今の日本代表に“ベテラン枠”はいらない フィリップ・トルシエが語る2002年W杯メンバー選考の真相とこの12年間の代表チームの変化

35歳の中村は驚くほど成熟した

――中山と秋田以外に日本代表のメンバー入りを考えたベテラン選手はいましたか?

「当時、彼らのような選手は他に存在しなかった。誰も彼らの代わりを務めることはできなかっただろう。中山がFWで秋田がDFというピッチ上でのバランスも、中山が非常に陽気で秋田がシリアスなタイプという性格的なバランスも、素晴らしかった。パーフェクトな組み合わせだった」

――合宿中や大会中に中山や秋田が果たすべき役割について、彼らと個人的に話し合って確認したことはありましたか?

「あの2人にわざわざそんなことを言う必要はなかった。彼らは自分たちの役割が完璧に分かっていたし、私の求めている役割を自然に果たすことができた。彼らは生まれながらのリーダーだ。年齢や経験も他の選手たちよりも上なので、彼らはチームへメッセージを伝えるときに大声で叫ぶ必要もない。

 試合に出場させることはほとんど想定していなかったが、2人は万全な準備を続けてくれた。ワールドカップで秋田は試合に出場しなかったが、中山はロシア戦に出場して積極的なプレーを見せてくれた。日本代表のグループステージ突破に2人が大きな役割を果たしてくれたことは言うまでもない」

――ベテランの存在はチームにとって必要なものですか?

「ベテランかどうかは年齢で決まるものではない。トッティは37歳だがいまでも一流のプレーヤーだ。ギグスは40歳、三浦(知良)にいたっては60歳だが、まだ活躍している(笑)。そして、中村は35歳。選手として成熟した彼の姿は、私にとってポジティブな意味で大きな驚きだ。経験、知識、技術、精神のバランスが取れており、2002年の時点よりも遥かに上達している。昔の彼はフットボールから恩恵を受けるだけの立場だったが、今はフットボールにお返しをしているところだ。中村のキャリアは、若い選手たちにとっての良いお手本になるだろう。

 2013年の横浜F・マリノスは30歳を超える選手が先発メンバーの4、5人を占めているが、Jリーグで素晴らしい成績を残している。ベテラン選手がチームに良い影響を与えることができる好例と言える」

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