森保監督、決意の“9”「批判に晒されたとしても」 W杯まで1年…かつてない舵切りの真意

森保一監督が選んだ「最強最高のチーム」への道のり【写真:徳原隆元】
森保一監督が選んだ「最強最高のチーム」への道のり【写真:徳原隆元】

森保監督は9人の経験浅い選手を先発ピッチへ立たせた

 日本代表の森保一監督は6月5日、敵地で行われた北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選・オーストラリア戦(0-1)で大胆な新戦力テストを行った。最終予選で主力を担ってきたMF遠藤航やMF久保建英らをベンチスタートさせ、A代表デビュー組を3人先発に送り込んだ。さらに、MF鎌田大地とDF町田浩樹を除く6人は出場経験があっても最高で4試合。最終予選初出場の“9人”が先発ピッチに立った。W杯まであと1年と迫った中、新戦力を大胆に起用し、「最強最高のチーム」作りに舵を切った一戦となった。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞)

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「理由を2つお話しすると……」

 森保監督は会見で切り出した。遠藤や久保ら主軸を先発に残して新戦力と融合させるのではなく、ほぼ新しいチームと言えるほどガラッとメンバーを変更。2桁台の国際Aマッチ出場経験を持つのは鎌田と町田のみで、あとの9人が最終予選初出場だった。デビューの3人がDF関根大輝、MF平河悠、MF俵積田晃太。残りの6人もGK谷晃生、DF渡辺剛、MF佐野海舟、MF藤田譲瑠チマ、MF鈴木唯人、FW大橋祐紀と、これまでにないほど思い切った起用法。指揮官はまるで答えを用意していたかのように、丁寧に理由を説明した。

「1つはこれから最強最高のチームを作ってW杯に挑むというところに向かっていくために2チーム、3チームの戦力が必要かなというところ。もう1つは主軸を残して組ませた中で経験の浅い選手のサポートしながら思い切ってプレーしてもらうことも考えました。なぜやらなかったかというと、助けてくれるからいいプレーができたということにつながるかもしれない、と。

 彼ら(新戦力組)は我々コーチングスタッフがスカウティングした中で代表に選ばれても日本の戦力として間違いなく力になる、成長が大きく見込まれると思って来てもらっている。助けてもらったからできるのではなくて、代表に生き残っていくためにも力があるというところを今回組んだ選手の中で自分の良さを発揮する、チームの良さを発揮するというところを実践してもらいたかった」

 今シリーズはMF三笘薫ら中心メンバーの招集を見送り、3月の活動からは14人を入れ替え。森保監督は「未来に向けて」「選手層を厚くする」をテーマに据えてきた。だが、それはただ単にこの2試合で経験を積むのではなく、W杯メンバーに食い込む、今のコアメンバーと激しい競争を繰り広げる土俵に上がってくるところまで求めている。遠藤や久保をスタメンから起用していれば、もっとチームとして機能しただろう。それでも、あと1年まで迫ったW杯に向けて「ベンチで見て経験ではなく、最終予選の厳しい戦いの中でそれぞれの力を見せてもらい、勝利を目指して戦う中でなにができるのかというところを見たいというのがあった」と、新戦力をより追い込んだ環境で中心メンバーに立ち向かうプレーを望んだのだ。

 試合は完全に引いた相手に全体的に支配しつつも引き分け濃厚となった試合終盤、ワンチャンスをものにされて0-1で敗れた。何度も繰り返したのは「選手たちには悔しさを持って成長してもらえれば」と、さらなるレベルアップだった。

 もちろん、すでにW杯出場権を獲得して、テストに充てられると言っても日本代表の試合として敗戦は許されない。その中でもこのメンバーを送り込んだのは指揮官の覚悟があったから。

「もう1つの理由ではないですが……」

 この言葉は、会見で指揮官自らが切り出した。どうしても伝えたかった起用の強い思いだ。

「負けていいという試合は代表にはないと思っています。その中で敗戦を恐れてコアメンバーだけで常に戦うのではなくて、日本代表の勝利を、日本サッカーの発展を我々がやっていかなければならないと思っている。ただ責任を問われたとしても、それだけ批判に晒されたとしても、それだけのものを懸けられる選手だからこそ招集して起用した」

 日本代表に生き残るのは簡単ではない。指揮官は厳しい環境でより高いライン、突き上げを求めた。大幅にメンバーを入れ替えた中で、引き締まった緊張感を得られたことは敵地オーストラリア・パースでの一番の収穫だったかもしれない。

(FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)

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