24歳日本代表「もう少しエゴイストに」 独で取り組むゴール前で作る”間”「残って練習してきた」

鈴木唯人が意識する“仕掛ける”プレー
「今年は、もう少しエゴイストに打っていこうと思っています」
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16節ハンブルガーSV戦後にフライブルクの24歳日本代表MF鈴木唯人が発したその言葉は「がむしゃらに結果を残そう」という覚悟よりも、「ここからようやく本領発揮だ」という宣言に近い響きを帯びていた。
チームの中で求められるタスクを高いレベルで遂行する。その前提があって初めて、自らフィニッシュを狙う「エゴイスト」としての振る舞いも許される。特にフライブルクはピッチに立つ全選手が、チームタスクのために全力を尽くすことが求められるクラブ。そこでチームのベースを支える存在となるまで積み重ねてきたものがある。
確かな自信とともに、さらにチームを助ける仕事をするために、自分が持つ能力をより積極的に発揮させようとしている。新しい段階に入ったことの証だ。
仲間に1人退場者を出して長い時間数的不利な試合となった21節ブレーメン戦では、1人でボールを運んだり、シュートに持ち込むシーンが注目を集めた。それでも本人は常に向上心をもって自分の課題と向き合い続けている。
「まだまだですね。ああいう場面で、最終的に得点までいききりたい。スピードを落とさずに1対1まで持っていくトライは続けていきたいし、それができないと、もっと上のレベルには行けないと思っています。分かりやすく違いを出すプレーを表現できればいいですね。最近は、仕掛ける回数を増やしています。ライン間で受けたときに、自分で局面を剥がしにいくプレーを意識している」
長いシーズンチームとしても、個人としても少なからず調子が落ちる時はある。フライブルクはゲンクとのファーストレグ、直後のウニオンとのリーグ戦で2試合連続無得点。ボールが攻撃陣にうまく入らず、シュートにつながるアクションが少なかったのが問題だった。
チームメイトのFWイゴール・マタノビッチがこんな風に指摘していたことがある。
「チャンスにつながるアクションを生み出せるクオリティは間違いなくある。僕の周りでプレーしている選手はみんな素晴らしいクオリティを持っているんだ。だからこそ、ボールをもってチャンスに絡めるシーンをもっと増やさないといけない。仕掛けたらもちろんミスだって起こるだろう。インテンシティの高さを武器にやり続けながら、ビルドアップから前線の僕らへのパスをもっと入れるようになって、チャンスが生まれるような状況で仕掛けられたら、僕らはどんなチーム相手にも心地よくないチームになれる」
日本代表で「鈴木唯人を示したい」
ヨーロッパリーグのゲンク戦では、まさにその積み重ねが結果として表れた。セカンドボールを拾い続け、二次、三次攻撃へとつなげていくフライブルクの攻守がハマった試合で、鈴木もまた強度の高さを保ちながら、違いを生み出すプレーを連続で披露した。
「疲れていても、厳しい状況でも、全員がベースのところを怠らずにやる。その結果、自分たちにボールが転がってくる回数が増えたと思います」
そして鈴木がこの日魅せたゴールは狙い通りの1点だった。
「相手が来ているのは分かっていましたけど、落ち着いて一個待って打とうと。最近はそこを意識しています」
シュートを打つ前にゴール前で間を作る感覚を持つことに取り組んでいると明かしてくれたのは、2月のブレーメン戦後。試合の終盤、ペナルティーエリア内でパスを受けると左に持ち直して、ゴール左へきれいに流し込んだシーンがあった。直前のファールで得点は取り消されたが、シュートに持ち込むまでの一連の流れについては、好感触があったと振り返っていた。
「落ち着いて打てた感覚はすごく良かった。結果はファウルになりましたけど、左でしっかり沈められた感覚は自分の中でプラスとして持ち帰れます。シュート前にワンタッチ置く形は、個人的に残って練習してきた部分なので。やっぱり努力するしかないなと思います」
ゲンク戦のゴールも、味方からのパスに対して慌ててシュートを打つのではなく、うまくステップを踏みかえながら相手との間合いを作って、シュートに持ち込む形が見事だった。
そして、その成長は日本代表へとつながっていく。
「向こうでちゃんとできることを見せるしかない。選ばれただけで、満足している場合ではない。ちゃんとチームの中に入って。これまではあんまりいい感触をもって帰ったことがなかったんですけど、でも今はすごいやれる感覚があります。今の自分がどこまでみせられるのかなって、非常に楽しみです」
いまフライブルクでみせているインテンシティの高い連続プレー、スペースで受けて攻撃にアイディアを加えるプレー、推進力高くボールを相手陣深くへ運ぶプレー、そしてゴールに直結するプレーの数々は、代表にも面白い化学反応をもたらせるんじゃないだろうか。
そんなこちらの質問に対して、自然体でうなずいて後を続けてくれた。
「自信はこのフライブルクでこれまでつけてきたと思う。存分に発揮して、鈴木唯人を示したいと思っています」
「エゴイストに打つ」という言葉は、自己中心的な宣言ではない。チームの中で役割を全うし、その上でゴールを奪う責任を引き受ける覚悟の表れだ。日本代表という舞台でも、積み上げてきたものを、自然に発揮し、試合を決めるプレーを見せてほしい。
鈴木唯人はいま、ひとつの境界線を越えようとしている。

中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)取得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなクラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国で精力的に取材。著書に『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。



















