手があれだけハードワークして粘り抜いたからこそ、後半の畳み掛けに繋がった」

 また、試合前の駆け引きでも日本に分があった。安田氏は分析する。

「クーマン監督は余裕を見せて親善試合ウズベキスタン戦のスタメンをそのまま本番でも出してきた。逆に森保監督は親善試合を行わず、U-19日本代表をトレーニングパートナーに呼んで完全クローズド(非公開)で前田選手のシャドー起用などを準備してきた。この完全非公開にできたマネジメントの差は大きかった。試合前は過剰に心配もしましたが、完全に杞憂でしたね」

 後半、日本は3枚替えを敢行してシステムを4バックへと変更。この日本の交代策に対応しきれず5バックで引き気味になったオランダ。安田氏が見るのは両指揮官によるゲームマネジメントだ。

「途中から入った冨安(健洋)選手が、それまで堂安選手や久保選手がフォロワーとして守っていたガクポのところを、1人で守れるようになった。だからこそ、菅原(由勢)選手と伊東純也選手がより攻撃的にいけるようになって、右サイドの連係がスムーズになった。あの時間帯にあの推進力とスピードを持つ伊東純也が出てくるなんて、相手からしたらたまったもんじゃない。モンテレイでの事前キャンプからコンディションが一番良いと注目していた菅原選手も含め、右サイドの完全な崩しから同点弾が生まれた。ダラスのスタジアムに集まったファン・サポーターの大声援も含め、日本全体で掴んだ大きい勝ち点1」

 激闘のオランダ戦において、安田氏がMVPを挙げるとしたら誰か。

「もちろん素晴らしいゴールを決めた中村敬斗選手も行きたいところ。でも僕は鎌田大地選手を挙げたい。実際にスタジアムで試合を見ていて、オランダという世界の強豪を相手に、鎌田選手1人だけ『俺、余裕ですよ』という空気感でプレーしていた。前半の途中、自陣のハーフウェーライン少し手前でボールを持った時に、1回天井をふわっと見上げるようなシーンがあった。それくらい周りが見えていて余裕がある証拠。最終的にはラッキーな形とはいえ、同点ゴールも決めた。今季プレミアリーグのクリスタル・パレスでスタメンを張り、ヨーロッパの舞台(カンファレンスリーグ)でも優勝を経験している。鎌田選手が醸し出した余裕はチーム全体を落ち着かせた最大の要因だったと思う」

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