スカウト注目度急上昇…選手権を沸かせた“逸材高校生” 帝京エースが狙う「得点王」

帝京の宮本周征「広島のFW中村草太選手のプレーをよく見ています」
昨年度の選手権で15年ぶりに選手権の舞台に帰ってきた帝京の2年生ストライカーだったFW宮本周征は、京都橘との開幕戦で途中出場から決勝ゴールを叩き出して一躍脚光を浴びた。
3年生となった今年、両サイド、FW、トップ下をこなせる攻撃のユーティリティープレーヤーとして名門の攻撃を牽引している。彼の持ち味はずば抜けた身体能力とスピード、テクニックを駆使した多彩なゴールアプローチにある。
サイドに回れば、ポケット(ペナルティーエリアの左右のスペース)に潜り込むドリブルからのフィニッシュワークや、縦に突破をしてからのクロス、逆サイドのクロスへの迫力ある飛び込みを見せる。中央に入れば、ワンツーや3人目の動きを駆使して1.5列目からの鋭い飛び出しを見せてゴールに迫る。最前線でポストプレーやタメを作るキープもできるなど、引き出しの多さが特徴だ。
選手権後、U-17日本高校選抜に抜擢されるなど、プロのスカウトからの注目度も一気に高まった彼は、プリンスリーグ関東1部において第3節の桐蔭学園戦で今季リーグ初ゴールを含む2ゴールをマーク。そして4月26日に行われた第4節の矢板中央戦では左サイドハーフとして起用されると、縦への抜け出しや、中央や逆サイドまで走り込んで縦パスを受けるなど、自由な発想を見せて躍動した。
左サイドの直接FKから地を這うような弾丸シュートで壁の下を打ち抜いて左ポスト直撃したり、ドリブルで仕掛けて倒されても、すぐに起き上がってこぼれを拾った味方のスルーパスを受けてゴールに流し込んだり(オフサイドの判定)とゴールに何度も迫ったが、不運にも見舞われてノーゴール。チームも終盤の失点で0-1の敗戦を喫したが、持ち味を発揮することはできた。
「仕留められるシーンは2、3本あったのに仕留めきれなかった。敗因を作ってしまったので、本当に悔しいの一言です」
試合後、彼はこう唇を噛んだ。さらに「前節は2ゴールを決めましたが、PKとヘッドで流れのなかからの足でのゴールがまだないんです。なので、モヤモヤした気持ちは晴れていません」と続けた。
表情から伝わるように彼は相当な負けず嫌いで、ライバル心を持つことで自身を鼓舞するタイプの選手だ。昨年は1学年上のエースストライカーの森田晃(法政大)に刺激を受け、U-17高校選抜では高校ナンバーワンストライカーの呼び声が高い鹿児島城西のFW大石脩斗に強烈なライバル心を抱いた。
ただ、彼の良いところはただライバル視をするだけではなく、その相手から自分の足りない部分を学べる部分だ。
「森田さんの堂々としたプレー、大石選手のポストプレーやシュートへの貪欲さ。その姿勢は見習いたいし、僕はつなぐ部分も得意なので、そこを磨きながらゴールへどんどん迫っていく迫力をもっと身につけたい」
ライバルを通じて自分の課題を浮かび上がらせ、そこに対するアプローチと、逆に自分が勝っている部分を抽出して磨く。燃え盛るライバル心に冷静な目を合わせることで、自分自身の成長につなげている。
今、新たにライバル心を抱いているのが、同い年でプリンス関東1部で好調を維持する山梨学院高のFWオノボフランシス日華だ。
「今日も彼は2点を決めているので、自分がノーゴールは本当に悔しい。(プリンス関東1部)得点王を本気で狙っているので、ゴールがないと納得できないです」
さらにライバルとまではいかないが、参考にしている選手がJリーグにいる。
「将来的には1.5列目でプレーしたいと思っているので、サンフレッチェ広島のFW中村草太選手のプレーをよく見ています。あの得点センスはすごいし、動き出しとかアジリティー、フィニッシュの精度がものすごく高い。学ぶことが多いです」
身近なライバルに闘争心を燃やし、いつか中村もライバルになるように。彼は今、煮えたぎる思いをエネルギーに前に進もうとしている。
「足でゴールが生まれたらもっと勢いがつくと思っています。波に乗り切れていない今は、自分にとって正念場。自主練でシュートを増やして、より怖い選手になりたいです」
カナリア軍団のエースストライカーが紡ぎ出す成長譚。これから一層注目をしていきたい。
(FOOTBALL ZONE編集部)