日本代表→医者の夢「引退後に勉強して」 文武両道でJ内定…逸材が岡山を選んだ理由

筑波大学の小川遼也「サッカー選手の先には医者という道もまだあると思っています」
筑波大学4年生のCB小川遼也は2027年からのファジアーノ岡山入りが内定した。医者を目指して文武両道の高校生活を送った小川は、筑波大学の体育専門学群を一般受験。その後、チームの中心となっただけでなく、大学サッカー屈指のCBとして一気にJクラブの激しい争奪戦がスタートした。(取材・文=安藤隆人/全4回の4回目)
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2025シーズン、小川は関東1部リーグにおいて1試合を除く21試合フル出場を果たしてリーグ優勝に大きく貢献すると、インカレでもグループリーグ最終戦以外の試合にフル出場をして2冠を手にした。年が明けてからもデンソーカップチャレンジ愛知大会で関東A選抜の守備の要となり、全日本学生選抜の一員として参加した日韓定期戦では決勝弾を挙げて大会MVPとなった。
そして、4月17日に合計4クラブの正式オファーを受けるなかでファジアーノ岡山入り内定を発表。一般生からのJリーガーとしての目標をついに達成した。
「ファジアーノは一番自分が成長できると思ったクラブでした。クラブの成り立ち、大事にしているアイデンティティ、そして地域の誇りとなってさらに発展しようとする姿。サッカー面だけでなく、クラブを支える根幹にも共感したので決めました」
加入コメントが話題になったように、クラブの決め方も実に小川らしい思慮と客観的な目線に富んだものだった。
「クラブ決めにも筑波大で学んだことが大きく影響しています。昨年から蹴球部の副務になったのですが、ピッチ内のことだけではなく、選手の登録関係や施設の確保、スポンサーやOB訪問などの渉外担当もやりながら、幹部として組織を客観的に見て良い方向に行くように常に考えて行動しないといけないんです。その観点があるので、自分の感覚だけでなく、しっかりとクラブを客観的に見つめて、この組織で働きたいと思えました」
レギュラーで副務を務めているのは小川のみで、今年はそこに副キャプテンとしての役割も加わった。全体練習、毎日欠かさない自主トレに加え、週2回の幹部ミーティング、そして大学の勉強と、高校時代以上に忙しい毎日を送っている。だが、そこには大きな充実感とともに未来への青写真がきちんと映し出されていた。
「まずはお世話になった筑波大でサッカーをやり切って、そのなかでチャンスがあればファジアーノの勝利に貢献をしたい。僕のなかで大事にしているのは、毎日を自分でどうデザインして取り組めるか。その積み重ねの先に自分の未来があると思っています。プロの世界で活躍して、もちろん海外でプレーしたいですし、日本代表に入ってプレーしたいと思っています」
今、未来を広げるために英語を重点的に勉強している。サッカーと勉強。これはプロサッカー選手になれたから終わりではない。小川のなかにはまだ両親や祖父のように医者になるという夢は捨てていないという。
「小さい頃からずっと両親が大変そうな姿を何度も見てきました。寝ているときやご飯を食べているときに急患などの電話がかかってきて、『いますぐ行きます』と家から出て行った姿を何度も見てきましたし、家族旅行中も電話がかかってきて、『ごめん』と言われて引き返したこともありました。
寂しい思いもありましたが、それ以上に人のためにここまで必死で働くことができる職業はあまりないなと感じたんです。これこそ『人助け』というか、もうなくてはならない職業だなと思ったんです。2人とも弱音を吐かないですし、その姿が僕にはかっこよく映って、ものすごく輝いて見えたんです。
だからこそ、サッカー選手の先には医者という道もまだあると思っています。高校時代に医学部に進むことを諦めたことで、筑波大という道を見つけ出すことができた。そう考えると、ここで自分を決めつけて、自分の可能性を狭めてしまうことは良くないので、可能だと思えることはチャレンジしていく人生を歩んでいきたいと思います」
ラグビー日本代表だった福岡堅樹は現役引退後に順天堂大医学部に進学して医者を目指した。奇しくも福岡も小川と同じ医者家系で、高校時代に医学部に入ることを挫折して筑波大学に進学し、プロラグビー選手として羽ばたいていったなど、バックボーンは非常に似ている。
「僕が筑波大に行くきっかけもそうですが、先人が示してくれたことをしっかりと知って、学んで自分に落とし込んでいく。現役引退後に1年間勉強をして医学部に編入して、新たな人生を歩むことも本当に将来の楽しみでもあるので、そのときまでにプロサッカー選手として後悔のないように全力で走り切るために、1つずつ謙虚にかつ貪欲に積み重ねていきたいと思います」
まさに見賢思斉、凡事徹底、確固不抜の精神を持つ注目の万能型CB小川遼也。自分を育ててくれた筑波大でのラストイヤーと、岡山から始まるプロサッカー選手としての未来をまっすぐに見つめて、堅実かつ情熱的な一歩を踏み出している。
(安藤隆人 / Takahito Ando)
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』、新刊は『ともに歩き出す サッカーと家族と新しい日常』(ともに徳間書店)。講演家としても全国を回っている。






















