J2停滞は許されない「至上命令だと」 敏腕SDの“補強戦略”…指針は町田の軌跡「本腰を入れて」

RB大宮の西村卓朗SD「今の時期は本腰を入れなければいけないタイミング」
2026年J2・J3百年構想リーグは地域リーグラウンドの全18試合を終え、EAST-BのRB大宮アルディージャは勝ち点30の4位という結果だった。とはいえ、重要なのは、26-27シーズンのJ1昇格。今年1月からRB大宮アルディージャに環境を変え、選手と向き合っている西村卓朗スポーツダイレクター(SD)はどんなビジョンをもってチーム強化を進めているのか。(取材・文=元川悦子/全5回の4回目)
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RB大宮は2017年を最後にJ1を離れ、2018~2023年の6シーズンはJ2に定着。2024年はまさかのJ3での戦いを強いられたが、1年でJ2復帰を果たし、2025年は6位にジャンプアップ。最終的にJ1昇格プレーオフ1回戦でジェフユナイテッド千葉に敗れ、最高峰リーグ返り咲きはならなかった。
RB傘下に入った以上、2部リーグに長く居続けることは許されない。西村SDは確実に昇格できる陣容を整えるべく、現状を整理し、必要な補強ポイントを洗い出し、実際にそれを進めるべく、水面下で動いているはずだ。
「RB大宮の規模感で言うと、J2トップクラスの売上を誇っているので、来季J1昇格争いをリードすることは至上命令だと思います。となると、一人ひとりの選手をまずしっかりと精査しなければいけないし、彼らがよくなるワークフローを緻密に作って行かないといけない。さらにリクルーティングのところでも、よりよい選手、よりよいスタッフを探しにいかなければいけない。今の時期はまさにそこに本腰を入れなければいけないタイミングですね」と目を光らせる。
2025年J2優勝した水戸ホーリーホックは16億4000万円程度の売上規模で、トップチーム人件費は約5億円程度だった。J1トップクラブの浦和レッズの売上高が113億円、トップチーム人件費が43億円という状況だから、いかに厳しい環境下で戦い抜いたかよく分かるだろう。その水戸時代、西村SDは「日本には埋もれている選手がたくさんいる。秘めた才能を掘り起こすことは日本サッカーの発展につながる」と考え、大学や高校から数多くの練習生を日常的に受け入れ、戦力化していった。だが、RB大宮はそれとは違った環境にある。そこは西村SDも認めるところだ。
「水戸時代はある意味、全てを僕1人でやってきた。2025年からスカウトが1人入って2人体制になりましたけど、本当に限られた体制でネットワークを駆使しながらリクルーティングを進めていました。
でもRB大宮はトップチームに5人、アカデミーに6人のスカウト部隊がいる。Jリーグ屈指の陣容が揃えているのは、トップチームのみならず、アカデミー強化をより強力に推進していくという意思の表れだと思います。アカデミーにいかに質の高い選手を呼び込んで、育成して、トップにつなげていくのか。そのサイクルを加速させるべく、テコ入れを図っています。
高卒・大卒や他クラブからトップチームに加入してくる人材についても、すぐに欧州に行けるようなポテンシャルの高い選手を取っていきたい。そしてJ1に昇格できれば、日本代表を狙う選手、現役の日本代表選手を獲得するようなことも視野に入ってくるでしょうし、そういうチーム編成に持っていきたいですね」と短期的なビジョンを明かす。
そのイメージは、25-26シーズンAFCチャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)ファイナルに勝ち進んだFC町田ゼルビアの軌跡に通じるものがある。町田も2018年10月にサイバーエージェントグループに参画してから巨額の資金投入がスタートし、青森山田高校時代に高度な手腕を発揮した黒田剛監督を招聘。その1年目だった2023年にJ2優勝。J1初参戦した2024年にはいきなりJ1優勝争いをリード。2025年にクラブ初タイトルとなる天皇杯を制覇し、今年のACLE準優勝につなげた。
その間に獲得した選手は2018年ロシアW杯日本代表の昌子源、2022年カタールW杯日本代表の相馬勇紀、当初メンバー入りした中山雄太らバリバリの日本人トップ選手たちだ。
原靖・フットボールダイレクター(FD)は「新戦力の獲得は巨額のお金が必要になります。昌子、中山、相馬のような日本代表経験者、岡村大八、前寛之ら他クラブで主力だった選手を取るのは本当にハードルが高いこと。資金を投じてくれた藤田晋会長の力がなければ叶わないことだったが、若いトップ選手を集めたかった」と本音を吐露していたが、RB大宮がそういった集団になっていこうと思うなら、それ相応の努力が必要になるということなのだ。
「町田さんのスケール感、スピード感は1つの大きなベンチマークと言っていいでしょう。僕も水戸で長い間、同じJ2で切磋琢磨していたので、一足飛びに上まで行くところは興味深く見ていました。
RB大宮で同じようなことができるか分かりませんが、強化を進めていくのは僕1人じゃない。スチュアートら他のスタッフと最大の成果を残せるような体制作りを進めていくことが先決だと思います」
6~7月のオフシーズンにかけてRB大宮はどのような戦力の入れ替えが行われるのか。8月の新シーズン開幕時にはJ2を席巻するようなチームができるのか。ここからの動きから目が離せない。(第5回に続く)
(元川悦子 / Etsuko Motokawa)

元川悦子
もとかわ・えつこ/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。


















