残留争いの名門…役割は「チームを活気づける」 もがく日本人たちの現在地「全てをかけて準備する」

ボルシアMGでプレーする町野修斗(左)と高井幸大【写真:アフロ】
ボルシアMGでプレーする町野修斗(左)と高井幸大【写真:アフロ】

ボルシアMGでプレーする町野修斗と高井幸大

 ブンデスリーガで残留争いを戦うボルシアMGは、依然として不安定な戦いが続いている。

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 内容と結果の両面で苦しい試合が重なるなか、町野修斗、高井幸大の日本人選手2人もまた、それぞれの立場でチームに貢献しよう、自分の居場所を見つけよう、と模索を続けている。

 高井にとっては、ドイツでの挑戦はまだ始まったばかり。加入から日が浅いなかで、チームへの順応を進めている段階でもある。

「信頼して獲ってくれたと思うので、まずはスタメンで出られるように、自分のプレーを見せていきたいです」と0-0の引き分けに終わった18節ハンブルガーSV戦後に語っていたが、最近の試合では出場機会も増えており、コンディション面でも手応えを感じているようだ。

 ただし、完全にレギュラーの座をつかむためには課題もある。22節フランクフルト戦ではロングボールの処理を誤り、相手に決定的となる3点目を与えてしまった。試合後には自分に怒り、やるせない思いにさいなまれたりもしたことだろう。オイゲン・ポランスキ監督はそんな高井に対して、「失点につながるミスをしてしまったら、それが心に引っかかるのも普通だろう。むしろそうでないほうがよくない。その後のトレーニングでのコウタは非常によかった。うまく気持ちを処理してくれたようだ」とポジティブな言葉を残している。

 1-2で敗れたものの、23節フライブルク戦では守備での競り合いの多くに勝利し、特に空中戦ではその強さを発揮。試合後には自身のプレーを冷静に振り返っていた。

「監督からは『クオリティはある』と言ってもらっていますし、もっとエナジーをチームに与えてほしいと言われています。ただ、まだまだできないことも多いです。自信を持ってプレーできている時間帯はありますが、今日もミスは多かった。改善しなければいけないところはたくさんあります」

 その改善点としてビルドアップで「自分たちからボールを運んでいく、前につけていくプレーはもっとあってよかったと思います」と、より積極的に前進する意識が必要だと感じている点を明かしてくれた。自信をもってボールを要求し、攻撃の起点にもなれたら、攻守のバランスはグッとアップする。

 ただし、前に上がる機会が多いということは、ダッシュで戻る機会も増えることになる。強靭なフィジカルを持つ相手選手との競り合いだけでも体力は消耗させられる。チームにとってポジティブに作用させるためには、今以上にインテンシティの高さを維持できるかが、問われる。

 一方、町野は現在、途中出場で試合の流れを変える役割を担っている。

「基本は途中出場で考えられていると思っているので、そこに全てをかけて準備するしかないなという感じです」と現状については冷静に受け止めている。

 攻撃の形を作ることに苦しむ試合も少なくないなかで、「チームを活気づけること。疲れている時間帯に入るので、もう一度チームを助けられるようなプレーは意識しています」と、流れを変えたいという強い思いでプレーしている。

 24節ウニオン戦でボルシアMGは8試合ぶりに勝利を挙げることができた。貴重な勝ち点3だっただけに、胸のつかえがとれる大事な成功体験となったのは間違いない。ただ、相手のウニオンは後半戦に入り順位を落としており、直近9試合でわずか1勝だった。必要以上に大きくとらえない方がいいだろう。

 特に攻撃陣はチャンスメイクの質も量も物足りないのが現状だ。

 昨季ゴールを量産していたティモ・クラインディーンストとロビン・ハックが長期負傷からいまだリハビリ中。CFハリス・タバコビッチが11点でひとり気を吐き、次点がCBケビン・ディクスの4点というのはあまりに寂しい。

 ポランスキ監督が、こうこぼしていたことがある。

「もっと多くのゴールを願っている。特にペナルティエリア内で、あと5-10%の集中力、やり切る意志を選手に出してもらいたい」

 クラブ今季最高額となる800万ユーロもの移籍金で加入して期待値がかなり高かった分、ここ最近の町野のプレーぶりには、地元紙もかなり厳しめの評価をつけている。23試合3得点で、ここ最近はスタメンからも外れているとなれば、及第点を与えることはできない。

 町野の復調は、チームのシーズンラストスパートのためにも、極めて重要なポイントとなる。試合の流れを変えるためには、ゴールに直結するアクション、そのアクションを導くためのパスや守備、味方の気持ちを高揚させるフリーランや戦いぶりが求められる。

 その点、ゴールこそ生まれていないものの、ここ最近はどれだけ短い出場時間でも決定機をつかんでいる点を、ポジティブに受け止めたい。ウニオン戦でもシュートは相手GKのセーブに阻まれたが、終盤にゴール前至近距離で決定機を迎えていた。

「いい動き出しはできていると思っているので、あとはパスが出てくるのを待つだけかなと」

 そう話していたことがある。

 チャンスが訪れたときに決め切ること。オフェンシブな選手であれば、誰もがそう口にする。あらゆるプレッシャーが襲い掛かる試合でチャンスに決めきることは、本当に難しいことだ。

 だが、FWはひとつのゴールで、自身のフィーリングも周囲との連携も、一気に変えることができる。だからこそ、町野はその瞬間を信じて走り続けている。これまでもそうやって何度も壁を乗り越えてきたように。

 残留争いという厳しい状況のなかで、高井は新天地で順応を進め、町野は途中出場という役割の中で結果を求め続けている。

 シーズン終盤に向けて、彼らの存在がチームにどのような変化をもたらすのかに注目だ。苦しい戦いのなかでこそ、人は成長と一番向き合うことができる。

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)



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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)取得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなクラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国で精力的に取材。著書に『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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