久保建英は「シメオネに合っている」 アトレティコ移籍の障壁となる96億円と“最大の理由”

去就が注目されている久保建英【写真:IMAGO / ZUMA Press Wire】
去就が注目されている久保建英【写真:IMAGO / ZUMA Press Wire】

久保建英は「アトレティコにフィットするし、シメオネのスタイルに合っている」

 久保建英の2024-25シーズン終了まであとわずかとなり、来季の去就に関するニュースがいくつも出ている。そんななか、信憑性に欠けるスペインのウェブメディアが報じている移籍先候補の1つとして、アトレティコ・マドリードが挙がっている(現地大手メディアからの報道はなし)。

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 これを受け、ラ・リーガ第35節アトレティコ・マドリード対レアル・ソシエダの取材に訪れていた、スペインの大手メディアグループ「メディアセット(テレビ局クアトロやテレシンコなどを所有)」でアトレティコ・マドリードを担当するアントニオ・ファブラ・カランサ記者に、久保の去就に関する話を伺った。(取材・文=高橋智行)

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――アトレティコが久保を狙っているとスペインのウェブメディアが報じていることについていかがですか?

「その報道についてはまったく聞いたことがないけど、アトレティコにとって今夏の移籍市場は非常に忙しくなる。ロドリゴ・リケルメやサムエウ・リーノなど、久保と同じポジションや似たような特徴を持つ選手を放出する可能性が高く、多くのメンバー変更があるだろう。そのためクラブは新たな補強を行う予定だ(※大手メディアは獲得の有力候補にビジャレアルのアレックス・バエナを挙げている)。アトレティコが久保を狙っているという報道がどこまで本当かは分からないが、彼のプレースタイルをクラブは気に入っていると思う。私は久保がアトレティコに上手くフィットすると思うし、彼のキャラクターはシメオネのスタイルに合っている」

――アトレティコの右サイドの攻撃的なポジションは今季、シメオネ監督の三男ジュリアーノとマルコス・ジョレンテが担っています。

「右サイドはジュリアーノとジョレンテの2人が絶対的な存在であり、そこに割って入るのが非常に難しいのは間違いない。特に絶好調のジュリアーノがあのポジションから移動させられる可能性はほぼないだろう。そのため、久保がアトレティコに来るためには、別のポジションでプレーすることを受け入れる必要があるかもしれない。アトレティコが普段、フリアン・アルバレスともう1人のFWがコンビを組む4-4-2で戦っていることを考えると、私は久保が左サイドハーフ、もしくは中盤でプレーできるんじゃないかと思っている。アトレティコは多くの大会を戦うから、試合に出るチャンスが多くの選手にある」

――久保の来季去就についてはどうか。

「すべてはラ・レアル(レアル・ソシエダの愛称)がどのような形でシーズンを終えるかに懸かっているが、今のところ欧州カップ戦の出場圏外にいる。久保はヨーロッパの大会でプレーしなければならないレベルの選手だ。もし来季その舞台で戦えないとなると、いいオファーを待つかもしれない。彼はラ・レアルで大いに満足していると思うが、自分に合うチームが現れたら移籍する可能性はあるだろう。でも私は来季、ラ・レアルが復活を遂げると確信しているので、彼がもう1年ラ・レアルに残る可能性も十分あると思っている」

久保の高額の移籍金以外にもある大きな問題「理由はそこにある」

――久保の契約解除金は6000万ユーロ(約96億円)と報じられています。

「今の時代、6000万ユーロはとても高いと思う。しかし、ラ・レアルは交渉するのが非常に難しく、選手を簡単に手放さないクラブだ。ラ・レアルがその金額以下で久保を売却するつもりはないと思うが、私は久保の6000万ユーロというのは非常に高価だと感じる。3500万ユーロ(約56億円)か4000万ユーロ(約64億円)が妥当であり、それ以上ではない。彼はとても若くて良い選手だが、それでも6000万ユーロはとても高いと思う」

――アトレティコにとって、6000万ユーロの価値とは。

「アトレティコが昨夏、高額の移籍金を支払ったのはフリアン・アルバレスだけだった。その金額は8000万ユーロ(約128億円)ほど。例えばロビン・ル・ノルマンやセルロートなどは3500万ユーロ程度で獲得している。アトレティコは通常、補強をそのくらいの金額で考えており、6000万ユーロを払うことは滅多にない。さらに言うと、アトレティコが強く獲得を望んでいるバエナであっても、獲得に必要とされる金額は5000万ユーロ(約80億円)だ。アトレティコが仮に久保獲得を狙うとしても、契約解除金として設定されている6000万ユーロを支払う可能性は非常に低い。先ほど言った3500万ユーロくらいなら払えるかもしれないが、アトレティコにはそれ以外に大きな問題がある。それはラ・レアルに『久保を他のクラブに売却した場合、レアル・マドリードにキャピタルゲイン(購入価格と売却価格の差による収益)の50%を支払う』という契約があることだ。永遠のライバルに対してそれを支払うことは、クラブはもちろんのこと、特にサポーターが嫌悪感を抱くと思う。久保がアトレティコに来ることが難しい最大の理由はそこにある」

(高橋智行 / Tomoyuki Takahashi)



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高橋智行

たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。

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