J1柏から監督招聘…流経柏&市船を脅かす新勢力 狙う全国制覇「最高の景色が見たい」

日体大柏の三橋賢人「市船と流通経済大柏を倒すことばかり考えていた」
今季、初のプリンスリーグ関東2部に昇格し、6試合を終えて3勝1敗2分の3位に位置する日体大柏。近年、流通経済大柏と市立船橋の「千葉2強」と言われるプレミアリーグ勢に割って入る勢力としてメキメキと力をつけてきたチームは、今年かなりのタレントを揃えた全国的にもハイレベルなチームになっている。
チームの看板はFW小泉ハーディー、三橋賢人、攻守の要・MF沼田大都のトライアングル。この3枚の強烈な個性が織りなすアタックは破壊力抜群だが、今回はこのなかの1人、三橋にスポットを当てて紹介をしていきたい。
彼は181センチのサイズを誇り、ずば抜けた身体能力を持つ。跳躍力、初速力、加速力、そして瞬発力。ボールを持ったときの切れ味鋭いドリブルと、オフ・ザ・ボールの動きでスペースに潜り込んでいくうまさは抜きん出ている。
パワーとしなやかさを持つ彼の実力が証明されたのはプリンス関東2部第5節の三菱養和SCユース戦だった。開幕してから沼田と小泉が負傷離脱するアクシデントがあったが、三橋は前線の起点として気を吐いた。そして、迎えた三菱養和戦でもベンチで見守る2人の前で前線からの献身的な守備とサイドでの起点、ドリブルでカットインして積極的にゴールを狙うなど、相手にとって脅威となっていた。
しかし、1点リードで迎えた前半にCBが1人退場をすると、状況は一変。後半開始早々にオウンゴールで同点に追いつかれたが、後半途中に小泉、沼田が投入されると、守勢が続くなかでも「あいつらが入ってきたら何かが起こると思っていた」と三橋は常にゴールを狙っていた。
後半28分、カウンターから右サイドで沼田がボールを持つと、三橋はゴール右ポケットに猛然と走り込んだ。三橋の背後に1枚DFがついてきていたが、沼田が彼の前のスペースにクロスを上げると、「GKが出られない絶妙な位置にボールが来た」とポケット内でワントラップをして前に出た。
しかし、ゴールへの角度が厳しく、身体もサイド側に向いていた。一度中を向いてから切り返しシュートを打つのかと思ったが、彼はそのまま反転をしながら右足を一閃。弾丸ライナーがゴールに突き刺さった。
「角度がなかったし、僕の身体の向きがゴールを背にしている形だったので、GKも『そのまま打ってこない』と考えるだろうと思ったので、あえてそのまま打ちました。迷いは一切なかったです」
このゴールが決勝弾となり、10人の数的不利を跳ね返す劇的な勝利を飾った。
「あのゴールこそ、僕が成長したと感じられるものでした。菅沼実コーチに教わったとおりのゴールでした」
日体大柏はJ1の柏レイソルと相互支援契約を結んでおり、柏レイソルU-18の選手が日体大柏に通うだけではなく、サッカー部の根引謙介監督、菅沼コーチは柏から招聘されている。
「菅沼コーチからは常に『GKが嫌がるタイミングで打て』と言われていて、シュート練習のときも菅沼コーチは自分が欲しいボールを出してくれないんです。ラフなボールだったり、強めのボールだったりをいろんな場所に出してくれるので、僕はそれに食らいついてシュートをゴールに打ち込むんです。自分が打ちたい形では打てないけど、それだけ形に囚われない、あらゆる角度、体勢からゴールを狙う意識と動作が身体に染みついてきた。だからこそ、あのシーンも昔の僕だったら、自分の打ちやすい形に持っていたと思うのですが、そうじゃなく咄嗟に身体がゴールを狙って動いてくれたんです。あのゴールはその練習の成果が出た100%のゴールだと思います」
そもそも彼はこうした実戦的な質の高いトレーニングを求めて日体大柏にやってきた。彼は柏のアライアンスアカデミーの柏レイソルA.A.長生の出身。中学時代に日体大柏が主催する大会に出場し、そこで声をかけられた。
「練習参加をすると根引監督が丁寧に教えてくれて、菅沼コーチもFWの動き方を細かく教えてくれたので、ここで学びたいと思って決めました」
望んだ環境で着実に成長を遂げている三橋。どこからでも狙えるスナイパーが今、照準を合わせているのが、プリンス関東1部昇格と、流通経済大柏と市立船橋の「プレミア勢」を打ち破っての全国大会出場、そしてその先にある全国優勝だ。
「高校に入る前から市船と流通経済大柏を倒すことばかり考えていた。昨年までどちらかに勝っても、どちらかに負ける状態だったので、今年こそどちらも倒して最高の景色が見たい。なぎ倒したいという気持ちが強いです」
技術と本能が磨かれた獰猛なアタッカーは、どんな強豪相手にも一切臆することなく、その先にある景色を追い求めて一心不乱に己を突き動かす。
(FOOTBALL ZONE編集部)