ロッカーに突然現れた森保監督「サプライズ」 W杯へ窮地も…よぎった金言「忘れちゃいけない」

フットサル日本女子代表の松本直美【写真:荒川祐史】
フットサル日本女子代表の松本直美【写真:荒川祐史】

フットサル日本女子代表の松本直美が回顧するアジア杯の歓喜

 11月にフィリピンで初めて開催される女子フットサルのワールドカップ(W杯)に出場する日本女子代表。須賀雄大監督率いる同チームの主力として、5月に行われたアジアカップ初優勝に貢献したのがバルドラール浦安ラス・ボニータスに所属する松本直美だ。「FOOTBALL ZONE」では、フットサル界の発展も目指す“ニューヒロイン”を直撃。独占インタビューの第2回ではアジア制覇、W杯出場という快挙を成し遂げた胸中に迫る。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞/全4回の2回目)

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「正直ホッとする感情が最初に出てきて、嬉しいという感情は徐々に……でした。だんだん実感しました」

 2025年5月15日、中国の内モンゴル自治区フフホト市。Jリーグが誕生して32年経ったこの日、日本サッカー界の新たな扉が開いた。AFC女子フットサルアジアカップ準決勝で日本がイランを3-2で倒し、初めて開催されるW杯への出場権を掴んだのだ。

 イランは前回大会の女王で過去2度、アジアを制した女子フットサル界の強者。だが、前半3分、同4分と立て続けにゴールを奪って主導権を握った日本は相手の反撃も食い止めて、最終的には1点差で逃げ切った。上位3チームにW杯切符が与えられるアジア杯で、2位以内を確定させた瞬間だった。

「W杯出場を絶対にイランに勝って決めようと、強い思いを持って戦いました。早い段階でゴールが決まったというところで、後半の戦い方も考えないといけないというのもあったんですけど、日本らしく前から常にプレッシャーをかけて、気を引き締めて後半に臨みました」。この試合、スタメンの5人に名を連ねていた松本はこう振り返る。

 この大会は新型コロナウイルスの影響もあって7年ぶりの開催で、日本女子代表の多くの選手にとって初めての国際舞台での公式戦だった。惜しくも2位で優勝を逃した2018年大会の悔しさを知るのは網城安奈(SWHレディース西宮)、江口未珂(現浦安)、四井紗樹、江川涼(ともに元浦安。現在はSWHレディース西宮)の4人だけ。目標は悲願の優勝。フレッシュに積み上げてきたものを出し切った。

「親善試合は経験しましたけど、私も大会は初めてだったので、雰囲気が違うなと思っていました」

 千葉県にあるJFA夢フィールドで行われていた事前合宿にも、いつもと違う緊張感が張り詰めていた。そんなある日、チーム全員がロッカールームへ集められた。何が始まるのか……。そこに現れたのは、なんとサッカー日本代表の森保一監督だった。

「本当にサプライズでした。ドアが開いたと思ったら、そこには森保さんが来られていて……。『大舞台、W杯を懸けた戦いを楽しんで、最高の結果を持って帰ってきて欲しい』と言ってくださって、すごく力になりました」

 W杯を目指す戦いの最中、森保監督の言葉を思い出す瞬間があった。グループステージ第3戦、2連勝で臨んだ日本はその後、決勝でも対戦するタイに1-3で敗れてしまった。フットサルの大会は中1日。ここからノックアウトステージが始まるという状況で、チームはショックを受け、落ち込んでいた。

「負けたことでメンタルも落ちてしまって。でも、この舞台を楽しめる、戦える選手は選ばれた人しかいない。やっぱり楽しむ心を忘れちゃいけないと、森保監督の言葉を改めて感じました。この敗戦があったからこそ修正する部分も明確になったので、次の試合につなげられたと思います」

 森保監督の言葉も胸に、気持ちを新たにした女子日本代表は準々決勝でベトナム、準決勝ではイランを撃破し、決勝まで駒を進めた。決勝の相手は、一度は敗れたタイ。最後はPKで勝利をもぎ取り、初めてアジアの頂点に立った。

 日本のFIFAランクは10位で、アジアでもタイ、イランに次ぐ3番目だ。アジア女王として初開催の女子フットサルW杯に臨むことになるが、1位のブラジルや2位のスペインなど、まだ世界との差はある。

「やっぱりポルトガルやスペイン、ブラジルとかは身体能力も高く、戦術もすごく上手い。最後に戦った時は差を感じたので、少しでも縮めて追い越せるように取り組んでいきたいです。当たり負けない体力作りもそうですけど、日本のフットサルは世界一のハードワークを目指している。W杯は1つの目標。最後まで戦う気持ちだったり、そういう部分では世界一を目指して全員が取り組んでいます」

 松本のプレースタイルもいわゆる“ファイター”。ボール奪取能力に優れ、攻守の鍵を握る。フットサルは戦術も細かく決められており、セットプレーが生命線になる。「私の所属チームでは(セットプレーのパターンが)40個ぐらいあります。相手の守備位置、配置を見てキッカーがアナウンスする。みんながそれ通りに動くみたいな感じなので、そこはサッカーと違うところ」。特に女子は戦術に忠実で、動きが分かりやすく、そこが魅力でもある。

「本当に最後の1秒までどっちが勝つか分からない。攻守の切り替えが早いので見ている人もすごく面白いと思います」。会場に音が反響し、ピッチ上の楽しさが伝わってくるというフットサル。その魅力を伝えるべく、松本はいま“三足の草鞋”を履き、日々奔走している。(第3回に続く)

(FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)



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