大変動が起きた昇格争いがアツい! ダークホースが躍進…行方を左右する2つの“6ポインター”

2つの“6ポインター”を控える今週末のJ2 【写真:徳原隆元 & GettyImages】
2つの“6ポインター”を控える今週末のJ2 【写真:徳原隆元 & GettyImages】

2位までの自動昇格を狙えるのは8チーム

 J2はシーズンの折り返し、後半戦の1試合目となる第20節を終えた。前半戦は悲願のJ1昇格を目指すジェフ千葉がずっと首位を走ってきたが、ここ5試合勝ちなしと失速しており、代わりにリーグ戦11試合負けなし、8連勝と破竹の快進撃を続ける水戸ホーリーホックが、ついに首位に立った。

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 一方で“昇格組”からジャンプアップを狙うRB大宮アルディージャ、昨シーズンはプレーオフ決勝で惜しくも昇格を逃した森山佳郎監督のベガルタ仙台は開幕時から安定した戦いをしており、ともに勝ち点37。首位の水戸と勝ち点4、2位の千葉と勝ち点1差に付けており、自動昇格の2枠はいつでも捉えられるポジションだ。大宮は相手に応じて戦い方を変化させる“カメレオン戦術”が特長となっている。仙台は第19節のアウェー山形戦で、後半アディショナルタイムに逆転勝利を飾ったのは大きかった。

 5位の徳島ヴォルティスは数年来、スペイン人監督がポジショナルプレーの理論に基づく、多角的なポゼッションスタイルを構築してきた。だが昨年3月に吉田達磨前監督から引き継いだ増田功作監督が、堅実な守備をベースにチームを立て直しており、20試合で10失点という驚異的な堅さで、上位陣では異彩を放っている。

 その徳島とは対照的に、ジョン・ハッチンソン監督が“アタッキングフットボール”を掲げる新たな体制でJ2優勝、J1昇格を目指すジュビロ磐田も途中、3連敗と苦しい時期を乗り越えて、2位の千葉まで勝ち点3差のところまで浮上してきた。ポゼッションがベースではあるが、相手の背後を狙う攻撃を織り交ぜることで、攻撃にバリエーションが出てきたこと、攻撃的なスタイルの中での守備の安定化が、ここ8試合負けなしの要因だ。

 現実的には現在プレーオフ圏内の上記6チームに、代表取締役でもある高木琢也監督が7年ぶりに現場で指揮を執るV・ファーレン長崎、まさかの開幕3連敗からじわじわ浮上してきた、小菊昭雄監督が率いるサガン鳥栖を加えた8チームの自動昇格争いと筆者は見ている。長崎は下平隆宏前監督の解任にともない、高木監督で再出発となるが、幸先良くロアッソ熊本に勝利しており、開幕前は優勝候補の呼び声も高かった本来のチーム力を考えても、上位陣にとっては不気味な存在だろう。

首位の水戸は8連勝中

 この週末、今シーズンのJ2の行方を大きく左右しうる、いわゆる“6ポインター”が2つある。1つは水戸と徳島、もう1つは磐田と仙台のゲームだ。森直樹監督が率いる水戸は4-4-2をベースにタイトな守備とダイナミックなサイドアタックを繰り出す。その主翼だった津久井匠海が、ライバルの大宮に引き抜かれたが、難敵のFC今治にアウェーで2-1と競り勝ち、不安を一掃した。水戸は徳島を迎えるが、前回は敵地でエースのFW渡邉新太が奪った虎の子の1点を守り切り、1-0で勝利しており、ホームでも自信を持って臨めるだろう。

 8連勝中の水戸に挑む徳島は強みである組織的な守備に加えて、いかに攻撃面で水戸を上回っていけるかが鍵になる。6月の特別登録期間に補強は無かったが、J2の中ではハイスペックなタレントを増田監督が掌握してきている表れでもあるだろう。3-4-1-2のシステムで、攻守に奮闘する渡大生と7得点のルーカス・バルセロスをテクニシャンの杉本太郎が生かす形を取っているが、チームの心臓は高いボール奪取能力を誇る元磐田の鹿沼直生で、攻撃にアクセントを加えるのが“相棒”の児玉駿斗だ。この二人の躍動無くして、敵地での徳島の勝利は考えにくい。

 仙台はホームで2-3と敗れた、前回対戦のリベンジマッチでもある。4世代にわたりU-17日本代表を率いた森山監督はコンパクトな4-4-2をベースに組織力を維持しながら、局面で個性的なタレントの良さを引き出す手腕に長けている。展開力のある鎌田大夢と左利きの武田英寿の2ボランチは攻撃面から見れば、J2最強コンビだろう。彼らを軸に屈強なFWエロンや攻守に抜け目ない荒木駿太、高速サイドアタッカーのオナイウ情滋などが絡んでゴールを目指す。J3の高知ユナイテッドで13試合10得点の小林心など、後半戦に向けてベンチパワーの強さも増している。

 仙台をヤマハスタジアムで迎え撃つ磐田は特別登録期間で、オランダ1部NACブレダからDFヤン・ファンデルベルフを獲得。前所属クラブでキャプテンも務めた選手で、空中戦の強さは折り紙付き。ただ、同じく左利きのリカルド・グラッサといかに共存させるのか注目されるが、磐田はシーズン途中からオプションとして3バックも導入しており、サイドバックとボランチの経験もあるファンデルベルフの生かし方はハッチンソン監督の手腕の見せ所だ。もう一人、タイ代表FWポラメート・アーウィライも獲得している。彼らがいきなり仙台戦のベンチ入りを果たすかは不明だが、後半戦のブースターになりうる。

 前回の対戦はアウェーの磐田が、少ないチャンスから効率よく得点を奪って勝利したが、戦術的な完成度という観点ではやはり森山監督が2年目の仙台が上回っていた部分も多々あった。そこが3か月間でどれだけ変わっているかも興味深い。また磐田は2-1でリードしたところから投入された名願斗哉にかなり苦労しており、一度は同点となるゴールも決められている。ともに過密日程ではないため、スタメンは現在のファーストセットと見られる陣容で行くと予想できるが、ハッチンソン監督と森山監督の選手交代が終盤戦にどう影響してくるか注目だ。

 2つの“6ポインター”が注目される一方で、2位の千葉はカターレ富山、3位の大宮は大分トリニータと、どちらもアウェーゲームを戦う。千葉は第2節にホームで2-0と昇格組の富山に完勝しているが、富山は監督も代わっており、J2の戦いにも慣れてきているため、あまり参考にしすぎるのは危険だ。大宮はホームの前回、大分と2-2の引き分けだった。片野坂知宏監督が率いる大分は現在10位だが、チームのポテンシャル的には昇格争いのチームにも匹敵する。現在、3位の大宮とは勝ち点11差で、ここを昇格争いに食らい付くラストチャンスと捉えているかもしれない。

 その大分を含めて、昇格プレーオフ争いもだんだん候補が絞られてきている。現在9位の今治が6位の磐田と勝ち点8差で、10位の大分が勝ち点9差、その後に11位のヴァンフォーレ甲府と12位の北海道コンサドーレ札幌が勝ち点10差となっている。プレーオフ圏内のチームの力を考えても、この辺りまでがギリギリか。そこも5位の徳島や6位の磐田が“6ポインター”を制して這い上がるのか。敗れて足踏みするのかで、ここからの戦況に大きく影響していきそうだ。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)



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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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