Jリーグにとどまる“ローカルヒーロー” 海外移籍が常態化も…日本で愛される共通点
1つのクラブでプレーを全うする「ワンクラブマン」は、希少な存在になっている。1970年代までは欧州でもそれほど移籍は活発ではなかった。レアル・マドリーやバルセロナのような例外を除けば、選手の大半は自国の選手であり、さらに地元の選手というケースもさほど珍しくはなかった。プレーしたクラブが1つだけ、というのはむしろ普通だった。

森田晃樹、脇坂泰斗、喜田拓也には下部組織出身、MF、キャプテンという共通点
1つのクラブでプレーを全うする「ワンクラブマン」は、希少な存在になっている。1970年代までは欧州でもそれほど移籍は活発ではなかった。レアル・マドリーやバルセロナのような例外を除けば、選手の大半は自国の選手であり、さらに地元の選手というケースもさほど珍しくはなかった。プレーしたクラブが1つだけ、というのはむしろ普通だった。
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やがて移籍が活発化し、1995年のボスマン判決以降は選手の大移動が始まった。そのころの日本はまだ移籍が活発ではなかったが、それも時間の問題にすぎず、現在は欧州ほどではなくても多くの移籍が行われるようになっている。海外移籍も増え、優秀な選手ほど1つのクラブに留まらなくなっている。
そんななか、数は少なくなったがJリーグにもワンクラブマンは健在だ。
東京ヴェルディの森田晃樹はジュニアからの生え抜き。今季から背番号を10番に変え、攻守の要としてチームを牽引。明治安田百年構想リーグでは連勝の原動力となり、まだ2試合とはいえ川崎フロンターレ、町田ゼルビアを抑えてEASTの首位に立った。
森田はある意味、典型的なローカルヒーローだ。ボール扱いがうまく、運動量があり、チームのために献身的なプレーをする。局面の読み取りが確かなプレーメーカー。身長は167センチと小柄。技術も実績も素晴らしいのだが、移籍が成立しにくいタイプだと思う。
サイズが小さいので欧州移籍のハードルは高くなる。小柄でも素晴らしい選手はたくさんいるが、怪我のリスクを考えると手を出しにくい。25歳という年齢も転売で利益を得たいクラブにとっては対象外になる。日本国内での移籍は十分考えられるが、ジュニアからの生え抜きで東京Vを象徴する存在を引き抜くとなると、そう簡単ではないだろう。先のことはわからないが、森田はワンクラブマンのローカルヒーローとして長く愛される選手になる条件が揃っている。
川崎の脇坂泰斗もローカルヒーロー色が強い。川崎といえば中村憲剛が18年間も川崎一筋のワンクラブマンだった。その中村の14番を引き継ぐ脇坂は、まさに正統後継者だ。川崎のトレードマークともいえる「止める・蹴る」の技術を極めている。一時は欧州移籍寸前だったが、2024年からキャプテンを務めてきた。川崎ユースの出身、阪南大を経由して戻って来た。すでにJ1での出場は200試合を超えているベテランである。
横浜F・マリノスの喜田拓也も筋金入りのワンクラブマン。プライマリーからの生え抜きでキャプテン。在籍14年目のバンディエラ。もうすぐ300試合出場。
森田、脇坂、喜田にはクラブの下部組織出身、MF、キャプテンという共通点がある。一方でフィジカルが強烈なタイプではなく、技術に優れていて献身性が高い。3人とも欧州リーグでプレーできる実力は十分あるが、それよりもJリーグに向いている。
日本代表選手の多くが欧州でプレーするようになった。トップクラスの日本人選手はJリーグには残らない。ただ、欧州リーグといってもさまざまで、現在はいわゆる5大リーグの中でもプレミアリーグ(イングランド)が突出している状況だ。Jリーグは特徴の違いはあっても、今やオランダ、ベルギー、ポルトガルといった5大リーグに次ぐレベルと遜色はない。クラブによって給料に差はあるかもしれないし、欧州でのステップアップを考えればオランダ、ベルギーなどへの移籍はありだが、競技面だけなら移籍する必要はないのだ。
高い実力を持ちながら、欧州よりも日本に向いたタイプでワンクラブマン。クラブの象徴的な存在感。海外移籍が常態化している今だからこそ、ローカルヒーローの価値はいっそう高まっている。
(西部謙司 / Kenji Nishibe)

西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。













