成功の秘訣は「根性」 代表OBが確信…Jリーグ→海外移籍に提言「行くだけだったら行くな」

6連勝でワールドカップに向かう森保ジャパン【写真:岩本太成】
6連勝でワールドカップに向かう森保ジャパン【写真:岩本太成】

指導者の顔を持つ鈴木隆行氏と小野伸二氏

 いよいよ北中米ワールドカップ(W杯)目前だ。2002年日韓W杯で日本を初めて決勝トーナメントに導いた元日本代表FW鈴木隆行氏と、同MF小野伸二氏がFOOTBALL ZONEの対談に登場。欧州をはじめとする世界の修羅場で戦ってきたレジェンド2人が厳しい環境を生き抜くための“覚悟”について議論した。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部)

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 技術的にも戦術的にも、過去最高とも言える成熟度を見せる森保ジャパン。現在の10代や20代前半の選手たちにとって、若くして海外へ飛び立つことは今や珍しくない。多くの国でプレーし、世界の酸いも甘いも噛み分けてきた2人は、世界で生き残るために必要な「技術」と「精神面」の掛け算について、さらに踏み込んだ持論を展開した。

鈴木「もちろん、技術とメンタル、どっちもなければ絶対無理。そもそも根性がないと絶対に生き残れません。だって向こうの戦いは本当に厳しい。自分と同じくらいのレベルの選手なんていくらでもいるし、そのなかでみんな『命懸け』でプレーしてくる。こっちの気持ち以上のものを上回ってプレーしてくるから、負けたらもう落ちていくだけ。そしたら、海外では絶対にプレーできない。だからそこの気持ちが備わっていないのなら、海外にはもう行くな、と」

小野「いや、そうですよね。『行くだけだったら行くな』と言いたい。行くのはいけるけど、その先には厳しい現実が待っているよ、と。そこで戦う覚悟がないならば、絶対に出ない方がいい。そんなに思っているほど甘くない」

鈴木「海外は、練習がもう試合をやっているみたいなもの。それくらい激しい。みんな必死で『絶対に這い上がろう』と思ってやっている。味方だけど、練習の中では敵でありライバルという感覚」

小野「それぐらいのバチバチした気持ちが練習からあるからこそ、チーム自体がどんどん上に上がっていく」

鈴木「だからもう1つ言えば『チームメイトを蹴落としてでも、俺が上がっていくんだ』くらいの気持ちを持たなければ、必ず痛い目を見る。打ちのめされて帰らなきゃいけない」

 コンプライアンスの遵守が厳しく叫ばれ「精神論」や「根性論」という言葉自体が敬遠されがちな現代の風潮もある。その中で、鈴木氏は小学生対象のサッカースクールを首都圏に4校展開しており、指導者としても活動する。若い選手のメンタルをどのように育てていけばよいと考えているのだろうか。

鈴木「僕はまず、自分が率先してその熱量を指導の中で見せます。その上で、気持ちの重要性を選手たちに説きますね。今の時代、足元の技術やドリブルがうまい選手って本当に増えている。でも、『戦えない選手』がもの凄く多い。あとは、その強い気持ちがプレーに表現できない選手、声が出ない選手が圧倒的に多い。僕が教えている生徒の中でも、ほとんどがそのタイプ。『じゃあ、お前らの目標は何なの?』と聞く。みんな『プロで活躍すること』『海外のチームで活躍したい』と言う。だったら『それじゃダメだぞ』と。そんな声も出さない、気持ちもプレーに現れないようなことをやっていたら、絶対に海外でもプロでも通用しない。だから僕は毎回、練習を止めて叱ります。でも、次の瞬間にまた声を出さなくなるから、『おい!どうなってんだよ!さっきハイって言っただろ!』って、また止めて(笑)」

小野「でも、それだけコーチが情熱を注いでくれているっていうのは、子供たちは今は分からなくても、本当に幸せなことだと思うし、これ以上嬉しいことはない。いつかその子たちが『あの時怒られたのは、自分への愛情だったんだな』って気づけるかどうかが大きい。自分のために言ってくれているんだと感じられたときに、初めて自発的な行動に変わっていく。隆行さんが言っているように、最初は相当な我慢と労力が必要な戦いだと思いますけど、こういう人がいないと選手は変わっていかない」

鈴木「小学生の3、4年生くらいになれば、監督やコーチが愛情を持って怒っているかどうかは、子供でも感覚で分かる。それに、海外に行けばもっとはっきりと、ダイレクトと言われる。前もってそういう厳しさを知らないで行っちゃうと、グサッと来すぎて落ちちゃう子がいる。理不尽に『声を出せ』と言うのではなく『なぜ気持ちを前面に出すことが、ボールの取り合いで自分にこぼれてくるか』をちゃんと説明して何度も何度も刷り込んでいます。一番エネルギーを使うから、練習後は毎回ぐったり(笑)」

 一方で小野氏もJリーグの特任理事として小学生対象のサッカー教室で講師として参加。全国各地の子どもたちと触れ合っている。

小野「僕が子供たちと触れ合う時は時間が限られているので、まずは目の前で僕自身が楽しそうに色々なプレーを見せて、『サッカーを心の底から楽しんでもらうこと』を一番に考えています。サッカーはいろんなことができる、イメージを働かせてもらう。戦う、走るというのは当たり前のことだけど、それ以外のものが見られると見ている人は『楽しかった』となる。スタジアムに足を運ぶ人が増えてくれた方が選手も気持ちいい。そういう選手が少しでも増えたら嬉しいと思って。自分が『こんなことできるんだよ』というのを伝えています」

 世界基準のメンタリティーを若年層から育てることの重要性を説いた2人。そのなかで、日本のトップを走る今の森保ジャパンが持つ「ハングリー精神」の高さに、改めて感銘を受けているという。

鈴木「今の代表選手たちは、みんな本当にハングリー。まだまだ『もっともっと上へ行きたい』と思っている。それはなぜかって言ったら、リバプールに遠藤航がいたり、世界のトップ・オブ・トップでやっている選手が身近にいるから。それを見た周りの選手たちが『俺もあそこに行きたい』と思って、自分の所属チームに戻って活躍する。今の選手たちがレベル的にどんどん先に行っているから、指導者の方が学ぶ時間が必要で、レベル的に少し遅れている可能性があるなと感じるくらい。それくらい今の代表は凄い」

小野「僕らなんかが何か言える立場じゃないくらい、今の選手たちは経験も積んでいるし、結果も出している。だから自分たちの力を信じて、全員で一つになってW杯を戦ってほしい」

 2002年に日本中を熱狂の渦に巻き込んだレジェンド2人。今の森保ジャパンに向ける視線は、確かな実力へのリスペクトと、世界を驚かせてほしいという純粋な期待に満ち溢れていた。

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