シティ移籍直前で膝を負傷「音が鳴った」 無念の1年離脱→復帰即リバプール移籍の真相「戻りたかった」

なでしこジャパン清水梨沙がファンミーティングを開催
日本女子代表(なでしこジャパン)に不可欠な選手が完全復活への1歩を踏み出した。2024年のパリ五輪初戦で右膝前十字靭帯を断裂し、1年以上のリハビリを乗り越えて復帰を果たしたDF清水梨紗が2025年12月の一時帰国中に「清水梨紗ファンミーティング presented by Klook」に登壇。イングランド・プレミアリーグのチケットなどを取り扱うKlook社と共に開催した。単独では自身初となるトークイベント終了後に「FOOTBALL ZONE」の独占インタビューに応じた。復帰を目指す中で感じた変化や新天地リバプールでの挑戦、なでしこジャパンへの思い、イングランドでの暮らしなどについて幅広く語った。(取材・文=舩木渉/全4回の1回目)
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「こんなに大人数の前でのイベントはやったことなかったのですごく楽しかったです」
年の瀬の渋谷に100人を超えるファンが集まり、清水のトークに耳を傾けた。その中でも特に大きなトピックとして触れられたのは、やはり2024年夏のパリ五輪で負った前十字靭帯断裂についてだ。
「1年ぶりにサッカーに復帰して、サッカーをできる喜びを日々感じています」
パリ五輪の初戦、スペイン代表戦で悲劇は起きた。右サイドバックとして先発していた清水は1-1で迎えた後半20分過ぎ、相手のドリブルに対応した際にピッチに足を取られて右膝を抱えた。そして、自らベンチにプレー続行が難しいことを伝え、担架に乗せられてピッチから退いた。
その後、なでしこジャパンは清水が交代した右サイドから崩されて同29分に失点。1-2で大事な初戦を落とすこととなった。
「前十字靭帯の怪我は初めてだったんですけど、やった瞬間に自分で分かりました。音が鳴って、『これがそうなのか……』と。正直ほとんど痛くなかったですし、トラウマみたいなものはなかったんですけど、あの場面の映像は見返していないし、やっぱり見たくはないですね」
清水はパリ五輪直前にウェストハムからマンチェスター・シティへの完全移籍が決まっており、大会後から新天地に合流する予定だった。FAウィメンズ・スーパーリーグ(WSL)王者への移籍ということもあり期待も大きかったが、前十字靭帯断裂により2024-25シーズンは全休に。シティのユニフォームを着て公式戦のピッチに立つことは叶わなかった。
それでも「あの怪我も含めて自分のサッカー人生だったんだと思えるようにリハビリに取り組んで」周囲で支えてくれた仲間たちの力も借りながら着実に前進してきた。
シティからリバプールへ…新天地へ移籍を決めた理由
「新しいチームに行くことが決まってすぐに怪我をして、そのまま試合に出られず、難しいところはありましたけど、素晴らしいチームメイトに恵まれていたからこそ(リハビリを)乗り越えることができたと思っています。過去に前十字靭帯の怪我をして離脱した経験がある選手もいて、彼女たちは私のことを気にかけてたくさんアドバイスをくれていましたし、そばで支えてくれたシティのチームメイトのみんなにはすごく感謝しています」
負傷から約1年。シティの一員として臨んだプレシーズンの練習試合で実戦復帰を果たすと、2025年9月4日にリバプールへの期限付き移籍が発表された。新たな所属先では2025年3月までシティを率い、清水のポテンシャルを高く評価していたガレス・テイラー監督が就任していた。
「怪我から復帰して、試合にコンスタントに出たいという気持ちが強くて、そこが一番の理由でリバプールへの期限付き移籍を決めました。なでしこジャパンにも戻りたかったですし、そのためには試合に出ることが絶対に必要だったので、本当に決断して良かったなと今は思っています」
リバプールでは移籍直後の9月7日に行われたエバートンとのWSL開幕戦に途中出場。「ワクワクしている余裕はなくて、ドキドキの方が強かった」という409日ぶりの復帰戦では終盤のみのプレーとなったが「試合に入る緊張感がまた戻ってきたんだと感じた」と心からサッカーを楽しむことができた。
「最初は時間制限がある中でプレーしていて『サッカーって90分間やったらこんなに疲れるんだ』と改めて思いました。ずっと離れていた分、しばらくは体力面が心配ではあったんですけど、やっと90分間戦える身体になってきましたね」
シーズン序盤の9月中はコンディションや試合勘を取り戻すことにフォーカスし、徐々にプレー時間を伸ばしながら出場を重ねた。そして、9月24日に行われたFA女子リーグカップのサンダーランド戦では「元々感情が表に出てくるタイプではないんですけど、自分以上にチームメイトが喜んでくれたのがすごく嬉しかった」と、復帰後初ゴールを決めてリバプールの勝利に貢献。チームはリーグ戦で開幕から6連敗と苦しんだものの、清水は先発出場の機会を増やし、10月にはなでしこジャパンへの復帰も叶えた。
「欲を出さず、ちょっとずつ」という気持ちで元いた場所に戻るための作業を地道に重ねる中で、自身の内面にも変化が生まれてきたという。
「怪我をしてサッカーができるありがたみを感じて、ちょっとうまくいかなくても『とりあえずサッカーができているし、サッカーができているから改善できる』と考えられるようになりました。怪我は良くないことですけど、起きてしまったからこそ、そういう考え方ができるようになったのかなと思います」
全てが怪我をする前の自分と同じではない。一度立ち止まり、ピッチから離れる時間が長くあったことで、“新しい自分”とともにどのような未来を描いていくかを具体的にイメージできるようになった。
(舩木渉 / Wataru Funaki)

舩木渉
ふなき・わたる/1994年生まれ、神奈川県逗子市出身。早稲田大学スポーツ科学部卒業。大学1年次から取材・執筆を開始し、現在はフリーランスとして活動する。世界20カ国以上での取材やカタールワールドカップ取材を経験し、単なるスポーツにとどまらないサッカーの力を世間に伝えるべく、Jリーグや日本代表を中心に海外のマイナーリーグまで幅広くカバーする。





















