高校2冠→J1入りも「次がないかも」 価値観を変えた”ベンチ入り”「悠長なことを言っていられない」

アビスパ福岡の福島和毅【写真:安藤隆人】
アビスパ福岡の福島和毅【写真:安藤隆人】

アビスパ福岡のMF福島和毅

 3月11日に愛知県のCSアセット港サッカー場で行われたJF/Jリーグポストユースマッチ・U-19Jリーグ選抜vs全日本大学選抜の一戦。Jリーグで出場機会の少ない若手選手に実戦の機会を創出するために昨年発足したポストユースマッチは、今回、高卒ルーキーを中心に選出された。

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 ここではDF常藤奏(中央大、柏レイソル内定)、坂井悠飛(福岡大、アビスパ福岡内定)、MF前田快(神奈川大、福岡内定)、古谷柊介(東京国際大、柏内定)、FW平尾勇人(日本大、東京ヴェルディ内定)とすでにプロ入りが決まっている選手を始め、プロ入り濃厚な選手がずらりと揃う全日本大学選抜との一戦で輝いたU-19リーグ選抜の選手の紹介をしていきたい。

 今回はアビスパ福岡のMF福島和毅について。J1百年構想リーグで初めてベンチ入りをした時に感じたこととは。

 神村学園では1年生からレギュラーを掴み、3年生となった昨年はエースナンバー14を背負ってインターハイと選手権の2冠を達成。まさに鳴り物入りで福岡にやってきた福島は、「当たり前ですが高校とは全然違うし、周りとの関わりの質をもっと上げないと厳しいと思った」とプロの壁にぶち当たった。その中で周りの選手のプレーを見ながら、自分の中で足りないもの、プロの世界で上に行くために必要なものを分析して自分に落とし込んでいく作業を始めた。

「僕の特徴はドリブルと繋ぐパスですが、ただ受けて仕掛ける、出すのではなく、味方との距離感や常に繋がれるような状態にしながらプレーしないと、守備レベルが高いJ1では相手を剥がして、チャンスを作り出すことができない。周りとの関わりを意識してポジションを取ることは重見(柾斗)選手などを見て学んでいます。目立つプレーではなく、基礎がしっかりしていてシンプルにプレーしながら長所を出す。守備も含め、やるべきことは本当に多いと感じています」

 J1百年構想リーグ第5節のホーム・名古屋グランパス戦。初めてベンチ入りをしたが、悲願のJリーグデビューは果たせなかった。しかし、このベンチ入りが彼の価値観を変え、ここにいる意義を知る重要な経験となった。

「試合内容も点差(1-5)も良くない結果で、サポーターの人たちからブーイングや厳しい声を浴びたり、周りの人たちの表情を見たりして、今まで感じたことがないような感覚を覚えました。スタンドにいるのはお金を払って試合を見に来てくれて、かつ僕たちを応援してくれている人たち。『それに応えないといけないのがプロの世界なんだ』と心から思ったんです」

 これまではどちらかというと勝っても負けても、試合内容が悪くても、応援に来てくれた人たちからは温かい声や表情を向けてもらっていた。悔しさや課題はチーム内で共有し、次の試合につなげるエネルギーにしていた。だが、プロの世界はそんな甘いものではない。

「もちろんこれまでも負けた試合や内容が良くない試合だったらしっかりと反省して、振り返って、次の試合で結果を出せるように練習に打ち込んできましたが、プロの世界はもうそんな悠長なことを言っていられない。常に結果が求められ、次がないかもしれない。その責任とプレッシャーが全然違いますし、プロになった以上、ルーキーだからとか関係なく、絶対に必要な心構えとして持たないといけないとあのベンチで改めて思いました」

 お金をもらってサッカーをすることの意義、責任。頭では分かっていたが、それを現実のものとして目の当たりにしたことで、福島の意識は大きく変わった。

 今回のポストユースマッチはその直後にあり、全日本大学選抜戦では明らかに顔つきも雰囲気も変わった姿がピッチにあった。インサイドハーフとしてスタメン出場(前半のみで交代)をすると、的確なポジショニングと運ぶドリブル、精度の高いパスを駆使して、U-19Jリーグ選抜の攻撃のリズムを生み出した。

 さらに吉田湊海(鹿島アントラーズ)と古屋歩夢(ベガルタ仙台)の2トップ、アンカーの林駿佑(川崎フロンターレ)の攻守におけるサポートも精力的に行い、攻勢に出た前半のチームを支えた。

「もちろんトップで出たい気持ちは強いですが、こういう(ポストユースマッチ)機会も実戦を積む重要な場所ですし、多くの人も見てくれるので、大きなチャンスの場だと思って最後まで全力でプレーして、これからのきっかけを掴みたいと思います」

 実戦経験だけではなく、今回は同じ境遇で苦しむ同年代の選手たちと切磋琢磨できる機会であり、神村学園のチームメイトだったMF荒木仁翔(いわきFC)とも選手権以来のプレーをし、相手には福岡のチームメイトでもあるMF前田快(神奈川大)とDF坂井悠飛(福岡大)もいた。

「いろいろな話もできるし、荒木はほんの2か月でスピードやフィジカルの強さが増していたので、凄くいい刺激を受けました。前田選手は(インサイドハーフとボランチとして)マッチアップをして、やはり味方との距離感がめちゃくちゃいいなと思ったし、プレーも安定していて相手チームの心臓的な存在になっていた。改めて凄いなと思いましたし、負けていられないと思いました」

 高まったプロ意識に大きな刺激が加わった。この3月が1つのターニングポイントなるべく、福島は価値ある一歩を踏み出した。

(安藤隆人 / Takahito Ando)



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安藤隆人

あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』(共に徳間書店)、など15作を数える。名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターも兼任。

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