人件費はJ1最下位「残留は当たり前じゃない」 指揮官抱く危機感「これが我々の力、現実」

東京Vは柏に敗戦も城福浩監督は切り替え
ルヴァンカップのプレーオフラウンドは、2試合の合計スコアで競われる。ホームで行われた初戦を0-3のスコアで落としていた東京ヴェルディにとって、2試合合計で逆転するためには4点差以上をつけての勝利、もしくは3点差をつけて追いついてPK戦で勝つ必要があった。点が動きにくいサッカーという競技で、かなり難しい注文である。それこそこの日、三ツ沢で行われていた横浜FCとセレッソ大阪戦のように退場者が出るなどのアクシデントが起きない限りは、おいそれとは実現しない。
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それでも、この日の三協フロンテア柏スタジアムには多くの東京Vファンが足を運び、アウェーゴール裏をしっかりと緑に染めた。そして試合前から試合終了後まで情熱的な声援を送り続けていた。
3点のビハインドを取り返すべく、FW染野唯月、FW木村勇大がそろって先発出場した東京Vは、前半43分に染野が先制点を決めて前半を折り返す。しかし、後半5分に同点とされて逆転は絶望的な状況となる。後半26分、FW垣田裕暉に2試合連続となるゴールを決められて逆転を許し、第2戦も1-2で落とす結果となったが、東京Vのサポーターは試合後も肩を落とす選手たちを鼓舞し続けた。
試合後の記者会見で、城福浩監督は開口一番「非常に厳しい状況でのセカンドレグでしたが、こんなにも多くのサポーターが駆け付けてくれたことはありがたかった。勇気をもらったし、背中を押された状態で試合に入れました」と感謝した。
そして試合については、「結果は残念だったんですけど、今、自分たちの選手層でやるべきことはある程度示したんじゃないかなと思います。これが今の我々の力、現実だと思うし、それをしっかり受け止めたい。攻撃で失うはずのない場面で失う、守備の仕方、行き方も、強度の連続性も、バトンをどうつなげていくか。あとから出た若い選手のプレーもしっかり見えた。このチームは底上げをして後半戦を戦わないと、J1で戦うのは非常に厳しい。今日を境に、また新たな競争が生まれてくるように選手とともに努力したい」と、ルヴァン杯敗退を機に、あらためて2年連続のJ1残留を実現する決意を述べた。
同点に追い付かれてから、城福監督は残留するために試合で確認したい現在のチーム力を試すことを意識したのではないか。木村と染野をベンチに下げ、MF森田晃樹のトップ下で起用し、若いFW熊取谷一星、FW白井亮丞をピッチに放ち、どれだけできるかを確認した。
5月27日に発表された2024年度のトップチーム人件費で、J1の18クラブ(柏、湘南は後日発表)で最下位だった東京Vは6位でシーズンを終えたが、対戦相手の警戒の強まった今季は、前半戦を終えて13位となっている。
あらためてサポーターに対して、「(第1戦を終えて3点ビハインドの)こういう難しい状況だからこそ、背中を押したいという思いが伝わってきた。本当にありがたい」と感謝をした城福監督は、「これまでにも何度か言っていますが、我々がJ1で置かれている状況、リーグ戦の今の順位、勝ち点には全く楽観視していません。当たり前だが、(J1に)残るのが当たり前のクラブではない。その危機感をサポーターも持ってくれている。彼らとともに戦い、彼らの力も得ながら、すべてを出しきれないと、当たり前ですがバジェット(予算)通りの順位になる」と、危機感を募らせた。
2連戦した柏とは、すぐに3試合目がある。11日の天皇杯の栃木戦を挟んで迎える15日のJ1第20節のホームゲームは、サポーターにこの2試合の借りを返す試合にもなる。昨季は後半戦に大躍進を見せた東京Vだが、再びバジェットをひっくり返すような戦いぶりを見せられるかが問われる試合が、間もなくやってくる。
(河合 拓 / Taku Kawai)