欧州で直面“6400万円”給与未払い「去りたくなかった」 解除か移籍か…今明かす苦悩の1か月

マジョルカの浅野拓磨
マジョルカの浅野拓磨

浅野拓磨がセルビア時代に経験した“給与未払い”

 いよいよ北中米ワールドカップ(W杯)イヤーを迎える。前回大会、ドイツ戦で勝ち越し弾を挙げ、日本を劇的勝利に導いたFW浅野拓磨(マジョルカ)は並々ならぬ思いを抱える。2度目のW杯メンバー入りへ積み上げる日々。FOOTBALL ZONEへのインタビューでキャリアで起こった“大事件”について明かした。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞/全3回の2回目)

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「あれ以上の悩みは今後あるんかな……と思うぐらい。考えて考えてもう夜も眠れなかった」

 浅野を苦しめたのはセルビアの名門パルチザンに所属していた時のことだ。ドイツ1部ハノーファーから2019-20シーズン途中に3年契約で入団。1年目から23試合に出場して主力に君臨すると、翌シーズンは33試合18ゴールと大躍進した。当時は欧州主要1部リーグ日本人シーズン最多記録を更新するなど「中心とやれていた」自信があった。

 だが、シーズン2年を終えようとしていた2021年5月。クラブの度重なる給与未払いが明るみに出た。自身のSNSでパルチザンとの契約解除を発信。クラブ側は未払いを否定するなどしたが、そこに至るまで浅野は大きな葛藤があった。

「最終的には未払いがあって、今チームとの契約を解除して、次に進むという選択をしましたけど、その選択も自分の中では人生で一番悩みましたね。あれ以上の悩みは今後あるんかな……と思うぐらい。考えて、考えて、もう夜も眠れなかった。契約解除して出て行くかどうか(期間が)1か月ぐらいあった。自分の中では、出て行く、やっぱり残る……を毎日、毎日繰り返してエージェントに都度言っていました」

 悩んだ最大の理由は翌年に控えるカタール・ワールドカップ(W杯)に出場できる道はどこか。そして、パルチザンが「大好きだった」からだ。

「契約解除か残留かどちらの方がW杯に行けるか。契約解除を悩んだのも選手、スタッフ本当に大好きだったので、そういう形でチームを去りたくなかった。ある意味みんなを裏切るような形になってしまう。去った後もチームとの戦いになってしまうので誰にも連絡できない。決めたら苦しいだろうな、ニュースになったら家族にもいろんな声が届くだろうな、と考えた」

浅野拓磨がボーフム移籍への経緯を回想
浅野拓磨がボーフム移籍への経緯を回想

浅野の勝訴で決着…決断の理由は「W杯」

 実際、浅野がSNSで発信後、パルチザン側は一方的に退団したとしてFIFAに浅野を提訴。だが翌年6月には浅野サイドの主張が認められる形で未払い給与分の約45万ユーロ(当時約6400万円)の支払いが命じられた。パルチザンはスポーツ仲裁裁判所(CAS)に上訴したが、こちらも浅野が勝訴。約45万ユーロと5%の利息などの支払いが命じられ、長年にわたる“争い”に決着がついた。

 そんな未来が約束されていない当時は決断に至るまでのプロセスで核を持たなければいけなかった。それがカタールW杯。初めてのW杯出場を目指し続けることが浅野の支えとなった。

「最終的にはもう本当W杯に行くためには、もうこのチーム去って次に進むことだな、と。それが結論でしたね」

 次なる道、ドイツ1部ボーフムへ進んだ。1年目で27試合に出場。W杯に向けて着実に調子を上げていった。22年4月2日のブンデスリーガ第28節ホッフェンハイム戦では当時のドイツ代表ハンジ・フリック監督が視察に。浅野は2ゴールを挙げて2-1の勝利に導いた。その後のヒーローインタビューで「ハンジ・フリックが来ているけどどう?」と聞かれると「なにそれ?」と返答したことが世界的な話題となった。

「あれは本当です。人の名前かどうかも知らなくて。ドイツ代表の監督と言われてそしたらそのあとドイツとグループが一緒になって、ドイツ戦でゴールを決めて……と1つのストーリーにはなっていますけど、ガチでした……。あれ以来、俺インタビュー受けたくないんですよ(笑)」

 常に自然体でサッカーと向き合い続け、信じた道を突き進んできたからこそあのカタールW杯ドイツ戦のゴールが生まれた。キャリア最大の悩みも乗り越え、手繰り寄せた運命の糸だった。

(FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)



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