伝統校を襲ったATの“悲劇”「僕がカバーに行けたら」 古豪復活へ…2年生が誓う「全国に戻したい」

武南高2年MF小山一絆「力不足を感じました」
第104回全国高校サッカー選手権の都道府県予選も佳境に入り、各地では代表校が決まり始めている。ここでは全国各地で繰り広げられている激戦の主役たちのエピソード、プレーなどをより細かくお届けしていきたい。
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今回は埼玉県決勝の昌平vs武南から。昨年度のインターハイ王者と伝統校の一戦は両者一歩も譲らず。一進一退の攻防が続いた後半アディショナルタイム2分、昌平のMF長璃喜の閃光のようなドリブルシュートが決まり、昌平が2年ぶり7回目の選手権出場を手にした。敗れはしたが、武南が見せたアタッキングサッカーのクオリティーは素晴らしかった。その中心にいた2年生MF小山一絆はぜひ知っておいてほしいタレントだった。
白色のユニフォームに薄紫色のパンツ。伝統の「武南カラー」を身に纏った2年生ボランチは攻守において躍動した。前半は昌平のボール回しに対して、予測と身体の向きを細かく変化させながらパスコースを切ったり、セカンドボールを回収したりと守備面で存在感を放つと、後半はドリブルからの積極的な仕掛けとスルーパスで攻撃の起点として機能した。
58分に自陣から長い距離をドリブルで運び出してからスルーパスを送り、MF有川達琉のチャンスを作ると、72分には左サイドで鮮やかなターンとしなやかなボールタッチで2人を打ち抜いてゴールに迫った。77分にもスペースでボールを受けてシュートを放つが、DFの身体を張ったブロックに合う。
しかし、全体的に武南ペースかと思われた後半アディショナルタイムに悪夢が待っていた。相手の主役に決められて万事休す。武南の19年ぶりの選手権出場は夢に消えた。
「最後の方は自分も含めて少し運動量が落ちてしまった。もっと僕がカバーに行けていたら、声で鼓舞をすることができたら。力不足を感じました」
試合後、小山はこう唇を噛んだ。間違いなく武南のサッカーは彼を中心に狙い所を全員が認識し、意図を持って守備やボール運びをしていた。
「僕がボールを持ったら周りが動き出すというのが共通認識としてあるし、相手がそれを読んでくることもあるからこそ、僕は常に周りを見て、その動き出しをオトリに使ったり、シンプルに使って3人目で関わったりとどっちもできるようにしています。それに今日のような相手はパスで回してくるので、常に首を振って相手の位置とかスペースとか見て、ボールがどう動く、どう来るなど予測してポジションを取ったり、奪った後にどうつなげるかを考えたりしながらプレーができました」
小山自身もこの試合のプレーには手応えを掴んでいた。だが、相手はプレミアリーグEASTで毎週強豪校や強豪Jクラブユースとハイレベルな勝負を経験している選手たち。運動量が落ちてきた隙を見逃さなかった。
「ここで勝ち切れないと、また周りから『武南は勝てない』というイメージを持たれてしまう。だからこそ、ここは絶対に勝ち切りたかった」
埼玉県出身の小山は中学生時代、片道2時間をかけて千葉のヴェルディSSレスチジュニアユースに通っていた。高校進学時は千葉の高校からの誘いもあったが、家から通える学校を考えた。その中で昌平の練習会にも参加をしたが、「お父さんから『武南がいいんじゃないか』と勧められて、練習に参加をしたら本当にみんなうまくて、ここなら成長できると思った」と伝統校への進学を決めた。
父の世代はちょうど武南の全盛期を見てきた世代。父の言葉から彼の心にも「武南を全国に戻したい」という思いが強くなった。
「武南は古豪と言われていますが、僕は強豪だと思っています。それを証明するため19年ぶりの選手権に出たかった。この悔しさは来年に絶対につなげていきたいと思います」
(FOOTBALL ZONE編集部)












