今の日本代表に“ベテラン枠”はいらない フィリップ・トルシエが語る2002年W杯メンバー選考の真相とこの12年間の代表チームの変化

ノルウェー戦の大敗は「警告」だった

――直前のノルウェー遠征では「ワールドカップの代表メンバーの99%がここにいる」と発言していましたが、その代表メンバーには中山と秋田は入っていませんでした。どうしてベテランの2人を、それまで代表には選ばなかったのですか?

「ノルウェー遠征の時点では技術・体力的に私の要求に応えられるベストな選手を選択しており、精神的な面はあまり重視していなかった。しかし、ノルウェー戦が終わった後、私はチームがあまりにも『もろい』ことを認識せざるをえなかった。

 ワールドカップに向けた準備のためには、最悪の状況も想定しておかなくてはならない。当時の日本代表の実力を考えれば、グループリーグ3試合すべてに勝つと考えるのは楽観的過ぎる。初戦のベルギー戦に負けた場合、この若いチームはそこから立ち直ることができるのか――。

 勝っているときはチームが自然と一つになるが、負けているときはチームを鼓舞するメッセージが伝えられる選手が必要になる。これが選考プロセスの最後の最後で、ベテランの2人をメンバーに加えた理由だ。

 もし、ノルウェーに3-0で勝っていたとしよう。選手もスタッフもマスコミも幸福な気分になり、私もその時点での選手リストに自信を深めただろう。そして、もしワールドカップ初戦のベルギー戦に負けていたとしたら、そこからチームを立て直すことができただろうか。誰にもできなかっただろう。ノルウェー戦に負けたのは『警告』だったのだ」

――チームにベテラン選手が必要だというのは、日本の文化や社会を考えたうえでのことだったのでしょうか?

「日本では年齢が上であったり、経験を積んでいる人物を尊敬する文化が根強い。それだけにベテラン選手の重みも大きい。しかし、私がフランス代表の監督だとしても、必要があれば同じようにベテラン選手をチームに加えただろう。実際、多くの国の代表監督が同様の判断を下しているはずだ」

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