アジアの憂鬱 日本が強いのか、アジアが弱いのか

雑音をシャットアウトし、アジアトップクラスのイラク相手に堂々とJapan wayを披露

イラスト①

図①
 アジアカップ初戦のパレスチナ戦を4-0で快勝し、グループリーグ最難関のイラク戦を迎えた日本代表チームを悩ませたのは、対戦相手の戦術ではなく、アギーレ監督の八百長疑惑に進展があったという報道だ。当然のことながら、こうしたネガティブな外部要因は徹底的に遮断する必要がある。このような状況下で選手たちが次の試合に向けて集中して臨めるかどうかがこの試合の一つの見どころだった。
 結果として一見快勝に見える初戦の4-0という結果と比較すると、1-0というのは物足りない気がするが、内容そのものは初戦の不安を吹き飛ばすものだったと言える。どの部分が良かったと言えるのか、そしてその良かったことを素直に受け取って良いのか、データを基に分析をしていきたい。
 日本のストロングポイントは技術力、俊敏性、規律であり、それを十分に生かしたサッカーをJapan wayとして下の年代からトップまで目指している。技術力や俊敏性、規律等は正直曖昧な表現であるが、Japan wayと呼ばれるサッカーを展開した時、それはある程度ポゼッション率やパスの本数、そして成功率として我々の目に見えてくる。
 アジアの強豪国の一つであるイラクを相手に60%を超えるポゼッション率で、562本のパスを86.7%の成功率で回し、14本のシュートを放った日本のサッカーは最少得失点差とはいえ十分に内容で圧倒していたと言える。クロスの数こそパレスチナ戦の27本から13本と半分以下に減ったが、味方に繋がった数は3本から6本と倍に、成功率は11%から46%と約4倍増えた。
 初戦、単に放り込むだけのクロスだったものが「目的」をもったクロス、可能性を高めるゴール前の入り方に改善されていた。それは長友が一度切り替えしてファーサイドにいた本田に出したクロス、後半、本田と交代して入った武藤から逆サイドから少し遅れて入ってきた清武に出したクロスを見ても出し手と受け手の意識が大きく変わったことが良く分かった。
 これだけボール支配率で圧倒し、相手をシュート5本、枠内シュートわずか2本に抑えられていれば「サッカーは何が起こるか分からない」という古くからの言い伝え(もちろん事実だが……)通り「まさか」の敗戦以外は想定しづらい。
 しかし、その目線を上に向けた時、相変わらずDuels(50%対50%の状況下でどちらがボールを奪ったかを示すデータ)における日本の勝率は37%だ。先のワールドカップにおけるトップ4のドイツ、アルゼンチン、オランダ、ブラジルのいずれもが常に50%超。仮に奪われても次のプレーにおいてかなりの確率で奪い返すという勝利に限りなく近いマジックナンバーだ。
 パレスチナ戦でも50%を割り、これだけ内容に差があったこの日の試合では37%と40%を切っていた。このDuelsとは単にセカンドボールの取り合いという意味合いだけでなく、「予測」「コンパクト」「インテンシティ」という守備をするうえで最も重要な要素を測る指標でもある。現時点でこのデータがJapan wayを遂行する上で出来ていない部分だということを記憶にとどめておいて頂きたい。

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