負傷離脱中にリーグ制覇「複雑」 消化試合も…鹿島DFが”内に秘めた思い”「楽しくて仕方ない」

鹿島の関川郁万【写真:産経新聞社】
鹿島の関川郁万【写真:産経新聞社】

鹿島DF関川郁万はFC東京戦で勝利に貢献

 J1百年構想リーグ地域リーグラウンド・EAST最終戦。すでに1位を決めていた鹿島アントラーズはFC東京との最終戦を1-0で制して、優勝を懸けるWEST1位のヴィッセル神戸とのプレーオフに向けて大きな弾みをつけた。

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 FC東京戦、並々ならぬ思いでピッチに立っていたのは鹿島のCB関川郁万だった。

「正直、2か月近く試合に絡めなくて、本当に試合に出る喜び、プロサッカー選手としてピッチに立つ喜びを感じられない時期で本当にいろいろ考えました。だからこそ、この試合は自分にとって重要な一戦だと受け止めていました」

 この言葉通り、彼は持ち前の屈強なフィジカルとバネを生かした空中戦と対人の強さを発揮し、ビルドアップ面でも縦パスを鋭く通すなど、大きな存在感を放ってクリーンシートでの勝利に大きく貢献した。

「本当にいろいろあった1年間でしたし、強くなった1年間でもあると思っています」

 関川は2019年に流通経済大柏高から鳴り物入りで鹿島に加入。そこからCBとして鹿島一筋、8年目を迎えている。

 ルーキーイヤーからコンスタントに出番を掴み、2022年から昨年途中までは不動のCBとして守備を支える存在だった。しかし、昨年5月のJ1リーグ第14節のFC町田ゼルビアとの試合で左膝複合靭帯損傷という大怪我を負うと、そこから10か月間ピッチから遠ざかり、チームの9年ぶりJ1制覇はジャージー姿で味わうこととなった。

「サッカーをやりたくて、やりたくて仕方がなくても、プレーが出来ない時間が長くて、本当に辛かったし、悔しかった。優勝の時はタイトルから遠ざかっていた中での優勝だったので素直に嬉しかったですが、心のどこかでピッチで味わいたい思いが残って、複雑な思いもありました」

 今年3月18日のアウェイ・町田戦で10カ月ぶりに復帰を果たし、続く第8節のホーム・ジェフユナイテッド千葉戦で初スタメンを飾って2-1の勝利に貢献したが、この試合後のミックスゾーンでの表情は曇っていた。

「難しいですね。去年タイトルを獲得したことで、チームが完成されている部分があって、そこに途中から入り込む難しさは正直あります。守備の持ち味は出せているのですが、攻撃のビルドアップの面はまだ怪我前の残像を持ちすぎてしまっているので、今のチームの状況にアップデートしていかないと厳しいと思っています」

 その違和感は的中し、第9節の水戸ホーリーホック戦でスタメンフル出場した以降は、ベンチ外の時間が続き、2試合にベンチ入りするも出番がやってこなかった。「うまくいかない」と思い詰めていた関川だったが、FC東京戦の1週間前、ある恩人から掛けられた一言で心が奮い立っていた。

「おい、えらい沈んだ顔しているな。怪我でずっとサッカーやってなかったんだから、もっと頑張れよ。頑張れば出来るだろ?お前なら」

 これはクラブハウスでばったりと会った鹿島の元・スカウト担当部長(今年1月に退任)の椎本邦一氏からか掛けられた言葉だった。この言葉に関川はハッとしたという。

「椎さんは自分を鹿島に連れてきてくれた人なので、その人からのメッセージというか、激励は嬉しいものがありましたし、『本当にやらないとダメだ』と思いました。椎さんが言うように、僕は本当に暗かったと思います。試合に出られないし、昨年と違って怪我から復帰しているのに、シンプルにコンディションが上げきれずに競争で負けている。鬼さん(鬼木達監督)の信頼をまだ掴み切れていない。でも、それに対して自分が100%向き合い切れていなかった。椎さんの言葉で気づかされました」

 だからこそ、FC東京戦はすでに1位が決まった“消化試合”だったが、関川は闘争心をフルに滾らせて、人生を左右する一戦と位置付けて挑み、結果で示すことができた。この結果以上に、研ぎ澄まされた集中力の中でプレーしたことで、得られるものが多かった。

「本当にサッカーが楽しくて仕方がなかった。駆け引きだったり、バトルだったり、連係だったり、試合でしか分からない要素を感じることができて、プレーする度に『あ、こんな感じだったな』と思い起こされることが多くて、手応えだらけの90分でした。忘れていた部分を取り戻して、プレーもかなり整理が出来たので、あとプレーオフ2試合に向けて毎日の競争に全力を尽くして、慢心することなくタイトル獲得に貢献したいと思っています」

 本能で闘う男がようやく完全に戻ってきた。この事実は関川にとっても、鹿島にとっても、間違いなく追い風に変わっていくはずだ。

(安藤隆人 / Takahito Ando)



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安藤隆人

あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』、新刊は『ともに歩き出す サッカーと家族と新しい日常』(ともに徳間書店)。講演家としても全国を回っている。元・名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター(2022年〜2026年4月)、現・國學院大學体育連合会蹴球部コーチ。

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