22歳日本人に破格オファーも拒否 因縁の一戦で見せた才能…欧州で求められる「足の強さ」

NECナイメヘンで活躍する佐野航大【写真:REX/アフロ】
NECナイメヘンで活躍する佐野航大【写真:REX/アフロ】

欧州活躍の土台となる「足の強さ」

 オランダ1部第24節アヤックス対NECナイメヘンは両チームにとって非常に重要な一戦だった。結果は1-1で引き分け、得失点差でNECが3位を守った(2月22日時点、現在4位)。

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 UEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場権のかかった3位争いだ。3位ならCL出場、4位ならUEFAヨーロッパリーグ(EL)。CL出場ならリーグフェーズ敗退でも30~40億円の収入になるが、ELだと15~25億円の収入になるといわれている。

 NECにとってはEL出場でも悪くないが、CL出場はクラブのステータスを一気に押し上げるチャンスだ。だから冬のマーケットでMF佐野航大を売らなかった。

 佐野にはイングランド1部ノッティンガム・フォレストから2000万ユーロ(約36億円)のオファーがあったと報道された。破格の価格といっていいが、NECはこのオファーを蹴った。さらにこれより安い金額でアヤックスからもオファーがあり、佐野本人は合意したようだが、NECは認めなかった。アヤックスのOBから「ばかげている」などのコメントが出ていたが、NECの判断は筋がとおっている。

 CLに出場すれば佐野をノッティンガムに売った場合と同等以上の収入が得られる。世界最高峰の大会の出場権を得れば22歳の逸材の価値が下がるとは考えられず、同大会出場を決めてから期待の若手を売ったほうがクラブとしては明らかに得なのだ。まして熾烈な3位争いをしているアヤックスに売る道理がない。

 因縁のアヤックス戦、渦中の佐野は前半39分に致命的なミスを犯し、失点を喫した。自陣ペナルティーエリアのすぐ外でボールをキープしようとしてロストし、ボールを奪ったアヤックスFWミカ・ゴトツにシュートを決められた。

 佐野のミスに対して、オランダでは手厳しい報道がされた。例によってアヤックスOBのコメントが引用されている。オランダサッカーの中心は何と言ってもアヤックスであり、メディアも同国屈指の強豪を贔屓するため、辛辣なコメントが報道に載る。

 確かに手痛いミスだった。パスコースがなかったわけではなく、タッチラインの外へ蹴りだすこともできたかもしれない。ただ、厳しい局面でキープして持ち出すプレーができるのは佐野の強みだ。

 今回はボールタッチを少しミスしてしまったが、相手のプレスに負けずに持ち出せる能力は現代サッカーでは貴重だ。だからプレミアリーグのクラブや国内ライバルチームからオファーが舞い込む。

 その昔、英国の代理人に「もし日本人選手が欧州移籍するなら何が必要か?」と聞いたことがある。当時、まだ欧州でプレーした日本人は奥寺康彦や三浦知良など数人しかいなかった。代理人の答えは技術でも体格でもなく「足の強さ」だった。

 足の強さといってもスピード、敏捷性、キックのパワー、競り合いで負けない踏ん張る力、バランスを保つ復元力などさまざまだが、答えが示す強さとは積んでいるエンジンの大きさだ。そこからの出力に秀でていることが最低条件という話だった。

 佐野は明らかに足が強い選手だ。搭載しているエンジンが違う。そしてアヤックスの左SBとして後半20分に交代出場したDF冨安健洋も見るからに足が強い。まだトップコンディションではなさそうだが、瞬間的にパスをブロックしたプレーや、あっというまに間合いを詰める速さに強さの片鱗をうかがえた。冨安の健脚は足の強い選手ばかりのプレミアリーグでも別格だった。

 日本サッカー界は技術、センス、経験などが乗っかって来る土台の部分で優れた選手を輩出するようになり、現在は多くの選手が欧州でプレーしている。これからもその数は増えていくだろう。

(西部謙司 / Kenji Nishibe)

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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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