J2→欧州の移籍金に「驚きました」 史上最高額の理由…RBの「ネットワークが大きい」

RB大宮のSDに就任した西村卓朗氏【写真:元川悦子】
RB大宮のSDに就任した西村卓朗氏【写真:元川悦子】

RB大宮の西村卓朗SD「他の一般的なJ2に所属している選手と比べると違いが」

 Jリーグ発足初期からクラブ強化に携わってきた鹿島アントラーズの鈴木満アドバイザー、柏レイソルや清水エスパルス、名古屋グランパスで手腕を振るった久米一正氏(故人)、FC東京やファジアーノ岡山で長く働いたFC町田ゼルビアの鈴木徳彦アドバイザーといったレジェンドが第一線を離れた今、各クラブの強化部門は40~50代の人材が中心となっている。(取材・文=元川悦子/全5回の5回目)

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 小さい資金規模の水戸ホーリーホックのJ1初昇格の原動力となり、現在はRB大宮アルディージャで新体制構築に尽力中の西村卓朗スポーツダイレクター(SD)は今後をリードする人材の1人と言っていい。

「2022年にJリーグのフットボール委員会に入れていただいて3期目になるんですけど、そこで鹿島の鈴木満さん、ベガルタ仙台の庄子春男さん(GM)、Jリーグの足立修さん(フットボール本部フットボールダイレクター)、ヴァンフォーレ甲府の佐久間悟前社長、ガンバ大阪の三上大勝さん(フットボール本部本部長)といった方々が20~30年選手なんですよね。

 その後の世代のところで、確かに自分が30代後半くらいからやらせてもらって、第2世代になってくるかもしれません。実際、徳島ヴォルティスの黒部(光昭=強化本部長)、栃木SCの谷池(洋平=SD兼強化部長)、東京ヴェルディの西脇(徹也=強化担当)といったところは同じ1977年生まれ。

 我々の世代が中心になっていくでしょうし、より若い世代につなげていかないといけない。今は元Jリーガーというだけではなく、海外でプレーを経験したり、フロント業務に携わった人、ビジネス経験のある人材も多くなってきていますし、強化担当がよりレベルアップしていくことは重要なテーマになると思います」

 西村SDがそのことを痛感した1つの事例があった。今年1月にRB大宮からオランダ1部・AZアルクマールに完全移籍した市原吏音の移籍である。ご存じの通り、市原は2025年U-20ワールドカップ(チリ)に挑んだ日本代表キャプテンで、2028年ロサンゼルス五輪でもリーダー候補の筆頭に挙げられるDF。昨季大宮でも19歳で副キャプテンの大役を担い、J1昇格プレーオフまで戦い抜いた有望な人材だ。

 市原のポテンシャルは誰もが認めるところだが、昨季のステージはJ2だった。その選手の移籍金がJ2史上最高額を記録。その現実を知り、RBグループの力を思い知らされたようだ。

「市原選手の移籍金が、他の一般的なJ2に所属している選手と比べると違いがあったことに少し驚きました。同じロス五輪世代の他の選手と比べても同様で、市原選手に関してはクラブ力、強化担当の交渉力や信頼度、ネットワークが大きいのかなと感じました。

 日本にも優れた代理人はいますし、欧州クラブと話し合いはできますけど、Jリーグクラブ側でそこまでタフなネゴシエーションをこなせる強化担当はなかなかいないのが実情かもしれません。かつて敏腕代理人と言われた秋山祐輔さんがJリーグヨーロッパの初代プレジデントに就任し、ネットワーク強化に尽力されていますが、僕のようなクラブの強化担当ももっともっと力をつけないといけない。今、そういう思いを強めています」

 西村SDがこういった話をするのも、シーズン移行によって日本人選手の欧州移籍がより加速すると見られるからだ。目下、円安が進み、欧州サッカー市場から見れば、Jリーグは「お買い得なリーグ」と位置づけられている。実際、欧州5大リーグで働く日本人スタッフも「日本にはいい選手が沢山いるのに年俸も移籍金も安すぎる」と指摘。その金額を引き上げていかないと、Jリーグはどんどん才能を流出させるだけの状況になってしまうのだ。

「今後、Jリーグクラブにとって移籍金はより重要な収入源になります。クラブ運営規模を拡大しようと思うなら、その額を引き上げていくことは必須。そのためにも、いい選手をより高い値段で買ってもらえるような環境作りを進めていくことが重要なんです。

 そのためにも、まずは我々強化に携わるスタッフが市場をしっかり把握することが大事ですし、直接コミュニケーションを取れるようなネットワーク作りが必要になると思います。それも強固な信頼関係のある関係性でないと意味がない。

 日本人選手、強化担当、日本のマーケット全体が信頼されるように仕向けていくことが僕らのタスク。まずはRB大宮というグローバルなネットワークを持つこのクラブが率先してそれをリードして、日本サッカーのさらなる発展に貢献していければいい。僕は今、そう考えています」

 西村SDは自身の役割を冷静に客観視していたが、確かにRB大宮が欧州マーケットと対等な関係性を築く先駆者になってくれれば、他のクラブも動きやすくなるだろう。Jリーグのさらなる発展、日本人選手の価値向上のために、西村SDにはこれまで積み上げてきた経験値を生かしながら、よりスケールアップしてもらうことが肝要。託される仕事は少なくないのである。

(元川悦子 / Etsuko Motokawa)



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元川悦子

もとかわ・えつこ/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。

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