マンCが主力不在のチェルシーに勝ち切れなかった理由とは?

狙い通りの「スペシャル・ワン」

 チェルシーのジョゼ・モウリーニョ監督は、ボランチの位置から攻撃面で創造性を発揮するセスクのポジションにブラジル代表MFラミレスを配置。ネマニャ・マティッチの隣に配置した。マティッチとラミレスもともにピッチ上を縦横無尽に走り回るハードワーカーであるため、ゲームをコントロールするセスクの役割を求めることはできない。

 両軍とも中盤の底にハードワーカータイプの選手を起用したことで、互いにスペースを見出せない展開が続き、最後の局面での崩しでのアイデアに欠けた印象もあった。仮にセスクが出場していれば、チェルシーにとっては攻撃に厚みが出て、マンCからすれば、セスクが前に出た裏のスペースに勝機を見出せた展開にも起こりえたかのかもしれない。互いのバイタルエリアで流動的な動きは増えていた可能性もある。

 それこそがモウリーニョ監督の狙いであり、主力を欠いて臨むことになってしまった大一番に、互いに良さを出し合うオープンな展開より、互いの良さを消し合う展開を望み、チェルシーのプラン通りに試合を終えることができたと言ってもいいだろう。

 一方、ペレグリーニ監督は、交代カードを切る際、エースのアルゼンチン代表FWセルヒオ・アグエロに代えて、ボスニア・ヘルツェゴビナ代表FWエディン・ゼコを投入した。この試合で同点弾を演出したアグエロとゼコを共存させる選択肢もあった中で、攻撃の枚数を増やすことはなかった。守備の負担を増やしてでも得点を取りにいくリスクに踏み切れなかったのではないだろうか。

 両軍ともに勝ち点1を分け合ったという意味では、互いに決して悪い結果ではなかった。しかし、勝ちにいかなければならなかった追う立場のマンCの勝ち点1と、負けなければよかった追われる立場のチェルシーにとっての勝ち点1は、等価とは言い難い。試合終了のホイッスルを聴いて、会心の笑みを浮かべたのは「スペシャル・ワン」だったことに疑いはない。

【了】

 

サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images

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