前田大然が人生で「一番泣いた日」 4年間の自問自答…2度目のW杯で「思うがままに走る」

前田大然が独占インタビューに応じた
日本サッカー界が誇る「韋駄天」が目指す先にあるものは——。スコットランド1部セルティックに所属する日本代表FW前田大然は欧州の荒波に揉まれ、魂を研ぎ澄ませてきた。目前に迫る2度目のワールドカップ(W杯)。「FOOTBALL ZONE」の独占インタビューで、焦燥を焼き尽くすほどの静かな覚悟、スピードスターが抱く独自の美学を語った。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞/全3回の1回目)
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グラスゴーの空の下、前田はかつてない“重圧”を全身で受け止めた。だが、表情に悲壮感はない。むしろ、襲いかかるプレッシャー、張り詰める緊張感を楽しむ風格すら漂わせていた。
「前回は正直、そこまで深く考えていなかった」
カタールの地で世界を震撼させたスプリント、クロアチア戦のゴールから4年。前田を取り巻く景色は一変した。2019年、東京五輪世代が中心だったコパ・アメリカでA代表に初招集。継続的に森保ジャパン入りするようになったのは2022年になってからだった。カタールW杯直前まで決して“中心メンバー”とは言えず、メンバー発表も「選ばれればラッキー」という無邪気な挑戦者に過ぎなかった。
「前回は何も考えずにいた。でも今回は、ちょっといろいろ考えちゃう。ずっとこれまで代表で戦い続けて、やっと最後ここまで来たというところ。プレッシャーもあるし、絶対確定ではないと自分自身は思っているので」
失うものはなかった。しかし、今ここにいる前田は違う。アジアの死闘を戦い抜き、自らの足で北中米W杯への道を切り拓いてきた自負がある。絞り出した言葉に、4年間の濃密さが凝縮されていた。
「W杯メンバー発表までが本当の勝負。5月15日までにゴールやアシストといった目に見える結果をチームで出さなきゃいけない」
3月のスコットランド戦では主将マークを巻いた。MF遠藤航が不在だった影響もあり、自身がプレーする“地元”で初めての経験を積んだ。3月シリーズ以降の4月からは所属のセルティックで公式戦6戦6発2アシスト。1分、1秒がW杯へと直結すると理解し、結果を残した。
カタールW杯では“戦術・前田”とも言える戦い方で4試合中3試合に先発出場。世界を驚かせたスピードは4年経った今も衰えることはない。28歳で迎える北中米大会。持ち味は今大会も生かすつもりだ。
「カタールの時もチームが勝つことだけ考えて走っていなかった。それは今も変わっていない。当時は僕だけじゃなくて(鎌田)大地くんにもすごく多いタスクがあった。とにかく目先のことにがむしゃらだった。あんまり先のことまで計算して動くと、僕の場合はうまくいかない。思うがままに走る。次のW杯も同じ」
緻密な論理よりも、野性の直感。突き動かしているのは、自分という存在への絶対的な信頼だ。積み上げた4年間ではウイングバックやシャドーも含め、さまざまなポジションで起用されてきた。ただカタール後は先発が6試合、途中出場が10試合、ベンチが11試合で2ゴール。複数の役割をこなしながら自問自答を続けた4年間だった。
「4年間代表に入ったけど、ずっと試合に出ているイメージはなかった。ただ自分の良さはこれから、W杯本番で出てくると思っている。これまで我慢強くやってこられた。カタール以降はFW起用がほとんどなかったけど、たとえばスタートじゃなくても最後に時間帯で入るとかはあり得るかもしれない。ウイングバックもシャドーも全部のポジションで用意している」
個人の輝きよりも、チームの勝利。エゴを削ぎ落とし、次なるステージのために魂を注ぎ込む。一貫した情熱的な姿勢が、再び「世界最高峰の舞台」へと連れ戻す。
かつては挑戦者だった。4年前、ベスト16に終わった大会後、溢れ出す涙を止めることができなかった。「サッカー人生で一番泣いた日だった」。時は経ち、今は日本の盾、矛となった。4年間の重みを知る男。その足が再び世界を切り裂く時、日本サッカーの歴史は新たな1ページを刻む。前田大然の第2章は、まだ始まったばかりだ。

■前田大然、初の自叙伝を発売
◆書籍名:「がむしゃら なぜ俺は、こんなに走るのか——。」幻冬舎
◆書籍URL:https://www.gentosha.co.jp/book/detail/9784344045804/
◆発売日 5月13日(水)
◆本人コメント
「代表戦のあとに深夜まで撮影した表紙の写真はお気に入りなので、ぜひチェックしてみてください。僕のサッカー人生がわかる一冊になっています。誰かのヒントになればいいなと思います」
(FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)



















