田中碧のプレミア1年目「思った以上にやれた」 隠す力…特徴を突き詰めて「やるべきことを100%」

田中碧がプレミアで掴んだ手応え
北中米ワールドカップ(W杯)に向けてメキシコ・モンテレイで事前キャンプを行っている日本代表は現地時間6月6日、練習を実施した。練習後に取材に応じたMF田中碧は、プレミアリーグでの1年を振り返り「総じて思った以上にやれた」と手応えを語る一方、「頭と技術で(足りないところは)隠せる」と冷静な自己分析でW杯に臨む姿勢を示した。
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プレミアリーグという舞台は、選手の本質を剥き出しにする。ごまかしの利かない強度、一瞬のミスを許さない相手、そして容赦なく下される評価。田中はそんな場所で1年間を過ごし、今、W杯のピッチへと向かおうとしている。
「総じて振り返った時に、思った以上にやれたなという感覚は個人的にすごくあります」
田中の言葉には虚勢がなかった。1年を通してすべてがよかったわけではない。いい試合も悪い試合もあった。それはサッカーである以上、当然だと言える。ただ、プレミアリーグに来る前に描いていた「ぶつかって入れ替わってカウンター」のような“プレミアらしさ”は、思っていたほど頻繁には訪れなかった。それもあって適応するのにさほど時間はかからなかった。その事実が、田中に1つの手応えをもたらした。
もっとも、田中の言葉はそこで終わらない。手応えの裏側に続いたもう1つの言葉が興味深かった。
「小さい頃からサッカーをしていると、フィジカルなり技術なり何かが足りないという状況が起きるんですけど、プレミアに行った時にもちろん足りないところは感じつつも、(その足りないところを)隠せたという表現が合っているかもしれない。頭と技術で隠せるからこそ、そこの差をうまく隠せたと思う」
例えば、フィジカルで上回る相手に対して、真正面からぶつかるのではなく、インターセプトや読みで補う。自分に足りない部分を認めた上で、別の手段で戦うことを選択した。田中はそれを率直に「隠す」という言葉で表現した。ともすると、後ろ向きに聞こえるかもしれないが、実際にはその逆だ。自分の現状を理解しながら、それでも戦える術を冷静に考えて実行に移した。7試合連続出場なしといった苦しい時期もあったが、腐ることなく、いま自分に何ができるかを実直に遂行したのだ。
プレミアリーグという環境は、その隠す力を磨くのに最適な場所だった。フィジカルコンタクトで圧倒するタイプではない田中にとって、むしろ自分の特徴を純粋に突き詰める場所にもなった。「他の選手たちが自分とは全く違うタイプだからこそ、自分のやるべきことを100%やることがチームのためになるのは大きかった」。周りと違うからこそ、輝ける。チーム内での立ち位置が明確だったことが、田中の適応を加速させた。
ただ、間違ってはいけないのは、現状に満足しているわけではないということだ。
「自分が目指している選手像がもっと上である以上、やはり1対1で相手にぶつかって飛ばしてボールを取りたいというのはありますね」
隠せる部分があるとしても、それで十分だとは思っていない。課題を課題として認め、必要なことはより研ぎ澄ましていかなければいけないことはわかっている。それでも“今は”持っている武器で戦い切る。そのリアリズムが、田中という選手の核心にある。
プレミアリーグの1シーズンで積み上げた基準、それが血肉となり新たなレベルへと成長を遂げた。そして、そこで培ってきたものを今度はW杯という舞台に持ち込むことになる。
「そんなに気負わずに、自信を持ってやることが一番いいのかなと思います」
簡単に手に入れることのできない1年間の重みが、その言葉を支えている。隠す力を持ち、違いを生む力を持ち、それでもまだ上を目指す田中が、世界の舞台で何を見せるのか。苦しみながら戦い抜いたプレミアリーグの1年、その答えを示す舞台がやってくる。
(林 遼平 / Ryohei Hayashi)

林 遼平
はやし・りょうへい/1987年、埼玉県生まれ。東日本大震災を機に「あとで後悔するならやりたいことはやっておこう」と、憧れだったロンドンへ語学留学。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。帰国後、サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして『Number Web』や『GOAL』などに寄稿している。
















