逸材MFが横浜FMを選んだ理由 名手へ”グイグイ質問”… 練習参加で生きた自己分析「かなり成長できる」

樋口有斗が横浜FM入りを決めた理由とは【写真:安藤隆人】
樋口有斗が横浜FM入りを決めた理由とは【写真:安藤隆人】

横浜FMに内定している中部大学の3年生MF樋口有斗

 今や大学サッカーはJクラブにおいて重要な一大供給源となっており、今年も多くの大学生がJ1、J2、J3のクラブに内定をもらっている。その数多くの内定選手の中で、今回は2026年シーズンから横浜F・マリノス入りが内定した中部大学の3年生MF樋口有斗に独占インタビューを実施。第4回目は樋口が行う自己分析について迫った。(取材・文=安藤隆人/全5回の4回目)

【PR】DAZNを半額で視聴可能な学生向け「ABEMA de DAZN 学割プラン」が新登場!

  ◇   ◇   ◇   

「デンチャレで自分の中で悔しかったのは、『いいアピールしなきゃ』と焦ってしまった自分と、関東の選手たちを少し大きく見過ぎてしまった自分のメンタリティーでした。もっと冷静に、大人にならないといけないと思いました」

 この自己分析がプロの練習参加で生きた。J1、J2、J3クラブの練習に参加をし、7月に横浜FMの練習に参加をした。

 当初は1週間の予定だったが、初日から臆することなく堂々たるプレーを見せると、「翌週末に練習試合があるから、マリノスに入った中でのプレーが見たい」と強化部に告げられ、もう1週間追加されることになった。

 2週間みっちりとトレーニングをした後の関東学院大の一戦。ボランチとして出場をすると、ゴールを決めてみせた。

 一度中部大に戻ってから、すぐにキャンプに参加をしたJ1クラブの練習に参加。それを終えると、両方から正式オファーが届いた。

「この2クラブで決めよう」

 これまでの練習参加を思い出し、自分が一番成長できる場所、何より「このエンブレムを背負って戦いたい」という自分の本音を探った。結果、横浜FMを選んだ。

「当時、チームはJ2降格圏にいて苦しい状態でしたが、練習や選手の雰囲気は物凄くよくて、ピッチ内だけではなく、ピッチ外でもコミュニケーションを取ってくれたんです。練習もスピード感が凄いし、強度のところも強く要求もしてくれるし、緊迫感、強度が高い中でとてもいい経験をさせてもらった。かなり成長できる練習の質だと思いました」

 樋口はコミュニケーションを『取ってくれた』と言うが、実は彼から積極的にアプローチをしていたことも大きな要因だった。堀尾監督も「有斗は常に人の意見に耳を傾けた上で、自分の意見と照らし合わせて発言ができるし、学びたい意欲が強くて、聞きたいことはどんどん質問する」と口にしたように、横浜FMでも同じボランチの渡辺皓太、喜田拓也などのプレーに目を向けて、分析をした上で質問に行った。

「渡辺選手は守備の間合いの詰め方が物凄くうまかったので、どのタイミングで行くのか、何を見ているのかを聞かせていただきました。喜田選手は『見えていないでしょ?』と思っていた場所にもパスを正確に供給できる。練習から『いつ見ていたの?』と驚くプレーが多くて、どういう視野の持ち方をしているかを聞きに行きました」

 2人とも丁寧に教えてくれたという。喜田は具体的なトレーニング方法まで教えてくれた。こうした環境も決断した大きな理由となった。

 もちろん「ボランチの選手層は厚いですし、レベルが高いですが、1つ剥がして前に刺したり、前に持って行ったりできるボランチとして自分が違う特徴を持っていると思いました」と自信もあったからこそでもある。

 かくして入学時に描いたプランより1年早くプロ入りが決まり、今年が実質の大学サッカーラストシーズンとなった。愛知と神奈川を往復しながら、東海1部で得点ランキング6位の10ゴール、アシストランキング5位の6アシストをマーク。順位も6位でフィニッシュした。

 無名の高校生が、全国的には無名だった大学で一気に花を咲かせた。だが、この花は勢いで咲いたものではない。長い年月をかけて、肥料や水を運んでしっかりと根ざして、1つ1つ積み重ねてきたからこそ咲いた花だった。

 もちろん、今がピークではない。ここからもっと大きな花を咲かせていく。最終回の第5回ではこれからの思いと決意。今、陽が当たらない場所でサッカーを続けている人たちへのメッセージを伝えていく。

(安藤隆人 / Takahito Ando)



page 1/1

安藤隆人

あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』(共に徳間書店)、など15作を数える。名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターも兼任。

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング