求めたい仲間との厳しさ「強くならない」 オフには食事も…長谷川唯が追う“レジェンドの背中”

マンチェスター・シティで活躍する長谷川唯【写真:増田美咲】
マンチェスター・シティで活躍する長谷川唯【写真:増田美咲】

新キャプテンとして『厳しさ』を求める 若い選手が伸び伸びできるようにしたい

 なでしこジャパンの新キャプテンに就任したイングランド1部マンチェスター・シティのMF長谷川唯。日本代表通算92試合出場を誇る28歳が思い描くキャプテン像とは如何なるものなのか。そして、オフの間にあったレジェンドとの食事の機会とは――。なでしこの若手選手の有望さなどを「FOOTBALL ZONE」の独占インタビューで語った。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・砂坂美紀/全4回の4回目)

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 新生なでしこの“心臓”を長谷川が担うことになった。昨年12月にニルス・ニールセン監督が就任。5月には長谷川が新たなキャプテンに就任することが明らかになり、DF南萌華(ブライトン)が副キャプテンに。DF熊谷紗希(ロンドン・シティ)とFW田中美南(ユタ・ロイヤルズ)がサポート役となり、この4人がキャプテングループとしてチームを牽引することとなった。

 長谷川は就任の経緯をこう明かす。

「少し前の合宿から、仮ではありましたけど、キャプテングループでやっていました。4人で役割を分担できている部分もあります。責任感はありますが、そこまでプレッシャーもなくて今まで通りです。リーダーとして、プレーでしっかり引っ張っていきたいと思っています。『厳しさ』をお互いに求められる仲間になりたい。しっかり言う人がいなければ、チームは強くならないと感じているので、そこは自分が積極的にやっていきたいですね」

 そのキャプテンとしての“お手本”とすべき存在がいる。歴代最多の代表戦出場を誇るレジェンドの澤穂希さんだ。澤さんが後輩たちに「苦しいときは、私の背中を見て」と言っていたように、長谷川自身もプレーで示すタイプに近い。このオフ、その澤さんと元日本代表の小野伸二氏と食事する機会があった。澤さんからの誘いだった。

「お2人とも本当にいい方で、楽しくご飯を食べさせてもらいました。ぜひまた行きたいですね。幼い頃からプレーを見ていたので、目の前にいるのが不思議ですが、いい意味でレジェンドっぽくないので緊張しなかったです。澤さんは、いつも私のいいところを褒めてくれて、期待してくれるので、頑張りたいですね」

変化した日本人選手のスタイル

 幼少期に見て憧れた男女サッカー界のレジェンド2人と過ごした貴重な時間。なでしこの“意志”を受け継ぐ者として、そしてキャプテンマークを引き継ぐ者としての決意もある。

 長谷川はU-17やU-19など年代別代表の常連で、2017年に20歳でなでしこジャパンに初招集。その後、2019年、2023年と2度のW杯に出場。2020年の東京、2024年のパリと五輪の舞台も2度、経験してきた。28歳にして、現在のなでしこジャパンでは熊谷の162試合に次いで2番目に多い92試合、歴代でも15位の代表キャップ数を誇っている。

 経験を重ね、名実ともにチームの柱へと成長してきた。幅広い世代が混在するなでしこで将来を嘱望されている20歳のMF谷川萌々子(バイエルン・ミュンヘン)や19歳のDF古賀塔子(トッテナム)といった若手とのコミュニケーションも積極的に図ろうとしている。

「自分も経験が多い方になってきているので、若い選手の考えをしっかり聞いていきたい。プレー面ではもちろん、オフ・ザ・ピッチでもいい関係を築いて、ノビノビできるようにしたいですね。1番いいパフォーマンスが出るのって、元気に自分がやりたいことをやっているときだと思うので。成長するために考えたり、迷ったりすることも大事ですけど、そのバランスをうまく取れるようなコミュニケーションは大切にしたいですね」

 自らも20歳で初めてフル代表に招集され、多くの年上の選手たちと関わってきた。若くして代表でプレーしてきた経験があるからこそ、若い選手たちには存分にその良さを発揮してほしい、させてあげたい、と願っている。

 そして、近年、日本人選手のスタイル、特徴にも変化が出てきている、と肌で感じている。

「フィジカル的に長けている選手が日本人でも多く出てきたな、という印象です。今までの日本人のイメージは、『細かいプレーが上手』ということが多く言われてきました。最近は、(谷川)萌々子のミドルシュート、(古賀)塔子の対人の強さなど、フィジカルやスピードで負けない、強い選手が出てきている。今が一番良い時代、時期にきていると感じています」

 加えて、判断力や戦術眼などに優れた選手が多くなっているという。中盤で攻守の要となる長谷川も彼女たちと力を引き出し合いたいと期待する。

「個性的で能力が高い選手が多い印象です。細かいドリブルや技術、頭の使い方が上手な選手もいます。その子たちの良さを引き出せるような上の世代がいれば、良い結果がついてくると思うので『能力を最大限に伸ばしていあげたい』という気持ちはすごく強いです」

選手として円熟期を迎えた長谷川唯

 若手選手の突き上げや、WEリーグでプレーする国内組、そして中堅、ベテランを含めてあらゆる世代、選手が融合し、最高のチームとなるその日を待ち焦がれている。

「中堅も含めてその下がどんどん入ってくることによって、自分もやっぱり負けてられないなっていうのはすごく感じると思います。仲間同士での競争があるチームの方が強いと思うので、大会中の紅白戦でも、試合に出る予定じゃないグループが勝てるようになると、すごくいいチームだなっていうのを感じます。そんな集団になでしこジャパンがなっていけたらいいですね」

 その1つの集大成となるのが2027年、長谷川が30歳で迎えるW杯だ。選手として円熟期を迎え、そしてキャプテンとして立つ大きな舞台となる。

「長いサッカー人生で、大きなケガをせずに競技生活を送ってこられました。そういったサッカーができる環境、丈夫に育ててくれた親に感謝の気持ちもあります。この年齢で、どれだけコンディション保って、常に試合に出られる状態でいられるかというのは大事だと思う。プラスで最高の結果がついてきたら良いですね」

 最高の結果――。それは「世界一」以外のなにものでもない。なでしこジャパンでも、そして所属クラブでも。

「なでしこジャパンでW杯やオリンピックで優勝することが目標。それから、マンチェスター・シティではチャンピオンズリーグの制覇。ずっと目標として持っているので、結果がしっかり出せたら一番いいのかなとは思います」

 こう意気込む長谷川の表情は、決意に満ちていた。

(砂坂美紀 / Miki Sunasaka)



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