優勝王手なのに…同僚に苦言「つまらないと俺は思う」 監督の指示通りでは「難しい」

鹿島の鈴木優磨「監督から『抜けろ』と言われたら一生懸命に裏抜けしかしない」
J1王者の鹿島アントラーズが百年構想リーグ地域リーグラウンドEASTグループの首位通過に王手をかけた。それでも30歳になったばかりのチームリーダー、FW鈴木優磨はPK戦の末に横浜F・マリノスを破った一戦に真っ先にダメ出した。自分自身とチームメイトへ、忌憚なき言葉を発し続けた胸中を追った。(取材・文=藤江直人)
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勝者の言葉には聞こえなかった。苦笑いを浮かべながら、鹿島の鈴木はダメ出しした。
「ヴェルディ戦から背後への意識、というのをけっこう言われているんですけど……難しいですね」
敵地・日産スタジアムの取材エリア。横浜FMとのJ1百年構想リーグ地域リーグラウンド第16節を制し、連勝を3に伸ばした鹿島は、2試合を残してEASTグループの首位通過へ王手をかけていた。
1点を追う後半アディショナルタイム5分にエースのレオ・セアラが起死回生の同点ゴールを一閃。1-1のまま突入したPK戦で守護神・早川友基がマリノスの3番手、宮市亮のキックを完璧にキャッチしてみせた。
2番手キッカーの鈴木を含めて、後蹴りの鹿島は5人全員が成功させる。劇的な展開の末に勝ち点2をもぎ取っても、鈴木のダメ出しは続いた。対象はマリノス戦でプレーしたフィールドプレイヤー全員だった。
「言われたことしかできなかったら、サッカーにはならないですね。相手を見ながらやらないと。きょうだったら刻みながら、間に遊び球を入れながら、食いついたときに背後を狙う感覚が俺にはあったんですけど、そのためには抜ける選手だけでなく止まる選手が大事になる。そうじゃないとなかなかギャップができない」
ハイラインで臨んでくるマリノスに対して、鹿島の鬼木達監督は相手の背後を狙う攻撃で対抗した。東京ヴェルディに90分間では初めてとなる黒星を喫した第13節から、何度も掲げられてきたテーマだった。
「みんな真面目なので、監督から『抜けろ』と言われたら一生懸命に裏抜けしかしないので」
指示を忠実に守ろうとするあまり、攻撃がほとんど機能しなかったと鈴木は続けた。
「サッカーは駆け引きをやらないとつまらないと俺は思う。相手が来ているなかで降りたらどこまでついてくるのか、といったものを試合中に修正していくのがサッカーの楽しさだと思うんですけど、きょうのようになかなかそれを共有できるメンバーがいないと、サッカーはちょっと難しい。個人的にはそう感じました」
マリノス戦で鈴木は左サイドハーフで先発した。しかし、鹿島はチャンスを作れないどころかシュートすら放てないなかで、前半の半ばを過ぎたあたりで2トップの一角だった師岡柊生とポジションを入れ替えた。
前半のシュートは師岡がアディショナルタイムに放った1本だけで、ゴールの枠を大きく外れた。17歳のFW吉田湊海が投入された後半34分からは、再び左サイドハーフへ回った鈴木が振り返る。
「左では正直、いけそうだったんですけどね。けっこうぐちゃぐちゃだったので。まあ俺はどこでもやれるけど、もうちょっと刻みながらの背後がないと。ボールをもった味方に対して裏しかないから、どうしても無理だよね、というシーンがあまりにも多すぎた。ここ何試合かは特に連動していないと俺は感じています」
忌憚のない言葉の数々は、おのずと放ったシュートが後半終了間際の1本、それも枠をとらえられなかった自分自身にもはね返ってくる。それでもかまわない、とばかりに鈴木は持論を展開し続けた。
「どこで受けたら相手が嫌がるとか、ここにいたら嫌がるとか考えているから。自分がやりたいプレーと、相手が嫌がるプレーとはまったく違う。でもそれ(嫌がるプレー)を見せれば、今度は自分のよさを出せる。これが駆け引きだと俺は思っている。それを何人と共有できて、何人が相手の目の前で駆け引きができているかと言われると、やはりまだまだ少ない。きょうは本当にそれが随所に出ていたと思っています」
両チームともに無得点だった後半11分に師岡に代えてルーキーの林晴己を投入。失点後の同22分には3枚替えで三竿健斗、荒木遼太郎、チャヴリッチを投入した鬼木監督が試合後会見で自身の選手起用を責めた。
「自分たちの動きの質、パスの質といったところで相手を上回れなかった。その意味では、もっともっと相手の狙いのところを外していけるような選手構成をしなければいけなかったと自分自身で反省しています」
4月24日の柏レイソル戦を皮切りに大型連休をはさんだ17日間で、5試合に臨んだ過密日程を2つのPK戦勝利を含めて4勝1敗でクリア。勝ち点10ポイントを積み重ねた鹿島は首位をしっかりとキープした。
敵地でジェフユナイテッド千葉と対峙する17日の次節で、90分間での勝利を収めれば地域リーグラウンドEASTグループの首位通過が決まる。それでも勝って兜の緒を締める、とばかりに指揮官はこう続けた。
「PK戦での勝ちもあるなかで、(百年構想リーグの)レギュレーション上での勝ち点10だと思っています。その意味では自分たちの力でしっかりと90分間で勝ち切りたいし、勝ち切らなきゃいけない」
昇降格のない百年構想リーグの先に、秋春制のもとで8月に開幕する新シーズン、さらにはAFCチャンピオンズリーグエリート(ACL)を見すえている。妥協を許さない指揮官に、鈴木も思いをシンクロさせた。
「この百年構想リーグは勝てるかもしれないけど、これからACLとかいろいろな試合が入ってきたときに、俺としては『試合を決めるのは結局、毎回同じ選手だよね』みたいな現象が起きちゃうような気がしている。1人の選手が30点を取るよりも、2桁ゴールを取る選手が3人いるほうが確実に対戦相手は嫌がる。俺も質の部分をまだまだ上げていかなきゃいけないけど、そういったものはもっともっと必要だと思っています」
最後は自らにもベクトルを向けるのを鈴木は忘れなかった。10ゴールに伸ばしたレオ・セアラが、WESTグループを含めたJ1全体の得点ランキングで単独トップに立った。6ゴールの鈴木はチーム内で2位、J1では8位タイに名を連ねる一方で、自身の次はDF植田直通、DF濃野公人、チャヴリッチの2ゴールとなっている。
9シーズンぶり9度目のリーグ優勝を果たし、ホームのメルカリスタジアムで図らずも涙腺を決壊させた昨シーズンはすでに通過点。4月に30歳になった鈴木は愛する鹿島に盤石の強さをもたらし、真の意味での常勝軍団復活をもたらすべく、チームメイトたちに、そして自分自身に常に高い目標を課しながら前へ進んでいく。
(藤江直人 / Fujie Naoto)

藤江直人
ふじえ・なおと/1964年、東京都渋谷区生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後に産経新聞社に入社。サンケイスポーツでJリーグ発足前後のサッカー、バルセロナ及びアトランタ両夏季五輪特派員、米ニューヨーク駐在員、角川書店と共同編集で出版されたスポーツ雑誌「Sports Yeah!」編集部勤務などを経て07年からフリーに転身。サッカーを中心に幅広くスポーツの取材を行っている。サッカーのワールドカップは22年のカタール大会を含めて4大会を取材した。

















