日本代表が迎えた「新たなフェーズ」 完成した土台…森保監督が求める「実戦的サバイバル」

日本代表を率いる森保一監督【写真:徳原隆元】
日本代表を率いる森保一監督【写真:徳原隆元】

日本代表は3月の欧州遠征でイングランド、スコットランド代表と対戦

 2026年3月19日、森保一監督は欧州遠征に向けた日本代表メンバーを発表した。会見で見せたのは、これまでとは明らかに違う面だ。いよいよ本大会に向けたシビアな「フェーズ」がやってきた。

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 登壇した指揮官の言葉の端々には、これまでの「森保流」からの方針転換とも取れる「進化」が混在していた。

 かつて森保監督は、負傷中や所属クラブで出場機会を失っている選手であっても、「チームのコンセプトを共有し、同じ絵を描くためにその場にいることが大事だ」と説いてきた。2024年頃までの活動において、最優先事項は「W杯に向けた土台作り」だった。チーム戦術の浸透と、相互理解を深めるための「経験の共有」が、パフォーマンスと同等に重視されていた時期だ。

 2025年11月にも「日本代表の活動を一緒にさせてもらうことで、本人たちの経験値は上がる」と語り、古くは2021年にも「試合に出られても出られなくても、この経験が必ず成長につながる」と、全方位的な選考を続けてきた。

 だが、W杯イヤーの2026年3月、そのフェーズは明確に終了を告げた。象徴的なのは、中盤の要である守田英正を外した理由だ。

「彼の戦術理解で言えば、試すというよりも、いつでも戦力として入ってこられるだけの力を持っていると評価しつつも、全体の競争のバランスを見ている」

 主力組の能力と戦術理解はすでに「計算できる状態」にある。共有のフェーズは完了した。土台が完成した今、監督が求めているのは、5大リーグで台頭する若手や好調な選手たちをフラットに競わせる「実戦的サバイバル」だ。

「序列はいつ変わるか分からない」という言葉は、今や単なるスローガンではない。絶対的なレギュラーであっても、コンディションや競争原理によって外される。それが現実として突きつけられた。

 これは、2022年カタール大会前との大きな変化だ。同年9月、メンバー発表前最後の欧州遠征で、森保監督は30人を招集し、こう語っていた。

「試合に出られない選手も、チームがどのように準備を進めているか把握できることは、個々のイメージ作りには非常に大切なところ」

 当時はパンデミックの影響や登録枠拡大という背景もあったが、共通体験をさせることが本番につながると考えていた。今回は違う。もはやそんな段階ではない。格段に選手たちの経験値が増えたことの証左でもある。

 今回の招集人数を28人に設定したことも、代表の成熟度を示している。監督は「トレーニングの場でいろんな想定をしながら、全員がプレーできる適正な人数」と言及した。

 11対11の紅白戦において、全員が常にフル稼働し、極限の強度を維持するための合理的判断だ。「そこにいるだけ」の選手を排除し、全員を戦力として研ぎ澄ませる。ラージグループによる「全方位的な備え」から、適正人数による「質の追求」へのシフトは、勝率を高めるための実戦的アップデートと言える。

「プレーできるということは確実にわかっている」選手のみを招集したことは、チームが「和を作る段階」から「勝つための最適解を選ぶ段階」へ移行したことを意味する。功労者であっても、期待の若手であっても、戦えなければ席は用意されない。この姿勢が、チーム内に心地よい緊張感をもたらしている。

 一連の変化を「変節」と捉えるのは早計だ。森保監督は「W杯までの残り時間」に応じて、優先順位を論理的に最適化させている。今回の厳しさは、盤石な土台があるからこそ成立する。土台があるからこそ、主軸に揺さぶりをかけ、新たな競争を煽り、選手層を厚くできる。

 もしかすると、これまでのように招集外の選手を客席に呼ぶのかもしれない。そうすれば集団としてのまとまりは保てるだろう。塩貝健人の初招集で「新しい選手が入る余地」を示したのも、モチベーション向上に寄与するはずだ。

 しかし、これまで以上に「シビア」な局面であるのは間違いない。会見中、森保監督が笑顔を見せる回数が極端に少なかった。そう感じたのは、僕の思い込みだけではないはずだ。

(森雅史 / Masafumi Mori)



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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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