川崎がスター軍団に勝てた訳 サウジびいき感も…“死活問題”を克服した横浜FMとの差

アル・ナスルに勝利しACLE決勝進出を決めた川崎【写真:ロイター】
アル・ナスルに勝利しACLE決勝進出を決めた川崎【写真:ロイター】

ACLE準決勝でスター擁するアル・ナスル撃破、逞しく逆境を切り抜けた川崎

 川崎フロンターレがAFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)のファイナルへ進出した。ACLEは2024-25シーズンからの新方式で、準々決勝からはセントラル開催。今回はサウジアラビアで行われている。

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 ベスト8のうち西地区から参戦した4チーム中3チームがサウジアラビア勢。その3チームすべてベスト4に進出し、それ以外は川崎だけだった。川崎は準々決勝でカタールのアル・サッドを延長の末に3-2で破り、準決勝ではアル・ナスル(サウジアラビア)に3-2。サウジアラビア同士のファイナルを阻止し、東地区の面目を保っている。

 開催地がサウジアラビアというだけでなく外国籍選手枠が撤廃されていて、サウジアラビアによるサウジアラビアのための大会になっている感さえある。準決勝はアル・ナスルが中3日に対して川崎は中2日。試合間隔が短いだけに1日の差は大きい。

 しかし、川崎は逞しく逆境を切り抜けた。クリスティアーノ・ロナウド、マネ、ブロゾビッチ、デュラン、オタヴィオと錚々たる顔ぶれのアル・ナスルに対して怯むことなく、コンパクトな守備とカウンターアタックで渡り合っていた。

 この準決勝、さらにアル・サッドとの準々決勝でも存在感抜群だったのがセンターバック(CB)の高井幸大である。192センチの長身。アル・ナスル戦ではゴール前でロナウドをマークして空中戦を跳ね返し続けた。高さだけでなく地上戦も強く、奪ったボールを確実につなぐ能力が大きい。

 サウジアラビア勢はビッグネームを次々に獲得して強化を図っている。もともとテクニックに定評があり、さらに欧州リーグのスターを加えたことで攻撃力が増した。アジアトップクラスのアタッカー、アフィフを擁するカタールのアル・サッドも含め、中東勢はボール保持力がある。

 こうした相手から簡単にボールを奪うことはできない。今回は摂氏30度を超える暑さ、試合間隔の短さもあり、川崎はミドルゾーンに守備ブロックを構えて迎え撃つしか手立てがなかった。しばらくはACLEだけでなく、今年から一新されるクラブ・ワールドカップにおいても、日本勢の戦い方はまず堅守が必要になるだろう。

アル・ナスルに完敗を喫した横浜FMと勝利した川崎の違い

 ミドルゾーンのブロック守備はそこで止められないケースも多く、ローブロックに移行しやすい。川崎もかなり押し込まれた。そうなると自陣から出られなくなり、一方的な試合になってしまうのだが、川崎はボールを奪った時は確実につないで押し返すことができた。これは準々決勝でアル・ナスルに1-4で完敗を喫した横浜FMとの違いだった。

 アル・ナスルの2トップ、ロナウドとデュランがほぼ守備をしないのは川崎にとって助かった部分だが、高井を筆頭に奪ったボールを確実につなぐ、キープすることができた。ハイプレスが不可能な試合で、自陣から持ち出せるかどうかは死活問題だっただけに重要なポイントである。

 10年ほど前まで、日本人のDFとGKはサイズが足りないとよく言われていた。サイズが足りないなりの戦い方を考えないといけないとも。だが、それも隔世の感がある。今や日本人のGK、CBの体格は世界のトップに遜色なくなっている。大きいだけでなく足技にも優れ、20歳で守備の重鎮となる高井のようなCBも現れてきた。当面は代表でもクラブでも世界大会で堅守が必須となる日本にとって非常に大きな変化と言える。

(西部謙司 / Kenji Nishibe)



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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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