J1スカウトが驚愕「一体何者なんだ?」 貫く信念と“プラン構築”「僕はどこに行っても絶対に流されない」

横浜FM内定の中部大学3年生MF樋口有斗
今や大学サッカーはJクラブにおいて重要な一大供給源となっており、今年も多くの大学生がJ1、J2、J3のクラブに内定をもらっている。その数多くの内定選手の中で、今回は2026年シーズンから横浜F・マリノス入りが内定した中部大学の3年生MF樋口有斗に独占インタビューを実施。第3回目は樋口自身の“信念”について迫った。(取材・文=安藤隆人/全5回の3回目)
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「大学サッカーはたくさん時間ができる分、どこに行っても流されたり、遊びに走ったりするリスクは大きいと思うんです。でも、僕はどこに行っても絶対に流されないという強い信念というか、絶対にないという自信がある。中部大でとことん技術を追求しようという姿勢で取り組みました」
まず樋口は大学4年間のプランを構築した。1年で1部昇格、2年で1部残留とその冬のデンソーカップチャレンジに東海選抜の一員として出場。そして3年生でプロの練習参加、1部優勝と、全日本学生選抜の選出。4年生でプロ内定、インカレや総理大臣杯で上位進出。
「僕はもともと計画的に動くのが好きなんです。自分のどの要素が高まれば、どうなるとか考えるのが好きで、あとはちょっと悔しいという気持ちもあった。今は勝てていない現状でも、これから勝とう、どう勝っていこうかを考えるんです」
具体的に描かれたビジョンを着実にこなしていった。努力の過程で大学に入ってから大事にしていることがある。それは「必ず自分の課題を持って取り組む」という姿勢だ。
「ただうまくなりたいだけとか、量ばかりにこだわるのではなく、常に明確な課題を持って、『今週はこれをやる』と決めて、自主トレなどで具体的なアプローチをしていく。解消されたら次の課題。その連続の中で以前の課題でもう一度見つめ直さないといけない部分を見逃さないで、きちんと課題として把握し直して取り組む。他にもフィジカルの課題感をより明確に持って、食事や睡眠のことも自分で勉強して取り組むようになりました」
東海2部開幕戦からスタメンで起用されてレギュラーの座を掴むと、夏には横浜FCとの練習試合を経験し、そこでプロの基準を初めて知ることができた。
「左サイドハーフとして出場したのですが、ほぼ何もできなかった。そこで『まだプロになれるレベルにはない』と客観的に自分を見ることができました。相手を技術でもスピードでも剥がせないし、ボールを受ける前にも剥がせなくて、ボールを受ける時にはすでに球際を作られていた。オンもオフも全然足りないなと感じたことで、より課題がたくさん炙り出されました」
2023年の東海2部を制して1部昇格を果たすと、昨年は7ゴール・5アシストの活躍でチームを残留に導いた。そして、今年2月のデンソーカップチャレンジ静岡大会(通称・デンチャレ)の東海選抜に選出。デンチャレ前にJ1のビッグクラブのキャンプに呼ばれた。ここから夢が現実のものに一気に変わっていった。
キャンプは当初、Jクラブではない相手とのトレーニングマッチ2試合のみ出場する予定だったが、うまく自己アピールに成功すると、予定になかったJ1クラブとのトレーニングマッチに出場をすることになった。そこでボランチとしてアイデアあふれるプレーを披露して一気に評価を上げた。
デンチャレでは「キャンプの時のようなキレを出せなかったし、アシストもゴールもできなかった」と唇を噛む結果となったが、自己評価と周りの評価がいい意味で全く違っていた。
「東海選抜の14番は一体何者なんだ? とんでもない才能を持っているぞ」
関東選抜Aを3-2の逆転でくだした後、あるJ1クラブのスカウトが驚いたように口にしていた。彼だけではなく、多くのスカウトがボランチで華奢な身体からあふれ出るようなサッカーセンスとスキルを発揮する樋口のプレーに釘付けになっていた。
1年生の時に散々やられた経験のある筆者は、「ようやく気づかれた」と嬉しくなったくらい、インパクトは絶大だった。
デンチャレ後、樋口のもとには多くのJクラブからの練習参加の打診が殺到した。その中に横浜FMがあった――。
(安藤隆人 / Takahito Ando)
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』(共に徳間書店)、など15作を数える。名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターも兼任。





















